浦和レッズ他「4チーム出場」クラブW杯と「苦戦中」の横浜FM、「本気」の川崎F【横浜FM準優勝「勝負の分かれ目」とACL「今後の戦い方」】(3)

第12節で横浜F・マリノスに勝利した浦和レッズも、米開催のクラブW杯に出場する。アジア制覇、そしてクラブW杯出場を、日本のクラブは今後どうとらえるべきか。撮影/原壮史(Sony α1使用)

AFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝という、悲願達成はならなかった。横浜F・マリノスは、リードを手にしてアウェイでの決勝第2戦に臨んだが、まさかの大敗。結果が悔しいものであることに変わりはないが、サッカージャーナリスト後藤健生は、この敗北から学ぼうと試合を分析。試合の流れを一変させた「分岐点」と、チームの「問題点」「改善点」を示すとともに、Jリーグのチームが今後、どのようにしてACLとつきあい、戦っていくべきかを考える。

■クレスポ監督の意思を体現した「演技派ラヒミ」たち

第1戦とは戦い方を変えてきたアル・アイン。エルナン・クレスポ監督の意思を、ピッチ上でうまく表現した選手たち。そして、トップのラソフィアン・ラヒミの決定力(および演技力)……。アル・アインが強力なチームだったことは間違いない。

一方、昨シーズンはJリーグで準優勝という成績を残した横浜F・マリノスだったが、今シーズンはまだ新監督の下でチーム作りの模索が続いている状態だ。Jリーグでは、消化試合数が3試合少ないこともあるが、暫定14位と低迷している。

決勝まで勝ち進んだACLでも、ラウンド16のバンコク・ユナイテッド戦、準々決勝の山東泰山戦、そしてPK戦にもつれこんだ蔚山現代戦と、いずれも退場者を出しての苦戦続きで、けっして良いチーム状態とは言えないのが現状だ。

国内リーグの競争が激しいことは、もちろん望ましいことだ。リーグ戦自体も面白くなるし、さまざまなタイプのチームがしのぎを削ることで日本サッカーの競争力はさらに上がっていく。

だが、ACLのような大会では、戦い方が難しくなる。前年に結果を残したクラブが翌シーズンも好調というわけにはいかないのだ。前回大会(形式的には「2022年大会」ということになっている)では、浦和レッズがサウジアラビアのアル・ヒラルを破って優勝しているが、当時の浦和も監督交代の後でJリーグでは苦戦していた時期だった(そもそも、浦和がACL出場権を獲得したのは、2021年12月の天皇杯で優勝したときであり、ACL決勝までには1年半もの時間が経過していた)。

■ランキングでは「出場できない」日本のクラブ

とにかく、競争の激しいJリーグのクラブは、ACLで戦っているクラブがその時点でリーグ最強ではないということが多い。なにしろ、今回の大会にはJ2リーグのヴァンフォーレ甲府まで出場していたのだ(そして、甲府の善戦はJリーグというリーグの競争力の高さを実証した)。

ACL優勝クラブには、2025年にアメリカで開催されるFIFAクラブ・ワールドカップ出場権が与えられることになっている。今大会が終わった時点で、アジアに与えられた4枠が決定した。2021年大会優勝のアル・ヒラル、22年大会の浦和レッズ。そして、今年の大会で優勝したアル・アイン。そして、クラブランキング上位の蔚山現代(韓国)だ。

クラブランキングというのは、ACLでの勝点などを合計したポイントによって決定し、そのためには、毎年のようにこの大会に出場してポイントを積み重ねていく必要があるが、日本のように毎年、出場チームが変わる日本のクラブがクラブランキングによってワールドカップに出場することは不可能だろう(かつて川崎フロンターレが圧倒的に強かった時期に、川崎がACLに本気で取り組んでいたら違っていただろうが、どういうわけか川崎はACLでは上位に進出したことはない)。

■「中東諸国が有利」ACLへの今後の取り組み

ACLは次のシーズンから大会方式が大幅に変更となり、「チャンピオンズリーグエリート」という名称で開催され、日本からは2023年のJリーグおよび天皇杯の結果により、ヴィッセル神戸、横浜FM、川崎の3チームが出場するのだが、神戸以外のクラブは今シーズンは苦戦中だ。さらに、2025年4月に予定されている準々決勝以降の最終ステージは、サウジアラビアでの集中開催となったため、日本のクラブによる大会制覇はきわめて難しくなる。

AFC主催の大会はすべて中東諸国有利なレギュレーションで行われるようになってきているが、ACLもけっして例外ではないのだ。そんな大会に対して、日本が今後どのように(どの程度、本気で)取り組んでいくのか、サッカー界全体で真剣に考える必要があるだろう。

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