苦情が相次ぐ「全仏オープン」がスタンドでの飲酒禁止に!悪質な観客は退場処分の厳格対応へ<SMASH>

連日熱戦が繰り広げられているテニス四大大会「全仏オープン」(5月26日~6月9日/フランス・パリ)だが、今大会は選手から観客のマナーに関する苦言が相次いでいる。

事態が深刻化する中、トーナメントディレクターのアメリー・モーレスモ氏(フランス/女子元世界1位)がスタジアムでの飲酒禁止を含む追加の安全対策を講じると発表したと、海外メディア『tennishead』が報じている。

発表の発端の1つは現地5月28日に実施されたダビド・ゴファン(ベルギー/世界ランキング115位)とジョバンニ・ムぺシ・ペリカール(フランス/同66位)による男子シングルス1回戦での出来事だ。セットカウント3-2でムペシ・ペリカールに勝利したゴファンは、オンコートインタビューで試合中の観客のマナーが非常に悪かったとし、批判の言葉をこう口にしていた。

「明らかに行き過ぎだ。彼らは本当に無礼で度が過ぎている。サッカーみたいになりつつある。このままだといずれは発煙弾を投げ込む者やフーリガン(暴徒化した集団)が現れ、スタンドで喧嘩が起きるだろう。(今の状況が)馬鹿馬鹿しくなってきている。会場の雰囲気を作るためというより、何らかのトラブルを起こすためにスタンドにいる。今日は誰かが僕に向かってチューインガムを吐き出した。試合は複雑だったし、仮に観客に怒っていたら、僕は(精神的に)不安定になっていたかもしれない」
不満を抱くのはゴファンだけではない。翌29日の試合で大坂なおみに競り勝ったイガ・シフィオンテク(ポーランド/同1位)も試合後のインタビューで観客に対し、「プレッシャーのかかるラリー中やリターンの前に何かを叫ばれると集中力を保つのが本当に難しくなる。数ポイントで流れが大きく変わることがあるので、ポイント間に声援を送ってほしい」と呼びかけていたのだ。

こうした選手たちの声を踏まえ、モーレスモ氏は新たな対応策として「これまで許されていた観客席での飲酒を禁止する」と発表。続けてこれから会場を訪れるファンへの警告を発すとともに、セキュリティ強化にも努める旨を次のように伝えた。

「今回の決定により審判は選手と試合を尊重するために、(マナーの悪い観客には)厳格に対処するようになる。この2つを踏み越えることは許されない。審判員はこの件において非常に重要な役割を担うことになる」

「セキュリティの面でも誰がトラブルを起こしているのかを正確に把握するつもりでいる。なぜなら、度を超えているのは少数だと思われるからだ。警備担当者は騒ぎを起こした人を落ち着かせるか、行き過ぎた行為があれば退場させることもある」

今回の発表には『節度を守って観戦を楽しんでほしい』というモーレスモ氏の切実な思いが込められている。その思いが観客にしっかりと届くことを願うばかりだ。

文●中村光佑

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