チェルフィッチュ×金氏徹平『消しゴム山』3年ぶり再演

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チェルフィッチュ×金氏徹平『消しゴム山』が6月7日(金)から9日(日)まで、世田谷パブリックシアターにて上演される。

舞台には人が登場するのが当たり前だし、人が動くことこそが作品を動かす。それは舞台の前提のようなもので、多くの人は改めて認識したことさえないのではないか。その部分をひっくり返そうとしているのが『消しゴム山』だ。

『消しゴム山』2021年東京公演より(撮影:高野ユリカ)
『消しゴム山』2021年東京公演より(撮影:高野ユリカ)

2019年の初演以降、ニューヨーク、東京、ウィーン、パリでの上演を経て、今回3年ぶりの再演となる本作。この作品が作られることになったそもそものきっかけは、2017年に岡田利規が岩手県、陸前高田を訪れたこと。2011年の東日本大震災で津波の甚大な被害を受けたこの地域で、二度と被害に遭わないよう行われたのは、地面の高さを12メートル上げる工事だった。

陸前高田の造成工事の様子

これを目の当たりにした岡田は、「人間的尺度」を疑う作品に取り組む。そこで声をかけたのが、彫刻の概念を拡張する美術家・金氏徹平。岡田と金氏とは、2011年『家電のように解り合えない』でコラボレーションを行って以降、たびたび一緒に作品に取り組んできた。しかし、中でも「人とモノや道具が並列で舞台に存在し、演じる」という『消しゴム山』は、金氏とのコラボレーションの意義がこれまで以上に深いものになっている。

岡田利規(©︎宇壽山貴久子)
金氏徹平

舞台上には実際、数え切れないものが並ぶが、それはセットでも背景でもない。あくまでもこの作品においては、俳優たちと同等の存在だ。俳優たちがモノを使いながら、自分たちも動きながら、さまざまなモノとのエピソードを語っていく。

これまでになかった概念の作品を過去最大の規模で上演するにあたり、全公演で開演前に作品解説会を開催。また、視覚障害をもつ人や子どもなどに対して観劇中に舞台上で何が起きているかを同行者が耳元で解説することを受け入れる「上演中ウィスパリング歓迎の回」、静かに座っていなくてもいい「鑑賞マナーハードル低めの回」など、さまざまなかたちで作品を開いているのも魅力的だ。

文:釣木文恵

<公演情報>
チェルフィッチュ×金氏徹平『消しゴム山』

作・演出:岡田利規
セノグラフィー:金氏徹平

出演:青柳いづみ / 安藤真理 / 板橋優里 / 原田拓哉 / 矢澤誠 / 米川幸リオン

2024年6月7日(金)~6月9日(日)
会場:東京・世田谷パブリックシアター

※全公演、会場15分前より劇場ロビーにて作品解説あり
※6/8(土)13:00公演は上演中ウィスパリング歓迎
※6/9(日)13:00公演は鑑賞マナーハードル低めの回
※6/8(土)18:00公演終了後、アフタートークあり

公式サイト:
https://chelfitsch.net/

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