県庁所在地で、行政の要で、文教地区として成熟した街は今、浦和駅前の再開発の真っ只中でちょっと落ち着かない。だけど、浦和を南から北までよくばって回遊してみれば街の心根はやっぱり変わらない。せかせかせず、おだやかであることに気づかせてくれる。
『Tea Room claris’s』で茶園ごとに異なる個性を楽しもう
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インドやスリランカ、中国、日本からの有機栽培紅茶を中心に味わえる専門店。同じ産地でも茶園ごとに異なる製法が味の個性になるという。最適な抽出状態で飲めるように茶葉は抜いて提供。スコーンやケーキも自家製だ。
・11:00~17:30、火・木・土営業。
・☎048-606-3160
『ゆとぴやぶっくす』南浦和に古書店の新星現る!
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本に関わる仕事がしたかった栃原麦穂さんが2022年に開いた古本屋。買い取りの本が中心だが、新刊コーナーもあり。「同じ区の『さきたま出版会』の郷土の本も置いています。直接届けてくださるんです」。栃原さんの好きな幻想文学も並べる。
・12:00~19:00、火・不定休。
・☎なし
『橋本籐工芸』あらためて知る最強自然素材の魅力
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ジャワやスマトラの森で採れる籐(ラタン)でかごやイス、ベッドまで手掛ける1970年創業の店。「籐は曲げても折れず、自然素材の中で最強。編み方も2000通りくらいあって楽しい」と2代目・橋本幸昌さん。店では母・昌子さんの手仕事が目にできる。
・10:30~18:00、日休。
・☎048-822-8422
『LETTER』で季節の便りのようなジェラートを
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築50年の長屋で食べられるのは、人工添加物も卵も使わず店で作った常時8~10種類のジェラート。「季節ごとの素材を使うので、季節のお便りのようにみなさんに届けられたら」と渡辺純子さんは店名に思いを込める。
・12:00~18:00、月~水休。
・☎なし
『ひがしなか町ベーカリー』品よく並んで待ってます
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ドイツ製の石窯で焼き上げるパンは、自家製カスタードクリーム入りのクリームパン180円、小ぶりで食べやすいベーコンエピ180円など30種類ほど。品よくショーケースに並ぶ。おすすめは巻きが美しいクロワッサン。バターときび砂糖を使って甘さにコクがありサックリ!
・10:00~19:00、日・月・第3火と毎月29日休。
・☎048-678-5566
『Bluebell』料理と空間の優しさに包まれる
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白壁と木の家具で優しい雰囲気に包まれるカフェは、料理も優しい。プレートランチ1200円は野菜多めで健康的な味わいの週替わりのおかずが6品も。ごはんは雑穀米と白米が選べておかわりも大盛りも無料だ。
・11:00~15:00LO、日・月・祝休。
・☎048-606-3521
『平野農園』電車から見えるあの店!
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「ちっぽけな店でも看板は大きく!」と建物の半分が「紀州みなべ南高梅」の文字。和歌山県みなべ町出身の金川重治さんが大宮で12年、2004年から北浦和の線路沿いで営む。故郷から届く南高梅はオーストラリアの天然岩塩だけで作り、忘れられないしょっぱさだ。
・10:00~17:30、水休。
・☎048-883-2628
『小さなお菓子屋さん それいゆ』何もない日もハレの日も寄りたい
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店の外でも漂う甘~い香り。3人入ればいっぱいの売り場にはキルシュ味のサバラン500円、パイシュー240円、ベイクドチーズケーキ500円など10種以上のケーキや焼き菓子が勢揃い。心躍らずにはいられない。
・11:00~19:00(土・日・祝は10:00~18:00)、火・不定休。
・☎048-826-5131
『PARK SIDE STAND』ホットサンドみたいな三角形の空間で
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北浦和公園脇に建つ三角形のビルで2023年秋開店。三角形のカウンターではギネスビールの樽生が飲める。1パイント1250円、焼きオイルサーディン800円。16時~18時30分はうれしい飲み物50円引き!
・16:00~22:30LO(土・日・祝は12:00~19:30LO)、月・不定休。
・☎048-606-3525
充実した街に個が混ざり合う面白さ
静かな住宅地、南浦和にうれしい異変が起きている。以前にも増していい個人店と出合うのだ。
『ゆとぴやぶっくす』の栃原麦穂さんは、浦和に住んで個人書店が少ないのが不満だったと苦笑い。「でもそれが出店のきっかけにもなりましたし、本好きが多いと知りました。買い物や病院のついでとか、日常の地続きで寄ってくれます」。
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「女性店主のお店がなぜか多くて」と教えてくれたのは『LETTER』の渡辺純子さん。商店街の面影を残す一角で手作りするジェラートは2種盛りが基本。「種類があるほうが楽しいしおいしいと思うんです」。街もそんな風に“個”が混ざるから面白い。
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ハイソでおだやかな空気は紅茶がよく似合う
浦和駅西口駅前はぽっかりと空いた囲いの中で、今日も工事が進行中。街ひとつ失ったようなさみしさが今もあるが、「この再開発で最後だから」と『橋本籐工芸』で聞きホッとする。1970年の創業から街の変化を見つめてきた。聞けば、籐は竹と違って中が詰まっているから強くて折れないのだそう。そんな性質が、充実した文教と行政の街と重なったりして。
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「紅茶ってちょっと親しみにくいですよね。出店するならある程度経済的余裕を感じる街でと考えました」とはひと休みに立ち寄った『Tea Room claris’s』の店主・大熊さん。丁寧に抽出されたクオリティーシーズンの爽やかなウバに癒やされ、すっかりリラックス。ちょっとハイソでおだやかな街の空気には紅茶が似合うなあ。
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北浦和の『PARK SIDESTAND』では齋木佐和子さんからギネスビールのおいしい作法を教わる。「お出しするとすぐ飲んじゃう方がいるけど待って!と(笑)。時間が経っても泡が消えないのがギネス。モヤモヤがなくなってきれいに泡と分離したら飲みごろなんです」。ギネスのように時間をかけてゆっくり味わう。せかせかしてないこの街の、良さも変化も、そうして楽しめばいいのだ。
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取材・文=下里康子 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2024年5月号より