[社説]規正法 自公維合意 国民を甘く見てないか

 政治資金規正法が「ザル法」と呼ばれるのは、改正のたびに「抜け穴」が残されてきたからだ。その歴史をまた繰り返すのか。 

 自民党の裏金事件を受けた規正法改正を巡り、岸田文雄首相は公明党の山口那津男代表と会談し、パーティー券購入者名の公開基準額を「5万円超」に引き下げる考えを伝えた。

 山口代表は「首相として大きな決断をされた」と評価、法改正に賛成する方針だ。

 首相は日本維新の会の馬場伸幸代表とも会談し、政策活動費の10年後公開など透明化に向けた合意文書を取り交わした。

 馬場代表は、自民の案に賛成を明言した。

 自民が公明、維新の主張を受け入れ再修正に応じたことで、規正法改正は今国会で成立する見通しとなった。

 党首会談を受けて、自民党は再修正案を与野党に提示した。

 政治家や政治団体が活動資金を得るために開く政治資金パーティーは、高い利益率から事実上の「企業・団体献金」と指摘されている。

 修正前の自民案は、パーティー券購入者名の公開基準額を現行「20万円超」から「10万円超」へ引き下げるとしていた。一方、公明や維新は寄付の基準額に合わせた「5万円超」を主張していた。

 公開基準の引き下げで、従来より透明化は進むかもしれない。しかしパーティー券収入から裏金をつくる「抜け道」は残る。

 あれだけの裏金事件の後の規正法改正にもかかわらず、これでは改革の名に値しない。

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 自民党から党幹部らに支出される政策活動費については、10年後に領収書を公表するという。

 維新が唱えていた10年後の領収書や明細書の公開と使用上限額を設定することなどで、首相と馬場代表が合意したのだ。

 年間10億円前後が支出される政策活動費は、使途の公開が不要で「ブラックボックスだ」として強く批判されてきた。

 それがなぜ10年後なのか。透明性を図るというのなら、意味をなさない。  

 法施行後3年の見直し規定も同様だ。 

 1994年の政治改革では企業・団体献金の「5年後禁止」で合意したが、結局、ほごにされた。

 決定の「先送り」からは、改革の意志は感じられない。

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 裏金事件を巡り「同じ穴のむじなに見られたくない」と自民を批判したのは公明の山口代表だ。

 維新も企業・団体献金の全面禁止が本丸ではなかったか。

 野党がそろって要求していた企業・団体献金の禁止、連座制の導入など、肝心な点は手付かずのままである。

 政治資金規正法の目的は、政治活動が国民の監視と批判の下に行われ、公明と公正を確保することだ。

 これでは実効性も公正性も確保することはできない。

 国民の怒りを甘く見過ぎている。

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