奈緒「自分に厳しくすることをやめた」その理由とは?

奈緒

女優の奈緒が、WOWOWで放送・配信される連続ドラマW-30『演じ屋 Re:act』(5月24日午後11時00分〜)に出演。演じ屋ファミリーの一員である松田アイカを演じる。本作は2021年7月から放送、配信されたWOWOWオリジナルドラマ『演じ屋』の第2弾。演じ屋とは客から依頼された役になりきることを生業とした、まだ誰も知らない新たな職業。奈緒×磯村勇斗のW主演で贈るヒューマンストーリー作品。前作同様に監督・脚本を野口照夫氏、音楽を花岡拓也氏が担当する。インタビューでは、映画『演じ屋 reDESIGN』から参加している奈緒に、シーズン2となる『演じ屋 Re:act』が完成して感じたこと、また、自分自身に厳しくすることをやめたと話す、その理由について話を聞いた。(取材・撮影=村上順一)

長く一緒にいるからこその絆が見えてきた『演じ屋 Re:act』

――演じ屋は、実際に奈緒さんのお仕事に通じるところがありますが、演じ屋をやっているときの心境はいかがですか?

演じるという部分では自分がやっているお仕事と近いのですが、1 つ違うところがあります。私たちは物語の中でお芝居をするので、人の人生に直接的に入り込んでいくということはありません。でも、演じ屋の方たちは人生に関わるようなところまで入り込んでお芝居をするので、危険も伴いますし、大きな覚悟を持ってやらないといけないだろうなと思います。想像できないようなところまで演じ屋たちが潜入するので、物語が広がっていくので、すごく面白い題材だなと思いながら演じています。

――磯村さんと再び共演、どのようなお気持ちでした?

演じ屋ファミリーとして、また磯村さんとご一緒できたことがとても嬉しかったです。今回は一緒に行動せずに、それぞれ違う動きをしていくシーンが多かったので、磯村さん演じるトモキがアイカの裏でどんな行動をしていたのか、完成した映像を楽しみにしながら観ました。

――シーズン2が完成して心境はいかがですか。

私は、映画『演じ屋 reDESIGN』から参加させていただいて、ドラマシリーズになったと聞いたとき本当に嬉しかったですし、磯村さんが加わって『演じ屋』の世界がすごく広がって、仲間が増えてとても楽しかったんです。前作が終わった時から「シーズン2 がやれたらいいね」というお話はしていたので、パワーアップして帰ってこれたことがなにより嬉しいです。また演じ屋ファミリーのみんなと会えることや、応援してくださっている『演じ屋』ファンの方々に、新しい『演じ屋』を届けられることがすごく嬉しいです。

――奈緒さんは『演じ屋』のどんなところに魅力、楽しさを感じていますか。

私はお仕事で演じるとなると衣装などが用意されています。各部署のプロフェッショナルの方たちに用意していただくのですが、演じ屋さんたちは全部自分たちの手作りなんです。「えっ!

それ大丈夫?」って心配になるような絶妙なラインで頑張っているところが、私はすごく可愛いくて、面白いところだなと思います。自分1人だったらここまではできないと思うので、自分との違いとして楽しめています。

――前作の経験が活かされた場面はありましたか。

シーズン1はアイカとトモキ、2人のコミュニケーションが主に描かれていたのですが、今回は演じ屋が家族を演じている中で、今まで見えてこなかったファミリーの不思議な関係性、長く一緒にいるからこその絆が見えてきます。言葉、セリフがない場面でもシーズン1より関係性が見えるようなシーズン2になったと思います。重ねてきたからこそ、今回そういったものが出せたのかなと思いました。

いつも以上に客観性を持って向き合う

――野口監督とも長いお付き合いですよね。

監督と初めてお会いした時のことも鮮明に覚えています。自分がまだ現場の右も左もよく分かっていないような頃に、監督はお芝居をしたいという私の心の声みたいなものをすくい上げてくださって、お声掛けいただきました。手作り感のあった『演じ屋 reDESIGN』で学んだことも多かったですし、 何よりもすごく温かみを感じる現場でした。

――当時を振り返るとどんな想いがありますか。

『演じ屋 reDESIGN』が終わって、演じ屋ファミリーとはすぐに会えないんだろうなというのはなんとなく感じていました。「いつか絶対『演じ屋』をやろう」って約束をして、違う現場でいろいろと成長をしてまた会えたら、それが恩返しになるんじゃないかと思いました。それもあって、映画『演じ屋 reDESIGN』で使った衣装は自前のものが多かったので、もしかしたらまた使うかもしれないなと思い手放せなくて保管していました(笑)。

――ドラマになってからその衣装は実際使ったんですか。

『演じ屋 reDESIGN』の時はキヨカという役でした。蓋を開けてみたら役ごと変わってしまったので、着ることはなかったです。またみんなと『演じ屋』で再会することが目標の1つだったので、それが叶っただけでもすごく幸せでした。

――演じている人を演じる、それは難しいところだと思いますが、どのような意識でアイカという役に臨んでいましたか。

いつもだったら、「どう演じるか」とまっすぐに役と向き合うことが多いのですが、本作では「アイカにとって演じるということは、どういう意味をもつのだろう?」といつも以上に客観性を持って向き合っています。アイカのお芝居は一世一代のお芝居だったりするので、このお芝居で相手を騙せているのかな?、アイカはきっとここは力技で行くだろうなとか、そういったところを台本を読んで想像しながらやっていました。

