SL「D51」が奈良県王寺町の指定文化財に ナンバープレート4点も 鉄道のまち、歴史の「証人」

児童公園に静態保存されているSLデゴイチ(D51形)=4月7日、王寺町舟戸1の舟戸児童公園

 奈良県王寺町は3月18日付で、同町舟戸1丁目の舟戸児童公園内に静態保存しているSL「D51形蒸気機関車895号機」と町地域交流センター(同町久度2丁目)に展示中のナンバープレート4点を、町の指定文化財(歴史資料)に指定した。県内で保存されている蒸気機関車(SL)が文化財指定されるのは初めて。5月22日、町ホームページで公表した。  D51形蒸気機関車(通称=デゴイチ)は、1936(昭和11)年から生産。機関車に連結する「テンダー(炭水車)」に石炭と水を多く積むことができ、長距離運転に向いていた。蒸気機関車の形式で最も多い1115両がつくられて全国に広まり、国民に親しまれた。

 同機関車は1944(同19)年、日立製作所が製造。1972(同47)年11月7日に引退するまで、王寺駅を含む国鉄時代の関西本線、草津線などを走り、総運転距離は163万3969キロに及ぶ。廃車までの1年7カ月間は奈良運転所に配置され、その名残で赤地のナンバープレートが残る。

 同町は、関西本線、和歌山線、近鉄生駒線・田原本線が通る「鉄道のまち」としても知られる。73年に関西本線が電化されたことを受け、かつてのSL鉄道文化を後世に残そうと、同機関車両をJR王寺駅北口から徒歩6分ほどの現在地に設置。児童公園を整備した。

 展示されている機関車両は運転席に座ることもでき、幅広い年齢層に人気だ。公園の両脇をJR関西本線や近鉄田原本線の電車が走り、春には桜越しの電車やSL車両を撮影しようと、写真愛好家も訪れる。同町では、夕方以降ライトアップするなど、注目度を高めようと工夫している。

 町担当課は「王寺町は、王寺駅の開業を契機に『鉄道のまち』として発展した。蒸気機関車を通して、明治時代から続いた鉄道文化の歴史を感じてもらえたら」と話している。

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