「オタクに疲れている暇なんてない!」推し活特化型ヘアサロン・Wille店長のオタ活事情を聞いたら、推しへの情熱が異次元だった

「オタクの夢を叶えてくれる美容室があるらしい」そんな噂を聞きつけて、numan編集長が訪ねたのは、東京・渋谷にある「Wille」。見事に“推し”をヘアカラーで実現してくれました。

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しかし、前回の取材を通してもう一つ気になっていたことがありました。それは、オーナーである志賀尚之さんはどうしてこのような“オタク向け”ヘアサロンを立ち上げようと思ったのか、ということ。

率直に疑問をぶつけると、返ってきたのは「自分自身はオタクだが、それが理由でオタク向けにしようと思ったわけではない」という意外な言葉。

「Wille」オーナー・志賀尚之さん

それでも「オタクである自分だからこそやる意味があった」と話し、“生涯の推し”である「ハロー!プロジェクト」や、『STEINS;GATE』などこれまでにハマった作品への愛を語ってくれた志賀さん。

サロンを開設した背景とともに、自身のオタク遍歴や推し活事情についてたっぷりと伺いました!

開店から1ヶ月後に「オタク向け」へチェンジ!きっかけは『ハルヒ』のあのキャラ

ーーオタク向けの美容室を作ろうと考えたのは、やはりご自身がオタクだったからというのが大きいのですか?

志賀尚之(以下、志賀):
僕自身もアニメとかアイドルとか幅広く網羅しているオタクですけど、それは正直言って全く関係ないですね。

撮影当時(『パラライ』コラボ期間中)のWille店内の様子

実は「Wille」がオープンした当時、2015年頃は推し活もアニメもまったく関係ない普通のサロンだったんです。

今みたいにオタクグッズが置かれているわけでもなく、打ちっぱなしのコンクリートでスタイリッシュな空間が特徴のサロンでした。

でも、たくさんのヘアサロンの中からお客さんに選んでもらうためには「ほかとは一味違った、尖った要素が必要だな」と思って。

開業して1ヶ月くらい経った時に、思い切ってオタク向けに変更したんです。

ーー1ヶ月で! 一体何がきっかけで路線を変更したのですか?

志賀:
ある日、担当させていただいたお客さんから「『涼宮ハルヒの憂鬱』長門有希の髪色と同じにしてください」とオーダーされたんですよ。

以前からなんとなく「キャラクターと似た髪型や髪色にしてくれるヘアサロンがあったら面白そうだな」とは考えていましたが、そのオーダーを受けて確信しましたね。「オタクの方から、確実に需要があるぞ」と。

実際にアニメや漫画など二次元のキャラクターの髪型を再現したものをSNSにアップしたら、次々とファンの方からお問い合わせいただくようになったんです。

現在はアニメや漫画に限らず、VTuberやアイドルなどさまざまなジャンルの「推し」を注文していただくことが増えました。

取材当日、ホロライブ「湊あくあ」のTシャツを着用していた志賀さん

主にライブや握手会など“現場”がある少し前に、来てくれることが多いですね。

ーーそうなると、現場の多い“アイドルオタク専門”の方が良さそうな気がしますが、そうしなかった理由はあるのでしょうか?

志賀:
アイドルさんだと、どうしてもバリエーションが少なくなってしまうんですよ。

黒髪で清楚な髪型の子が多いので、ヘアカラーを入れると担当カラー1色だけになってしまう場合があって。

アニメや漫画のキャラクターの方が髪色が個性的ですし、髪だけでなく衣装の色など“概念”を取り入れることができるので、種類をぐっと増やすことができるんです。

もちろん、僕がアニメ好きだということも理由の一つ。話題の作品は一通り観ているので、お客さんの好みに合わせてお話しすることもできます。

志賀さんのご自宅にはアニメ作品のグッズがずらり!

イチ推しはハロプロ!「楽曲、ダンス、演出…全てが推せる」

ーー勉強熱心ですばらしいです……。もともとアニメがお好きとのことですが、志賀さんがオタクになったのはいつ頃だったのでしょうか?

志賀:
小学校低学年の頃ですね。当時流行っていた『機動戦士ガンダム』から入って、『頭文字D』にハマりました。これはもう、語り始めたら黒歴史ですね(笑)

作品の世界観に没頭するあまり、当時小学生なのに“厨二病”をこじらせてしまったんです。

とある少年漫画キャラを真似して、油性ペンで腕にドラゴンを描いて包帯巻いたり、縄跳びを全身に巻きつけて登校していたりしていました。今考えると、相当やばい子どもですよね(笑)。

ーー“右目がうずく”タイプのオタクだったのですね……(笑)。そのほか、人生に大きな影響を与えてくれた作品はありますか?

志賀:
いくつかあるんですけど、アニメだと『STEINS;GATE』(以下、シュタゲ)、漫画は『すごいよ!!マサルさん』ですかね。この二つで僕の人格が形成されました。

『シュタゲ』って、本当にすごいんですよ。タイムリープものなのでファンタジー作品だと思われがちなのですが、実は科学的な理論に基づいた設定がきちんとあるんです。

物理学や脳科学で使われる専門用語もたくさん出てくるので、観ているだけでいろいろな知識が身につく。昔から厨二病っぽいものに惹かれてきたのもあると思いますが、『シュタゲ』を通して人生の価値観が変わりましたね。

ーーその他にも好きな作品はありますか?

