河合優実、家庭内暴力に苦しむ主人公に思い吐露 カンヌ帰国後初イベントで女子大生とトーク

河合優実

女優の河合優実が30日、共立女子大学・神田一ツ橋キャンパスで行われた主演映画『あんのこと』(6月7日公開)のトークイベントに出席した。河合は主演映画『ナミビアの砂漠』の監督週間出品で訪れていたカンヌ国際映画祭からの帰国後、初のイベント登壇となり、冒頭「自分にとって大きな経験になりました。それこそ観客の方が上映が終わった後、直接声をかけてくれて、すごく印象的でした。豊かなことだと思いました」とカンヌ参加を笑顔で振り返った。

本作は、映画『SR サイタマノラッパー』シリーズや『22年目の告白-私が殺人犯です-』などの入江悠監督が、世界的パンデミックが起きた2020年のある日の新聞記事に着想を得て撮り上げた人間ドラマ。幼い頃から母親に暴力を振るわれ、十代半ばから売春を強いられる過酷な人生を生きてきた21歳の杏(河合)が、底辺から抜け出そうともがく姿を追う。イベントには入江悠監督、共立女子大学の市山陽子教授も登壇した。

イベントは会場に集まった大学生からの質問を受ける形で進行。河合は「あんちゃんの役は一人の女性をモデルにしたんですか」と質問を受けると、「ある一つの新聞記事から、特定の女性から作ってはいるんですが、要素やエピソードは脚本の段階で肉付けされているし、そういう意味ではあんと同じような境遇にいる人々の集合体でもある」と答える。

河合は「役づくりの上でも撮影を進める中で、実在した人がいるというのは自分の中ではとても大きなことでした。最初はまずその人に近づくことや敬意を払うことをやっていたんですが、撮影をしていく中でモデルになった方より、香川杏というキャラクターを新しく作っていくことの方が重要だなって。監督を含めて現場の人と相談しながらそうなっていった感じです」と自身やスタッフのアイデアが肉付けされていることも明かした。

また、「自分で背負って自分で傷ついてしまった。コロナ禍はこういう人も多かったのかなって思いました。お母さんを傷つけられなかった理由はどう分析されますか?」と聞かれると、河合は「あの状況で憎しみからお母さんを攻撃できる人もいるでしょうけど、杏はできなかった。人を傷つける側には回らなかった」と分析。

その上で、杏の該当シーンについて「監督とも話をしましたが、自分が受けてきた暴力が家庭内で連鎖する傾向は絶対あると思うんです。子供を預かった時に、自分が同じ擬似親子として同じように暴力をふるうんじゃなくて、守る側に回れたのも杏の性格だったと思います。それは希望のあるシーンだと思いました。連鎖を断ち切ることができたことがすごく良かったなと思います」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)

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