32年でゴルフクラブはどう変わった?「飛距離は?」試打してみると…

この 32 年でクラブはどのように進化したのか。

本誌記念号当時の時代を象徴するクラブと、最新クラブを同じカテゴリーどうしで比較してみた!

マッスルバックは大幅に進化している

創刊号の1 9 9 2 年から400号(2023年)までで、あまり大きな変化がないように思えるのがマッスルバックのアイアンです。

しかし、比較してみると、スリクソンの最新マッスルバックは約30年前のマッスルバックよりも顔はひと回り大きく、トップブレードは厚く、ネック形状はスッキリして圧倒的に構えやすい。打ってみても最新はロフトが立っていて飛距離が出るのに、球の高さは十分に上がる。圧倒的にやさしく進化しています。

同じような形状でもウエイトを内蔵して重心設計が大きく進歩していることを痛感しました。

見た目の大きさ安心感も違う

現在のマッスルバック(左)は、ヘッドが少し大きめで安心感があるサイズ。

トップブレードは厚め、グースのつけ方も弱くなった

ヘッドサイズは100㏄以上アップ

ドライバーヘッドの素材はチタンが主流になって久しいですが、発売されたのは100号が出た1999年ごろからで、僕もチタンドライバーを購入しました。

「TiSI」は芯に当たれば飛ぶが、芯を外すと極端に飛距離が落ちる

ピン初のチタンヘッド「TiSI」を最新の「G430 MAX」と比べてみると、ヘッドサイズは323㏄から460㏄まで増加。見た目も初代チタンは丸くてクラウンが平らで、いまとなっては違和感のある形状ですね。

しかし打ってみると、旧チタンも意外に飛ぶ。芯を喰ったときの飛距離は5ヤード程度しか負けていません。でも、芯を少しでも外すと初速がガクンと落ちて飛ばなくなる。このミスヒット時の寛容性の向上が、最新クラブの最大の進化ですね!

余剰重量を生み出した技術の進歩

ヘッドサイズのアップや比重の重いウエイトなどによる重心位置の変化で、芯が大きく広がり、ボールも高く上がるようになった

最新モデルのほうが弾道が大きく変わる

200号が出た2007年は、可変ウエイトを4カ所に搭載したテーラーメイド「r7 スーパークワッド」が誕生した年。弾道調整機能という当時としては画期的な新機能で、プロ・アマ両方に大ヒットしたドライバーでした。

これと同じく可変ウエイトを4カ所に搭載するロイヤルコレクション「TM-X」と打ち比べてみました。前者はウエイトが12gと1gが各2個。後者は6gと2gと1gが2個の計4個です。

それぞれウエイトの位置を入れ替えて弾道の変化を見ると「TM-X」のほうが、違いが大きく現れ、小さなウエイトでも大きな弾道変化を演出できるようになっている。弾道調整の幅も大きく進化していることがわかりました。

1gと12gのウエイトでも差は小さい

12g2個、1g2個の位置を前後に入れ替えて打つと弾道に変化はあったが、22gもの重量変化を与えたほどの大きな変化は見られなかった

2gと6gのウエイトで大きな変化が

フェース前後の2gと6gのウエイト位置を交換し、深重心と浅重心にして試打。弾道に大きな変化が現れ、重心設計の進化を如実に感じた

低・深重心だけではない性能が搭載されている

最後に300号が発売された2015年モデルと最新モデルのアイアンを、アベレージ向けの飛び系アイアン、キャロウェイの「ビッグバーサ」で比較してみました。

7番アイアンのロフトは、15年モデルが29度、23年モデルは27度ですが、意外だったのはロフトの多い15年モデルのほうが、5ヤードほど飛距離が出た点。その理由はバックスピン量で、15年モデルは4652rpmでしたが、23年モデルは7281rpmもスピンが入るため。最新モデルはスピンと高さで球を止められる性能が加わっています。

どちらも低・深重心ですが、ポケットキャビティから中空への構造の変化などで、アイアンに求める性能をより発揮する進化を遂げていました。

低・深重心のさらなる追求!最適な重心位置へ

超低・深重心のポケキャビ(左)から、重心をさらに最適化できる中空構造(右)にすることで、飛ぶだけでなく球を止められるアイアンに進化

試打・解説=樋村隆二

●ひむら・りゅうじ/1976年生まれ、千葉県出身。石井忍が主宰する「エースゴルフクラブ」千葉校のチーフインストラクター。クラブへの造詣も深い。

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