志賀:
『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズ『らき☆すた』『マクロスF』など、僕が専門学生の時に流行っていた作品は一通りハマりました。

ご自宅には『マクロスF』ランカ・リーのフィギュアも。

でも、どちらかというと熱狂して推していたのはアニメよりもアイドルなんです。専門学生の時に「AKB48」の北原里英ちゃんを激推ししていて、秋葉原にある劇場に通い詰めていました。美容師になってからも、時間を見つけては通っていましたね。

AKB48北原里英さんの秘蔵グッズ

当時「推し活」という言葉はまだ生まれてませんでしたが、公演や握手会がある度に参戦して、ひたすらグッズやチェキを集めていましたね。いくら使ったか覚えていないほど、投資しました(笑)。

あとは、「ハロー!プロジェクト」。“ハロプロ”は本当、神様ですよ。

ーー推しているメンバーはいますか?

志賀:
中学生の頃は、松浦亜弥さんを推していましたね。ハロプロ推しになったきっかけは、間違いなく彼女です。今は「モーニング娘。'24」の岡村ほまれさんを激推ししています。

でも正直、ハロプロに関しては誰が一番とかではなくて、彼女たちが魅せる歌とパフォーマンスを含めた全てが推せるんですよ。

なので、つんく♂さんが手掛けられた楽曲を全部含めて「箱推し」ですね。誰の何が一番とか、選べないです。

つんく♂さんが作詞された曲って、どれも女性目線で書かれているから女心を学べるんですよ。それに加えて、アイドルの才能を見出して的確にプロデュースする力もすばらしい。ハロプロを生み出した存在として、人間性そのものもリスペクトしています。

「体調を崩したら医者より“推し”の声」異次元レベルな推し活への情熱

ーーアニメや漫画のみならず、いろんな「沼」を渡り歩いてきたのですね。現在は推し活をしていますか?

志賀:
ハロプロのライブやイベントの現場には、めちゃくちゃ行っていますね。

CDをたくさん買って“接触”することもありますが、ステージでパフォーマンスをしている推しを見に行くことに生きがいを感じています。

アニメや漫画に関しては、フィギュアや原画など希少価値が高いものを集めていますね。

志賀さんのご自宅

お客さんがどんなアニメ作品を推していても、ある程度は話の内容を理解できるように、毎クール全て第1話は必ず観るようにしています。

ーー毎クールすべての作品を! まさにオタクの鑑だなと思いますが、美容師さんは基本土日もお仕事で多忙なイメージがあります。仕事とオタク活動は、どのように両立させているのでしょう?

志賀:
オタクにとって、時間は“つくる”ものだと思っています。

まとまった時間が取れなかったとしても、通勤の合間とか必ずスキマ時間はあるはず。それに、アニメを観たり推しのライブに参戦する時間がなければ、睡眠時間を削ればいいだけの話じゃないですか。

僕にとっては、「仕事が忙しくて、推し活できない!」なんて言い訳は考えられないですね。自分の健康より、何よりも推しを優先するべきだと考えていますから(笑)。

志賀さんの「推し」によるアクスタ円陣

ーーそんな危ないことを……! 体調を崩したらすぐお医者さんにかかってほしい……。

志賀:
もちろん美容師として、仕事に支障が出ないように気を付けています。でも、もし無理がたたって体調を崩したとしても、病院に行って治療を受けるより推しの声を聞いて癒やしをもらった方が元気になれると、個人的には信じているので!

それに、万が一全身にガラスが刺さる大事故に巻き込まれたとしても、「心臓にガラスが刺さってるって……かっこよくない?」と思っちゃいますね。まだまだ厨二病が抜けていないのかもしれません(笑)。

ーー(……この人、すごすぎる!)では、今まで「推し疲れ」なんて験したことはないのでしょうか。

志賀:
全くないですね。だって、“推す側”が疲れている場合じゃないですから。

ーーどういうことでしょうか?

志賀:
例えば推しがハロプロのアイドルだとすると、その子は貴重な青春時代を芸能活動に注ぎ込んで、人生そのものをかけてくれているわけですよね。

つまり“推す側”である僕たちは、その子の人生を預かっていると言っても過言ではない。

そんな中で、もし自分が推すことを辞めてしまったら、その子の人生は無駄になる可能性だってあります。だから僕たち・推す側が弱音吐いている場合じゃないんです。

「ハロプロ」のグッズ

ーーなるほど。とはいえランダムグッズでなかなか推しを引けないと疲れてしまうこともあると思うのですが、志賀さんはそのような経験はありましたか?

志賀:
ないですね。だって、推しが出るまで買えば「当たり」じゃないですか! オタクとして、推しを自引きする前に買うのをやめてしまうのは熱量が低いんじゃないかなと思います(笑)。

推しが熱愛報道された時も、それだけで気持ちが冷めてしまう人は多いと思うのですが、僕は全然許せちゃうタイプです。もちろん場合にもよりますが。

推しも人間だから仕方ないですし、恋愛を経験することで新たなパフォーマンスや表情を見ることができるのでは?と思ったりもします。

もちろん、プロのアイドルとして一定のラインを越えないことが正義だということも理解はしていますが。

ーー志賀さんは、かなり懐が深いオタクなのですね。

志賀:

そうですね。「ありがたく推させてもらっている」くらいのスタンスで臨むべきだと、僕は思っています。だって、こちらが勝手に好きなって推しているんですから。

理想を押し付けるよりも、「存在してくれてありがとう」の気持ちを伝えたいなといつも思っています。

執筆:柴田捺美 取材・編集:阿部裕華 ※写真は一部を除き、ご本人提供

店舗情報

Wille(ヴィレ)
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東京都渋谷区神宮前6-23-4KSビル2F,3F
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<東京メトロ 渋谷駅>
渋谷駅13番出口徒歩5分
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