『マッドマックス:フュリオサ』ミラー監督の盟友が語る 狂気の世界を支える知性

ジョージ・ミラー監督の「最高の技術が詰まっているのです」という『マッドマックス:フュリオサ』 - (C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. IMAX(R) is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories.

映画『マッドマックス』シリーズ最新作『マッドマックス:フュリオサ』(5月31日全国公開)でプロデューサーを務めるダグ・ミッチェルが、長年タッグを組む盟友ジョージ・ミラー監督との映画製作について、合同インタビューで語った。

本作は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)に登場した義手の戦士フュリオサの復讐の旅を描く前日譚。アニャ・テイラー=ジョイがシャーリーズ・セロンからフュリオサ役を引き継ぎ、クリス・ヘムズワースがバイカー集団を率いる宿敵・ディメンタス将軍役で出演。今回も大量の改造車が登場し、荒廃した世界を舞台に、壮絶なアクションを繰り広げる。

『マッドマックス』で唯一無二のマッドな世界を生み出したミラー監督だが、笑顔を絶やさない柔和で知的な言動は、狂気のイメージからはほど遠い。さらに、ハードなアクション大作だけでなく、キュートなペンギンたちのCGアニメ『ハッピー フィート』(2006)や、牧羊豚を目指す子ブタを描く『ベイブ/都会へ行く』(1998)などのファミリー向け映画でも成功を収めてきた。

ミラー監督と40年以上にわたってタッグを組むミッチェルは、「彼は素晴らしいストーリーテラーであり、ある種、医者のようでもあります(ミラー監督は元医学生)。知識豊かで、頭の中で様々な世界を想像して子供時代をすごしました。彼の才能は、ストーリーをビジュアルで表現することにも現れており、監督として、またアーティストとしての側面も持ち合わせています」とミラー監督の知性に言及。

ダグ・ミッチェルとジョージ・ミラー監督

そのうえで「『マッドマックス』に関していえば、ジョージは長い間ヒーローの旅を描いてきたと思います。1作目の『マッドマックス』が成功した理由は、最初はわからなかったそうですが、世界を見渡すと、侍やバイキング、ウエスタンなど、様々な文化があります。ジョージはそうした物語を、劇的な形で表現する才能があります。彼は人間のストーリーを語ることで進化してきました。『マッドマックス』のようなアクションを通じて、ドラマを上手く描写しています」と語る。

ミッチェルは、ロンドンで公認会計士の資格を取得した後、オーストラリアのシドニーに移住、製作会社ケネディ・ミラー・ミッチェルにおいて、財政の知識と自身の創造性を掛け合わせてミラー監督をサポートしてきた。「ジョージ・ミラーも金融のスキルを持っており、私もクリエイティブな能力を持っています。かつては他の人も関わっていましたが、1人は亡くなり、最終的に私とジョージがビジネスパートナーとして活動するようになりました」と振り返る。

それだけに、「一週間でおよそ300万ドルほどの費用が動くような規模で、8か月間続くので、お金の管理は重要です。チーム全体で効率的に運営し、即座に問題解決する必要があります。クリエイティブな側面も大切ですが、プロデューサーとしては安全と効率を確保することが私の役割です」と映画作りへの姿勢もシビア。勢いを増すストリーミング配信についても「ワーナー・ブラザースは(『フュリオサ』に)劇場公開の価値があると判断し、投資してくれましたが、今はこのような映画が少ないです。高額な制作費をかけても、劇場での収益は限られています。このような状況下で映画を制作するのは簡単ではありませんが、時代の変化に対応する必要があります」とビジネスマンとしての視点を忘れない。

ただ、それでもミッチェルは『マッドマックス:フュリオサ』が、劇場で観る価値のある「最高の物語」と自信をのぞかせる。「ジョージが、アクションを考案したガイ・ノリスと200人近いスタント俳優たちの力を借りてアクションシーンに挑む……。この映画のなかには、いちばん長いもので15分間のアクションシーンが存在します。大規模なオーケストラによるアクション交響曲、そして最初のアタックから鳴り続けるロックンロールの嵐。そして本当に面白い方法でアクションを形にする、ジョージの最高の技術が詰まっているのです」(編集部・入倉功一)

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