アーム、最新CPUやGPUをまとめた「CSS for Client」 AIに最適化、GitHubにライブラリーも

ソフトバンクグループ傘下の英Armの日本法人となるアームは5月30日、最新CPUやGPUで構成するAI向けの「Arm Compute Subsystems(CSS)for Client」と、開発向けのライブラリー「Arm Kleidi」を発表した。

フラッグシップモバイル向けに最新CPUやGPUをパッケージング

Arm CSS for Clientは、最新の「Corelink」システムインターコネクトや、システムメモリ管理ユニット(SMMU)で構成。CPU/GPU向けの3ナノメートル(nm)の製造プロセスに最適化し、「Armv9」ベースの最新CPU「Arm Cortex-X925」と、GPU「Arm Immortalis-G925」を中核に、「Arm Cortex-A725」「Arm Cortex-A520」などを搭載する。

フラッグシップモバイル機器向けSoCの基盤となるコンピューティング要素を提供することで、半導体パートナーはArmベースのソリューションをより簡単かつ迅速に構築可能となり、製品を速やかに市場に投入できる。

CSS for Clientの心臓部にあたるCPUとなるCortex-X925は、Arm史上最も高性能・高効率かつ汎用性の高い、Armv9.2アーキテクチャベースのCPUクラスターで、最高のパフォーマンスと電力効率を実現するという。

3.8GHzのクロック周波数と最大キャッシュサイズを想定した場合、2023年のスマートフォンのフラッグシップ4nm SoCと比較すると、シングルスレッド性能が36%増加。AI向けのパフォーマンスは41%向上し、大規模言語モデル(LLM)などのオンデバイスでの生成AIの応答性を飛躍的に向上させるとしている。

一方、同じくArmv9.2アーキテクチャベースの新CPUとなるCortex-A725は、AIやモバイルゲームのユースケース向け性能効率を35%向上。「Arm DSU-120」が付属する新CPUのCortex-A520でサポートすることで、電力効率と拡張性を向上させるという。

もう一つの中核となるGPUのImmortalis-G925は、「Immortalis-G720」の後継となる。最大で電力効率を37%改善し、AI推論を34%高速化できる。

アーム 応用技術部ディレクターの中島理志氏は、「従来のArmは個別に物理実装できるCPUやGPUを提供していたが、それぞれ性能を個別に最適化するのではなく、CPU+GPUの1つのサブモジュールとして全体最適化し、そのまま物理実装できるオプションを用意した。開発期間の短縮、高性能の達成などに貢献できる」と話した。

開発向けライブラリーをGitHubで公開

また、Arm CPUを活用した開発向けのライブラリーとなるArm Kleidiも発表した。

Armの「GitHub」で公開し、NEON、SVE2、SME2などのArmアーキテクチャの主要機能をサポートするAIフレームワークの開発者向けの演算カーネルセット「KleidiAI」と、CV向けの「KleidiCV」を用意する。

中島氏は、AI処理向けプロセッサーとなるNPU(Neural Processing Unit)の搭載デバイスが増える一方で、NPUのハードウェアとドライバーの進化がAIアプリケーションの進化に追従できておらず、開発者はCPUでのAIソフトの最適化を迫られている現状があると説明する。

「CPU側でAIソフトウェアを最適化することは、非常に重要な課題となっている。(Arm Kleidiは)一般的に表に出てくる技術ではないが、 AIやCVのアプリケーション開発者にとっては、容易に処理を最適化できる良い選択肢」(中島氏)

AIに必要なエネルギー効率を重視

アーム 代表取締役社長の横山崇幸氏は、「グーグルの『Gemini』上で動作する『Galaxy AI』」や、OPPO、Vivo、Xiaomiといった主要メーカーの新しい独自AI機能は全てArm上で実行されているが、いずれのAI機能も膨大な電力が必要となる。より高性能なAIの実現にはエネルギー効率が重要だが、それはArmのDNAでもある」とし、高性能コンピューティングを支える技術をアピールした。

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