夫の会社が倒産!“社長夫人”から“平社員の妻”となった50代女性「私も働こう」…職歴なしでパートをはじめた結果【人材開発コンサルタントが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

人材開発コンサルタント田原祐子は、職歴のないミドル・シニア世代であってもキャリアチャレンジは十分可能だと力説します。田原氏の著書『55歳からのリアルな働き方』(かんき出版)より、職歴ゼロの状態からスーパーの花屋で働けることになった50代女性の事例をみていきましょう。

夫の会社が倒産…「社長夫人」から「零細企業平社員の妻」に

50代の三田さんは専業主婦。学生時代にお見合い結婚したご主人は、社長として家業を継ぎ、3人の子どもたちに囲まれて、何一つ不自由なく暮らしていました。

しかし、同じエリアに強力な競合他社が現れ、組織力を発揮してシェアをどんどん伸ばし、三田さんのご主人の会社の業績は悪化の一途をたどってしまいました。

もっとも恐れていた倒産が現実となり、三田家の家族はバラバラになってしまいます。

ご主人は、会社員として零細企業に就職し、家業を手伝っていた長男は福岡へ。長事例女は、幸いすでに社会人となって都内の企業に就職していましたが、未だ大学を出ていない次男の生活費は、平社員に戻ってしまったご主人の給料では賄えません。

就業経験ゼロでもキャリアチャレンジに成功

「私も働こう」

学生時代に結婚した三田さんは、これまで一度も働いたことがなく、就職経験がない三田さんを雇ってくれる会社はなかなか見つかりませんでした。

あきらめかけたころ、やっと見つけた仕事は、近所のスーパーにある花屋のパートでした。真冬には冷たい水の中で花を切る作業で、彼女の手はあかぎれだらけになり、夏の猛暑の中での苗木への水やりは彼女にはとても大変な仕事でした。

麦藁帽子をかぶって顔を布で覆っても、強烈な日差しが容赦なく照りつけ、色白の彼女は真っ黒に日焼けしました。

しかし、毎日大好きな花に囲まれている彼女は、むしろイキイキしていました。

やがて、花に関する知識が豊富でセンスのよい彼女に、アレンジを頼むお客様が増え、彼女はリーダーに抜擢され、生まれて初めて仕事に生きがいを感じ始めました。

5年経った今、三田さんは、スーパーの正社員として雇用され、花売場だけでなく、売場全体の主任として活躍しています。

「私にできる仕事なんてないと思っていました。だから、無我夢中で働きました。好きなお花の仕事ですから、辛いことも耐えられたのだと思います。そして今は、仕事って楽しいと思える毎日を送っています」

と言う三田さん。ゼロからのキャリアチャレンジを成功させた、素晴らしい事例です。

家族のなかに「主」を固定する必要はない

今から10年以上前には、働く女性の比率より、専業主婦の比率のほうが高く、「夫が働き、妻が家を守る」というパターンが多くありました。

しかし今は、この比率は逆転しており、働く女性の比率が専業主婦を上回っています。また、変化の激しい時代ですから、倒産やM&Aなど不測の事態が起こる可能性も少なくありません。

ひとりひとりに合った働き方を

このような時代には、家族内で、父や夫など誰かが「主」で、それ以外の人が「従」というように働き方を「固定」する必要はないように思います。

そのときの状況に合わせて、家族全員が「柔軟に働く体制を整えておく」ことが必要ではないでしょうか。

少なくとも、家族内の誰かが重荷に感じるような働き方だけは、避けたいものです。

田原 祐子
人材開発コンサルタント/ナレッジ・マネジメント研究者

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