『ヒーローではないけれど』チャン・ギヨンが過去を彷徨う イナが読んだ“母の本心”とは?

Netflixで配信中の『ヒーローではないけれど』。現代病にかかった超能力一家を中心としたラブファンタジーだが、ただのラブではなく、「家族」という普遍的なテーマを軸にした物語を紡いでみせている。

主演を務めるのは、チャン・ギヨンとチョン・ウヒ。チャン・ギヨンはタイムトラベル能力を持つポク・ギジュを演じる。ギジュと出会ったミステリアスな女性ト・ダヘを演じるのはチョン・ウヒで、実年齢は31歳のチャン・ギヨンより6歳上の37歳だが、物語の中では年齢差を感じさせない抜群のケミストリーを見せている。本稿では、第7話、第8話を中心にご紹介したい。(以下、ネタバレあり)

ダヘは、ギジュとの結婚式で自分が詐欺師であることを暴露した。ギジュの母で、ポク家の当主マヌム(コ・ドゥシム)は、夢で未来を視る“予知夢能力者”として、すでにダヘが詐欺師であることを明かす場面の未来を視ていたのだった。ショックを受けるギジュは、結婚式の場面にタイムトラベルをして、ダヘが暴露する場面を見ては胸を痛めていた。ダヘを責めるマヌムと、ギジュの姉ドンヒ(スヒョン)だが、父スング(オ・マンソク)は、ダヘに何か事情があったのではないかと彼女を庇う。

ギジュは、ダヘとの時間に何度も戻り、彼女に隠された事情があることを察していく。ダヘもまた、自分の前に何度も未来のギジュが現れ、状況を変えることで心を開いていく。ダヘの養母イルホン(キム・クムスン)は、ポク家の超能力を利用しようと企み、ダヘがポク家の味方についたのではないかと疑う。

ポク家の面々は、ダヘの登場によって超能力を取り戻しており、マヌムは予知夢が見られるようになり、ギジュはタイムトラベルができるようになり、ドンヒも飛行能力を取り戻す。ギジュの娘イナ(パク・ソイ)も、人の目を見ると心読める力を発揮するのだが、そのことが原因で周囲の人たちに対し心を閉ざしていた。そんなイナは、ダヘの心を読むことで彼女の置かれた境遇と真意を知り、心を開いて頼りにするようになる。さらに、ダヘに会いにイルホンが営むサウナに行き、イルホン一家と心を通わせていく。

物語の中では、ギジュとダヘの恋愛を主軸に、イナと同級生ジュヌ(ムン・ウジン)、ドンヒと美容外科医ジハン(チェ・スンユン)のサブカップルたちの恋愛も描かれている。イナとジュヌの関係では、ジュヌを巡って同級生ヘリン(キム・スイン)の悪意がイナに向けられていたが、イナはヘリンに反撃をする。その際にイナは眼鏡を失くしてしまうのだが、その眼鏡を拾ってくれたのもジュヌなのだ。ジュヌがイナに好意を向け、彼女を気にかけているのが微笑ましい。ドンヒとジハンの関係性でも、グレース(リュ・アベル)の力を借りて、ジハンの中にドンヒとの美しい過去が蘇りはじめる。しかし、ジハンはポク家の持つ資産に魅力を感じているようで、ドンヒの寂しい顔が気になるところだ。

ギジュが何度もダヘとの過去に戻りながら、彼女の過去を癒やしていく中で、彼女が過去に食べたかき氷を買いに出かける場面がある。そこでダヘが思い出のかき氷を食べて、自分も過去に戻れたと話す場面にはホロリとさせられた。本作は、ただのタイムトラベルドラマではなく、ポク家とダヘの家族の間に生まれる温かな交流にほっこりさせられる。

一方で、イナがいつ能力を家族に打ち明けるのかが待ち遠しい。ひとつ気になるのが、幼い頃、イナが交通事故に遭ったときに、イナの母の最期の心を読んだように見えるシーンだ。スマホ依存症のイナが、誰とも心通わせられない理由がそこにあるのではないだろうか。

さらに、ギジュの両親の間に何やらきな臭いにおいが漂い始めている。ダヘがポク家の指輪をはめる夢を見たというマヌムの言動に家族たちは振り回されてきたが、今後マヌム夫婦に起きる事件が、ギジュとダヘにどんな影響を与えていくのだろうか。ギジュが過去を彷徨うことから抜け出して、幸せな「今」に居続けられることを願いながら、最後まで追っていきたい。
(文=にこ)

© 株式会社blueprint