「いつもの歯ブラシを電動に」が受けた! ヒットのヒント【経済トレンド】

「『システマ』『クリニカ』などは社内のチームが別々で、それを調整するのが大変でした」と話すライオンの山口翔平さん

 ライオンが2023年4月に発売した「LION電動アシストブラシ」が好評だ。(共同通信=出井隆裕記者)

 「システマ」「クリニカ」など手磨き歯ブラシの主要ブランドを冠した付け替えヘッドを用意し、自由に選んでもらう仕組みだ。毎分約9千回の音波振動で効率的に汚れを除去する。

 商品企画を担当したライオンの山口翔平(やまぐち・しょうへい)さん(名古屋市出身、36歳)は「『普段使っているブランドで安心だし、今よりきちんと磨けそう。これなら使ってみたい』という評価を得たと思います」と喜ぶ。

 電動歯ブラシに興味があっても、手磨きを続けている人が主なターゲットだ。バイクと自転車の中間に位置する電動アシスト自転車のような歯ブラシを目指した。「当初はスタイリッシュさや機能性のよさを強調した新ブランドを検討していました。ただ反応はいまいちで、既存ブランドの力を借りるという発想にたどり着きました」

 想定価格は本体が1980円前後、付け替えのヘッド部分が2本入りで630円前後~850円前後だ。「『電動と手磨きでは使い方が全然異なるのでは』という消費者の心理的なハードルを払拭するために手磨き歯ブラシに近い“姿形”にしています」

 初年度の販売本数はシステマだけに対応した従来品と比べて約3割増えた。「値段も手頃で『失敗したくない』というニーズにマッチしたと感じています。市場の活性化にもつながりました」。(価格は2024年4月時点)

ライオンの「LION電動アシストブラシ」

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