8年ぶり新作『あぶ刑事』週末動員1位で好調、今年はシニア向け映画の当たり年?

(C)2024「帰ってきた あぶない刑事」製作委員会

1986年にテレビドラマが放映されて以来、多くのファンに愛されてきた『あぶない刑事』シリーズの最新映画『帰ってきた あぶない刑事』(原廣利監督)が5月24日(金)に公開され、週末3日間(24~26日)で観客動員数が25万人、興行収入が3.5億円を突破。週末動員ランキング1位を記録し、前作『さらば あぶない刑事』の16.3億円超えとなる20億円も射程圏内のヒットスタートとなった。往年のファンにとっても待ってましたの話題作だが、今年はシニア層にスポットを当てた映画が続々と公開中、公開を控えている。作品を紹介しながらその共通点を探ってみたい。

早くも前作超え? 8年ぶり『あぶ刑事』週末動員1位の好スタート

タカこと鷹山敏樹を演じた舘ひろしさんは74歳。ユージこと大下勇次を演じた柴田恭兵さんは72歳。5月11日に大阪で開催されたファンミーティングで舘さんは「老体に鞭打って頑張りました。楽しんでいただけたら幸いです」と挨拶し、「70過ぎてから映画を撮りたいな、と思っておりまして、同世代の方に向けてタカとユージが頑張ってますよ、というメッセージをこめながら歳相応に一生懸命走りました」と振り返った柴田さん。タカ&ユージが70歳を過ぎていることに改めて驚きを隠せないが、SNSでは映画を見たファンからは「イケおじにも程がある」「タカ&ユージ最高」など絶賛のコメントであふれている。

タカ&ユージも年齢的にはシニア層のくくりになるが、実は今年はシニア層にスポットを当てた映画が続々と公開中、公開を控えている。

岩城滉一は26年ぶり映画主演、平泉成はキャリア60年にして初主演!

俳優の岩城滉一さん(73)が26年ぶりに映画主演を務めたことでも話題になった映画『ラストターン 福山健二71歳、二度目の青春』(久万真路監督)も公開中だ。定年退職し、認知症だった愛も看取り、ひとり静かに暮らす主人公・福山健二を岩城さんが好演している。健二を演じるにあたり、「万が一、女房が先に逝っちゃったらどうするんだろう?」と考え「僕が健二だったらこうなんじゃないかな」と思って演じたとインタビューで明かした岩城さん。第二の人生を考え始めた健二が一歩を踏み出す姿に勇気をもらえる人は多いのではないか?

映画『ラストターン 福山健二71歳、二度目の青春』メインビジュアル (C)2023『ラストターン』製作委員会

6月7日に公開されるのが、俳優の平泉成さんがキャリア60年にして初主演する『明日を綴る写真館』(秋山純監督)だ。さびれた写真館を営む無口なカメラマン・鮫島(平泉さん)と彼の写真に心を奪われた気鋭カメラマン・太一(Aぇ!groupの佐野晶哉さん)の世代を超えた交流を描いた作品で、誰もが抱えている“想い残し”がテーマ。「自分にも思い残していること、やり残していることは何だろう?」とふと立ち止まって考えたくなる作品に仕上がっている。

公開されたインタビュー動画で「60年、脇役ばかりをやってきたので、(オファーが)来た時は嬉しかったですね。台本を仏壇に飾って、親父とお袋に手を合わせました」と語った平泉さん。初挑戦するのに年齢は関係ないと思わせてくれる1本だ。

『明日を綴る写真館』メインビジュアル (C)2024「明日を綴る写真館」製作委員会(C)あるた梨沙/KADOKAWA

シリーズ累計175万部を突破した佐藤愛子さんの人気エッセイの映画化作品で、90歳を迎えた俳優の草笛光子さんが主演した映画『九十歳。何がめでたい』(前田哲監督・6月21日公開)も早くも話題に。断筆宣言をして、欝々とした日々を送る90歳の作家・佐藤愛子(草笛さん)と、大手出版社に勤める中年編集者・吉川真也(唐沢寿明)さんが出会ったことで、90歳にして愛子の人生が変わっていく様子をパワフル&ユーモアたっぷりに描いており、見ているだけで元気になれる作品だ。

洋画でも“シニア映画”が続々公開

洋画でも、シニア層にスポットを当てた映画の公開が控えている。

6月7日に公開される映画『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』(ヘティ・マクドナルド監督)は、定年退職し、妻のモーリーンと平凡な生活を送るハロルド・フライ(ジム・ブロードベントさん)が主人公。ある日、北の果てから思いがけない手紙が届いたことをきっかけにハロルドは手ぶらでイギリス縦断の旅に出る。道中、さまざまな事情を抱えた人々に出会うことでハロルド自身も変わっていく。

『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』メインビジュアル (C) Pilgrimage Films Limited and The British Film Institute 2022

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』(6月21日公開・アレクサンダー・ペイン監督)も、世代も立場もまったく異なる者同士の交流を描いた作品。1970年代のマサチューセッツ州にある全寮制の寄宿学校を舞台に、生真面目で皮肉屋で学生や同僚からも嫌われている教師ポール(ポール・ジアマッティさん)と、母親が再婚したために休暇の間も寄宿舎に居残ることになった学生アンガス(ドミニク・セッサさん)、寄宿舎の食堂の料理長として学生たちの面倒を見る一方で、自分の息子をベトナム戦争で亡くしたメアリー(ダバイン・ジョイ・ランドルフさん)の3人が2週間のクリスマス休暇を疑似家族のように過ごすというストーリー。

「シニア映画」とは言うものの…

ざっと直近で公開予定のシニアにスポットを当てた作品を紹介したが、どの作品にも共通しているのが、異なる世代や立場の者同士がふとしたきっかけで知り合うことで新しい世界が広がるという点。ちょっと一歩踏み出すだけで世界はこんなにも変わるのかという希望に満ちた作品群だ。「シニア映画」とはくくったものの、世代関係なくいろいろな人に見てほしい期待作ばかりだ。

THE GOLD 60編集部

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