川崎の社会福祉法人、前理事長が8億5千万円を私的流用 県警に告訴状提出

多額流用問題への対応などについて説明する川崎市健康福祉局総務部の上林部長(右)と同部企画課の森担当課長=30日、同市役所

 川崎市川崎区の社会福祉法人「母子育成会」(千葉新也理事長)は30日、前理事長(67)=3月に解任=が2000年ごろから、法人の資金を私的に流用していたと発表した。法人側の聞き取りに対し、約8億5千万円の流用を認めており、被害総額は十数億円に上る可能性があるという。県警に業務上横領の疑いで告訴状を提出し、実態解明を進めている。

 同法人が昨年4月に行った自主的な調査で不適切な会計処理の疑いが発覚。相談を受けた市が昨年10~12月に監査を実施した結果、前理事長による架空の請求や出張経費、履行が確認できない修繕費や委託費など不正な取引が多数確認されたという。

 市は社会福祉法に基づき、原因究明や会計の適正処理などを求める文書指導を今年3月26日付で実施。法人は同29日に前理事長を解任し、新たに千葉理事長が就任した。

 法人は市内で特別養護老人ホームや認可保育園などを運営。市は地域包括支援センターの委託費、保育所や乳児院への補助金などを支出していたが、法人の資金繰りが悪化していたことから、これまでも監査に入るなどして運営状況を注視していたという。

 記者会見した市の担当者は「信頼されるべき社会福祉法人で大きな不祥事が起きていたことは誠に残念。こうした問題が再び起きないよう、今の制度の中でしっかりチェック、指導していく必要がある」などと話した。

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