「アップデートすることが大事」猛暑避け、5月開催になった相馬野馬追 1000年の伝統守るため

5月27日まで、福島県で3日間にわたって繰り広げられた相馬野馬追。猛暑の影響で2か月前倒しでの開催となった今年、気温や観光面で大きな変化があったのか、祭りを追いました。

相双地方で1000年以上受け継がれてきた、相馬野馬追は、毎年7月に福島の夏を彩ってきましたが、今年は初めて5月の開催となりました。理由は、記録的な暑さです。

去年の開催期間中の最高気温は35℃。80人あまりが熱中症で救護され、馬2頭が死にました。こうしたことから、執行委員会は、2か月前倒しでの開催を決めました。

南相馬市・門馬和夫市長(去年11月)「相馬野馬追をしっかり伝承するためには、暑さ対策をしなければならない。相馬野馬追の真髄を後世まで引き継ぐということで努力していきたい」

「変わっていかなければ継承はできない」

今年の本番3日前、騎馬武者たちは、出陣の準備を進めていました。

相馬市の騎馬武者を束ねる佐藤誠さん(66)。自宅の床の間には、代々受け継がれた甲冑が並びます。

佐藤さん「30年ほど相馬野馬追に出ていて、セミの声が聞こえて暑くなって、あぁ野馬追だと気持ちが入りますね。5月開催だと今ひとつそれがないというか…」

これまで30年あまり、出陣してきた佐藤さん。複雑な心境を抱きながらも。開催時期の変更は仕方がないと話します。

佐藤さん「変わっていかなければ継承はしていけない。本質だけは変えることができないので、この地域の安寧と繁栄、そして武家文化の継承という面では必ず残さなけらばいけないし、伝えていかなければならない」

去年は猛暑、今年の気温は

相馬野馬追、初日。例年、1000人ほどが参加する騎馬行列は、開催日の変更で当初、参加者の減少が心配されていましたが、大きな変化は見られませんでした。この日の最高気温は、22.3℃。去年より10℃以上低くなりました。

相馬市民「私たち的にはこの気温の方が絶対ありがたいと思っていて、子連れやお年寄りには参加しやすい日程になっている」 相馬市民「出る人も馬も最高の状態でないですか。良かったです、5月で」

相馬駅前にあるホテルは、98ある部屋が満室となりました。9割以上が県外からの観光客で、開催日を変更した影響はみられませんでした。

静岡からの観光客「気候としてはちょうどいいぐらい。いい機会だなと思って来ました」

2日目。雲雀ヶ原祭場地には、去年よりも5000人多い3万3000人を超える人が訪れました。野馬追の最大の呼び物、神旗争奪戦。およそ200騎の騎馬武者が、天高く打ち上げれた御神旗を奪い合いました。この日の最高気温は26℃と、7月上旬並みに。執行委員会によりますと、熱中症の疑いで救護されたのは17人で、去年の4分の1以下となりました。

南相馬市から来た人「来やすくなったのか、お客さんが多いような気がする。しょうがないけど、もっと暑い方が野馬追らしい感じがする」 宮城から来た人「熱中症をいつも気にしていたので、7月開催だと子どもを連れて来られなかった。今年から5月開催ということで初めて連れて来た」

1000年の伝統守るために

騎馬武者たちにとっても、5月の開催は、負担が減る結果となったようです。

騎馬武者「去年は熱中症で救護センターにいたが、今年は宵乗り競馬や神旗争奪戦参加できて感無量です」 騎馬武者「伝統を守ることも大事だが、それを守るために全部を変えるのではなくうまくアップデートすることが大事なことになると思うので、そうしていくからこそ、次また1000年以上続くことになる」

佐藤誠さん「結果的によかったと思います。救護で運ばれる人もおらず、暑さもそれほでもない、大変よかったと思う。課題もある程度見つかったので、修正しながらより良い形で継承していきたい」

先人たちが守ってきた祭りを次の世代へ。1000年あまり続く相馬野馬追は、次の1000年へと継承されていきます。



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