『虎に翼』激動の第8~9週の裏側を伊藤沙莉が語る 「優三さん役が太賀さんでよかった」

NHK連続テレビ小説『虎に翼』第9週の放送を終えて、主人公・佐田寅子役の伊藤沙莉のインタビューコメントが公開された。

戦争で大切な人を次々と失った寅子。しかし、日本国憲法を胸に新たな一歩を踏み出した。優三(仲野太賀)との結婚、娘・優未の誕生などが描かれた第8週について、伊藤は次のように振り返る。

「寅子にとっては理想や夢が打ち砕かれて、試練と挫折の連続。演じていてとてもつらかったです。やっと弁護士になれたのに辞めることになったり、やっと恋をして相手を大事に思えるようになったところで戦争へ行ってしまったり。いろいろなものを得ると同時に、失っていく週でした。1週目の第5話(4月5日放送)で、お母さんのはる(石田ゆり子)が予言のように『でも、(弁護士に)なれなかったときは?』『なれたとしても、うまくいかずその道を諦めることになったときは?』と寅子に問いかけていましたが、まさしくその通りになって。寅子としては一番悔しい展開だったと思います。つらいことも多かったですが、優三さん(仲野太賀)との愛が深まり、すごく幸せなときもありました。その幸せな時間があまりに短いという切なさも、物語としては好きなんですよね」

優三と寅子が夫婦になっていく様子、そして出征時のやり取りは多くの視聴者の涙を誘った。伊藤は優三役の仲野太賀をどのように見つめていたのだろうか。

「ご本人にも何度伝えたか分かりませんが、本当に優三さん役が太賀さんでよかったと心から思いましたし、互いにそうした言葉を掛け合ううちに、より絆が深まりました。太賀さんはお芝居についていろんな提案をしてくれながら、私の考えを整理させてもくれて。特に第8週で寅子として演技が自然とできたのは、優三さんが太賀さんだったというのがとても大きかったです。改めて振り返ると、演じていてすごくいい時間でした」

第43話では父・直言(岡部たかし)が優三の死亡通知書を隠していたことが発覚。複雑な感情で直言と向きあった寅子を伊藤はどんな思いで演じていたのだろうか。

「この週はもう、感情がぐちゃぐちゃで。このシーンでは、寅子の気持ちを整理したくて演出の方に相談したんです。なかでも『でも、お父さんだけだったよ……家族で女子部に行っていいって言ってくれたのは』というセリフを言うときは、寅子としてあふれてくる感情が、喜怒哀楽のどこに属しているのか分からなくなって。感情の焦点をどこにも合わせられなくなってしまったんです。そこで『答えなんか出そうと思わなくていいよ、もうぐちゃぐちゃのままでいい』とアドバイスをいただいて。その通りに、あえて特定の感情に焦点を定めずに演じたからこそ、違和感のない自然な表現ができたと感じています」

視聴者の中でも話題となった第1話につながる第44話。伊藤にとっても特別な放送回となったようだ。

「第44話(5月30日放送)の、第1話(4月1日放送)につながる河原のシーン! 優三さんの幻影に『トラちゃんができるのは、トラちゃんの好きに生きることです』と改めて励まされて、それと同時に新しい日本国憲法を手にするという、終わりと始まりがリンクするところが物語の造りとしてもおもしろいと思いました。続く10週からも、楽しんでいただけたらうれしいです!」

(文=リアルサウンド編集部)

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