下積み時代に始めた不動産ビジネスも好調。地区首位を快走中のブルワーズを支える変わり種の遅咲き右腕<SLUGGER>

5月30日(現地)、ナ・リーグ中地区で首位を走るブルワーズはライバルのカブスに6対4で勝利。直接対決4連勝を3勝1敗で勝ち越し、2位とのゲーム差を5.5に広げた。

この試合で2番手として登板し、今季6ホールド目を記録したジョエル・パヤンプスは一風変わった経歴を持つ遅咲きリリーバーだ。

ドミニカ共和国出身のパヤンプスは現在30歳。17歳でロッキーズに入団したが、だが、マイナーでさしたる結果を残せないまま、5年目のシーズンを迎える前にお払い箱にされた。失意のまま故郷に戻ったパヤンプスは、旧友の伝手を頼ってレンタカー会社に入社。さらに副業として不動産ビジネスも始めながら、アマチュアチームでマウンドに立ち続けた。

転機となったのは15年のプレミア12だった。メンバー不足だった代表チームに招集されると、1次リーグの日本戦で2イニングを無失点に封じるなどアピールに成功。この好投が認められ、代表チームの投手コーチが当時所属していたダイヤモンドバックスとマイナー契約を結んだ。
そして、19年8月に念願のメジャーデビューを果たす。20年オフ~21年3月にかけて4度もウェーバー移籍を繰り返す経験も味わいながら徐々に実績を積み、ブルワーズに加入した昨季は球団からの助言でスライダーの改良に成功。チーム2位の69登板で防御率2.55の好成績を収めた。今季開幕直後には一時期クローザーも務めるなど、今やブルペンの中心的存在になっている。

副業の不動産ビジネスも好調のようだ。昨年から新しいビルの建設計画に携わり、今年はアパートを購入してリノベーションを施して賃貸物件として売り出している。

「早い段階で野球人生が短いことを学んだ」と言うパヤンプス。「三十にして立つ」を実践するかのように、本業でも副業でもキャリアの頂点を迎えた遅咲きの男は、今日も元気も腕を振る。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。X(旧ツイッター)IDは@Struggler_AKIRA。

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