コンビニの〝常識〟が覆る? ミニストップの30秒ホットドッグに見る「店内調理」の可能性

ファストフード注文専用カウンターが設置されたミニストップ神田錦町1丁目店

30秒でアツアツのホットドッグ! ミニストップは20日、コンビニとスーパー、ファストフードを組み合わせた新型店“ニューコンボストア”の東京・神田錦町1丁目店をオープンした。流通ウォッチャーの渡辺広明氏が「できたて」と「店内調理」が持つ可能性について解説した。

18日に行われた店舗説明会で、藤本明裕社長は「ファストフードとコンビニエンス、専門店品質のおいしさと便利さを実現するために売り場を変革した」と取り組みの意義を語り、ファストフード商品の核と位置付けられたホットドッグについて「過去にも取り組んだことがあったが提供時間が1~1分半くらいかかってしまっていた。(これからは)30秒で出せます!」と豪語した。

ホットドッグ(税込み214円)のパンは焙煎した胚芽を使用して豊かな風味ともっちり食感を実現。天然羊腸を使用したあらびきポーク100%のソーセージはパリッとジューシーだ。ほかにも野菜を摂取できるトルティーヤ「サラダラップ」(421円)など主食にも注力。店頭のオーダー端末のほか、モバイルオーダーやデリバリーアプリにも対応している。

渡辺氏は「パンにソーセージを挟むだけ…なんですが、注文から30秒以内というのはすごいことです。マクドナルドでも自動グリルが(ハンバーガーの)パティを焼くのが約38秒ですからね」とスピードを高評価した。

ミニストップの歴史をひもとくと、創業は1980年でジャスコ株式会社(現イオン)の出資で設立された。先行していたセブン―イレブン、ファミリーマート、ローソンの3大コンビニに対抗すべく、ファストフードとコンビニを合体させた“コンボストア”で差別化を図った。当時、イートイン併設は画期的な試みで、その後に他のコンビニが立地を見極めつつ追随したのは周知の通りだ。

今回、ミニストップが再定義した“ニューコンボストア”では生鮮3品(=青果、精肉、鮮魚)を取り扱う点ばかりに視線が集まるが、渡辺氏は店内調理の可能性に目を向けている。

「店内調理の米飯や総菜を提供するローソンの『まちかど厨房』は約9300店舗まで伸びました。メニュー数が異なるので一概に比較できないものの、国内最大の弁当チェーン『ほっともっと』が2444店(2024年4月末時点)よりも大きくなっているというのは注目に値します。セブンとファミマは弁当を作れるほどの厨房を備えておらず、専用工場から納品しています。店内調理機能はフライヤーを使ったFF(=「からあげクン」や「揚げ鶏」など)に絞り込むのがコンビニの最適解とされてきたが、ここにきて“できたて”にこだわるメリットも増えている」

店内調理には厨房や調理機器を導入する設備コストだけでなく、従業員の業務負担増という明確なデメリットがある。しかし、セルフレジやお掃除ロボットの導入で人スタッフの店舗オペレーションが減ればその分を店内調理に回せることが十分に見込めるのだという。

「先日、私が中国で調理機械の展示会を見てきて驚いたのは、業務用でも非常にコンパクトかつ価格が安くなっていることです。たとえば1時間にシャリ玉を1200個作れるロボットが30万円程度で買えてしまうんです。冷凍のすしネタを活用すれば、これなら厨房面積の限られたコンビニでできたてのおすしを出すことだってできるかもしれませんよ!」

スチームコンベクションオーブンを使った店内調理に定評のある「セコマ」のホットシェフが北海道で根強い支持を受けているのは、道内には飲食店の少ない町村が多く、できたて弁当のニーズが大きいことが背景にある。ところが高齢化が進み、移動が困難な高齢者が増えると同様の中食ニーズは全国的なものになると見られているのだ。

ミニストップと同じイオングループの中には“コンビニキラー”として首都圏に広がっている都市型小型食品スーパー「まいばすけっと」があるが、即食の強さは依然スーパーよりコンビニに一日の長がある。

「フランチャイズで利益を(本部とオーナーで)分配しなければならないコンビニが生鮮3品をそろえたとしても価格面では確実にスーパーに見劣りしてしまいます。ならば客を呼び込めるできたての主食にこだわるのはひとつの道筋だと思います。将来的にはグループ内で『まいばすけっと』×『ミニストップ』のシナジーを考えることも必要だと思いますね」

国内4位とはいえ店舗数で大きく水をあけられているミニストップ。厨房を生かして起死回生を図れるか注目だ。

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