【大岩J最新序列】パリ五輪へのラストサバイバル。最終選考のカギを握りそうな佐野航大と三戸舜介に注目だ

5月30日、日本サッカー協会(JFA)はアメリカ遠征に臨むU-23日本代表のメンバーを発表した。大岩剛監督が率いるチームは、6月の7日と11日に国際親善試合でU-23アメリカ代表と対戦する。

パリ五輪の開幕まで残された時間は1か月半。メンバー選考の最終局面を迎えており、今遠征が選手を見極める最後の場となる。

招集された選手は25名。当初の予定では、このタイミングでオーバーエイジ(OA)の選手を合流させる案もあったが、所属クラブとの交渉がまとまらずに見送られる形になった。

とりわけ海外クラブは、インターナショナルマッチウィーク外での開催となる五輪への選手派遣に難色を示すケースが多く、参戦のハードルは高い。JFAも早めに動いているが、夏のマーケットで選手が新天地を求めた場合は、一から交渉をやり直す必要もある。OA組を招集できるか否かは、ぎりぎりまで待つ必要があるかもしれない。

一方で、パリ世代の交渉はスムーズに進められていると見ていい。今回のメンバーは本大会に出場見込みの選手が選出されており、MFの斉藤光毅と三戸舜介(ともにスパルタ)や、昨秋以降はA代表に専念していたGK鈴木彩艶(シント=トロイデン)など、パリ五輪のアジア最終予選を兼ねた先のU-23アジアカップ不参加組が復帰している。

A代表のメンバー発表会見で山本昌邦ナショナルチームダイレクターが言及したように、久保建英(レアル・ソシエダ)と鈴木唯人(ブレンビー)の本大会行きが困難になっている側面はあるが、これまで大岩ジャパンの屋台骨を支えてきた選手たちの存在は心強い。

そうした事情を踏まえたうえで今回のメンバーを見ていくと、注目すべきはMF佐野航大(NEC)と三戸だ。

佐野は昨年5月のU-20ワールドカップに出場した経験もあるが、大岩ジャパンは初招集となる。欧州挑戦1年目の今季はオランダリーグ1部で25試合・5ゴールをマークしており、周囲からの期待値は高い。

技術に優れ、創造性に富んだプレーヤーで攻撃に特長を持つが、ポリバレントな能力も魅力だ。主戦場はボランチやトップ下だが、左右のウイングにも対応可能で、チーム事情でNECではサイドバックでも起用された。18人という限られた登録人数の五輪では、必要とされるタイプであるのは間違いない。

「我々のグループでは6番(アンカー)や8番(インサイドハーフ)のプレーヤーという認識をしている。チーム事情にもよるけど、彼の特長を把握したうえで、試合で活躍できる状況を作ってあげたい」と、大岩監督も期待を寄せている。

【PHOTO】国際親善試合でU-23アメリカ代表と戦うU-23日本代表招集メンバーを一挙紹介!

一方の三戸も佐野と同じく、インサイドハーフと両ウイングを兼務できるプレーヤーだ。チームの発足当初から大岩監督に重宝されており、昨年9月のU-23アジア杯予選ではインサイドハーフのポジションで目覚ましいプレーを見せた。

パリ世代随一のユーティリティプレーヤーで、複数のポジションで計算が立つ三戸の復帰は、チームの戦術や起用法に幅をもたらすはずだ。

主戦システムの4-3-3のセントラルMFは4~5枠になる見通しで、ウイングのポジションは左右を合わせて3枠と見るのが妥当だろう。そのなかで佐野と三戸に目途がつけば“一芸タイプ”の選手を呼べる可能性も出てくるし、ゴールが欲しい場面を想定してセンターフォワードを1人増やせるかもしれない。

佐野と三戸。この2人の存在はチームに大きな影響を及ぼし、パリ五輪本大会のメンバー選考におけるキーマンになったとしても不思議ではない。小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)と鈴木の正GK争いや、最激戦区であるセントラルMFの競争は見どころのひとつだが、今回のアメリカ遠征では、佐野と三戸の起用法とそのパフォーマンスには大いに注目したい。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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