――撮影で印象的だったエピソードはありますか。

今回方言、訛りがあると台本に書いてあったのですが、衣装合わせのときに訛りをどうしようかみたいな話があったんです。イメージ的にはちょっと北の方の訛りみたいな話になり、今回方言、訛りがあると台本に書いてあったのですが、衣装合わせのときに"訛り"をどうしようかみたいな話があったんです。イメージ的にはちょっと北の方言かなという話になり、助監督さんから方言を収録したテープを用意できるという提案もいただきましたが、アイカ達が短期間で準備したと考えて「架空の方言にしましょう」となりました。アイカたちがどこまでできるのか、みんなで俯瞰で考えながらの撮影は印象に残っています。

――お気に入りのシーンをあげるなら、どこを選びますか。

アイカがヤマダという人物に扮して、潜入捜査をするんですけど、ヤマダでいる時間がとても長かったんです。なかなかアイカとして出てこない(笑)。アイカが犯人と思われる人物と対峙するシーンでは、少しアイカの部分が見え隠れしていて、相手に危機感を持たれてしまうと逃げられてしまうかもという緊張感も含めて、ヤマダとアイカが混在する瞬間というのは私自身演じていてとても刺激的でした。

自分に厳しくすることをやめた

――公園のシーンはとても暑かったみたいですね。涼しそうな表情で演じられていましたが、ロケはいかがでした?

すごく暑かったです。自分も完成した映像を観て、涼しそうな顔をしているなと思いました(笑)。特にヤマダを演じているときのウィッグに熱がこもってしまって大変でした。頻繁にウィッグを外して、日陰に入ったりしていたのを覚えています。

――磯村さんは脇に保冷するアイテムを挟んでいたみたいです。

それ、やっているのを見ました!

磯村さんはすごい準備をされていて、私に「こういうのもあるよ」っていろいろ教えてくださって。とにかく私も身体を気遣いながら撮影に臨みました。病気やケガをしないように現場を進めていくことが一番なので、できる限りのことはできたと思っています。

――奈緒さんはお若いですが、普段から健康に気を遣っているのでしょうか。

はい。もう健康第一です!

自分の体質を知るということは20代のうちからやっておきたいなと思って、身体と向き合うことは日頃から心掛けています。その中で心と身体はすごく繋がっているなと感じていて、まだ完璧ではないのですが、自分でケアをできるようにしたいなと思っています。

――素晴らしいですね。私はいま40代なのですが、10年前とは身体が全然違う感覚になって、自分でもビックリしています(笑)。

現場などで先輩方がそういうお話をしているのをよく聞きます。あのサプリがいい、血液検査した、あそこの病院がいいとか、普段の会話がそういう風になっていくのを日々感じていたので、今から健康に関して心掛けた方がいいなと思いました。

また、女優さんだと健康の他に美容というところにジャンルが分かれるところもあると思うのですが、健康が美容に繋がっているところもあるなと思いました。それもあって今からビタミンなどしっかり取っておこうと思っています。また、俳優業は照明に当たったり乾燥しやすいお仕事だと思っているのですが、乾燥からウィルス感染してしまうこともあるので、お水をすごく飲むようになりました。

――さて、奈緒さんは俳優としてご自身の理想の姿を100%とするなら、いま何%くらいですか。

いつも精一杯やっているので99%です。本当は100でもいいのですが、伸びしろもあった方がいいので(笑)。甘い数字だと思われるかもしれませんが、自分に厳しくすることをやめたんです。理想像というのは自分の中でアップデートしていけばいいのであって、未熟ながらも今できる最大限はできているんじゃないかなと思っていますし、出来ている自分でいたいなと思っています。私は褒められて伸びるタイプなので、自分で自分を褒めて99という数字にしたいと思います(笑)。

――自分に厳しくしないというのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

油断すると自分に厳しくなってしまいます。そうなってしまうと、それが第三者にも伝わってしまうなと思いました。人に優しくなりたいというのが、一つ大きな目標としてあるのですが、まずは自分からというのをすごく感じていて、自分にもう少し優しくなれたら、人に対してももう少し優しくなれるんじゃないかなと思ったのがきっかけでした。そういう考えになってからはとても楽になりましたし、楽しみも増えました。

――楽しみとは?

撮影が終わってからの自分へのご褒美です。また、自分だけの時間を作ったりするようにもなったので、今すごく楽しいです。

――最近のご褒美は何を買われたんですか。

最近ご褒美として購入したのはお皿2枚です。いつもだったらお皿はお家にたくさんあるから買うのは我慢するのですが、ドラマの撮影も頑張ったし、2枚くらい買ってもいいんじゃないかって。そのお皿があるだけで1日がウキウキしちゃって(笑)。でも、そのときはお皿に盛るものがなくて、駄菓子の「カットよっちゃん」があったので、それをお皿に乗せてみました。自分の中で、これは“よっちゃんイカ・プレミアム”だ!

と思いながら食べました! (おわり)

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