《いばらき御朱印めぐり》日立市 艫神社

【図表】

■季節限定や切り絵も発案 咲き乱れるバラ評判

住宅街の細い道を進むと、突然目の前に鳥居が現れた。階段の参道は小高い丘の上方に延び、周囲はこんもりとした木立。茨城県日立市十王町友部東の「艫(とも)神社」は町中の一角にひっそりとあった。

その昔、現在の同市川尻町国井浜に一隻の船が漂着した。中世、友部(現在の同市十王町友部)に城を構え一帯を治めていた矢田部氏の「山直日記」によると、船の艫(後方部分)には1体の像があったという。

浜の住人が矢田部氏に像を献上したところ「これは鹿島の神が乗りし船」という。艫にあったことから「艫之大明神」として武運長久の守護神とたたえ、程なく船見山(現在地)に祭った。時に1177(治承元)年9月のことであった-というのが今に至る艫神社のざっとした起こりである。

住宅街の中の同神社は鎮守の森に隠れ、拝殿は存在を主張するでもなくたたずむ。その奥、権現造りの本殿はなお見えない。歴史と伝統に依拠した正統的な構えである。主祭神は武甕槌命(たけみかづちのみこと)。

ではあるのだがしかし、境内の周囲を歩くと、やたらとバラの花が目に付く。素人目にも品種、色ともさまざまに咲き乱れ、まさに百花繚乱(りょうらん)、いや〝一花繚乱〟か。

「全て当社宮司の中村昭良が丹精込めたバラです」と出迎えてくれたのは禰宜(ねぎ)の中村大亮さん。中村宮司は若い頃からバラ栽培が趣味で、一時は県内愛好家団体の代表を務めたほど。

趣味が高じ、やがてバラは800種、千本にまで増え、バラ園の体裁を整えるに至って、「バラの神社」として評判を呼ぶようになる。これに目を付けた大亮さん、「奉拝 艫神社」と記した通常のご朱印の他に、バラの季節である5~6月に限定御朱印「薔薇之刻(ばらのとき)」を発案したのが2020年だった。

他にも飼い猫のジェリーを看板猫として、猫とバラをかたどった「切り絵御朱印」は凝った作りで人気が高い。通年で出す「縁起御朱印」の印は珍しい船形にした。

大亮さんは「それもこれも皆さんに来てもらう、神社と皆さんのご縁を広げる手段、きっかけの一つになればとの考えから」とよどみない。他にも神社を巡って木製の「神玉」を集める神玉巡拝を地域の神社と共同で行っている。

■メモ
アクセス:JR常磐線十王駅から徒歩3分。国道6号十王駅入り口交差点を入って道なり、川尻跨(こ)線(せん)橋(きょう)東交差点を左折する
住所:茨城県日立市十王町友部東4の1の2
電話:0294(32)7373
受付時間:午前9時~午後4時
御朱印:初穂料、薔薇之刻500円、限定切り絵御朱印1500円、縁起御朱印1000円、通常御朱印500円

切り絵御朱印を手に、艫神社について説明する禰宜の中村大亮さん=日立市十王町友部東
限定切り絵御朱印(上段左)、薔薇之刻(同中央)、下段は左から縁起御朱印、通常御朱印、境内社船見天満宮御朱印。右上はオマイリマンステッカー
今が盛りと咲き誇るバラ=日立市十王町友部東

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