【社説】規正法改正協議 中身乏しく不信消えぬ

 企業・団体献金の禁止には踏み込まず、政治家への「連座制」も骨抜きのまま。抜本的見直しとは程遠い内容だ。

 自民党はきのう、政治資金規正法改正の再修正案を衆院政治改革特別委員会に示した。党総裁である岸田文雄首相が、連立を組む公明党の山口那津男代表、日本維新の会の馬場伸幸代表と相次ぎ会談し、主張を取り入れた。

 与野党協議で自民党は、ほぼゼロ回答を重ねるなど、かたくなだった。それが一転、譲歩したことで、法改正が進むと受け止める人もいるだろう。ただ、中身は乏しい。

 例えば、裏金事件の発端となった政治資金パーティーのチケット購入者名の公開基準額。公明の主張を受け入れて現行の20万円超から5万円超に引き下げるという。パーティー自体を全面禁止すべきだという意見さえ出ているのになぜ全面公開できないのか。

 政治資金パーティーは、禁止されている政治家個人への企業・団体献金の抜け道とされ、裏金づくりの温床となってきた。にもかかわらず、抜け道をふさぐ気が、与党にはないことがはっきりした。

 問題の多い政策活動費については、領収書や明細書を10年後に公開するという。年間の使用上限額を決め、内容をチェックする第三者機関を設置することにした。

 改正法の施行時期については調整する、にとどめた。自民党の当初案の2026年1月1日では遅過ぎる。裏金事件を反省しているなら、少しでも早くするべきだ。

 国会議員に支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)は、やっと前進しそうだ。使い道の公開と残金返納を義務付ける法を整備する。問題発覚から2年半、自民党が重い腰を上げた。

 今回の二つの党首会談によって改善される部分はある。とはいえ、選挙戦で一蓮托生(いちれんたくしょう)の与党と、衆院選後の与党入りの野心を隠さない野党を取り込んで、小手先の手直しで済まそうという自民党の意図が透けて見える。

 公明党の責任は重い。既得権を守ろうとする姿勢が国民の不信を招いていると、なぜ強く自民党に迫らないのか。政策活動費を巡る第三者機関の設置を認めさせたぐらいで引き下がったのでは、「同じ穴のむじな」とは違うと言っても説得力を欠く。

 維新も不可解だ。馬場代表は「わが党の考えが100%通った」と胸を張る。自民党が最も嫌がる企業・団体献金の禁止もずっと主張していたのに、忘れたのだろうか。

 裏金事件を起こしたのは自民党だ。国政選挙だけではなく、地方選挙でも批判や不信が示されている。その声に耳を傾け、「政治とカネ」問題の根絶を図らねばならない。

 自民党案では「連座制」も不十分だ。政治資金収支報告書には議員による「確認書」添付を義務付けるが、「確認はしたが、不正は知らなかった」と言い逃れる余地が残るからだ。国民の信頼を取り戻すには、保身を許さず、使い道を含めたカネの出入りの透明性を高めるほかない。改めて肝に銘じるべきだ。

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