【ナゼ?】波紋を呼ぶ…万博への遠足「希望する学校1つもない」 大阪・交野市長が表明した背景とは?(前編)

【ナゼ?】万博メタンガス爆発事故で教育現場に不安…“心配はない”はずのパピリオンエリアでも検出 波紋を呼ぶ万博への遠足(後編)

2025年大阪・関西万博をめぐり、大阪府が進めている府内の小・中学生などを学校単位で無料で招待する事業について、交野市の山本景市長が「学校単位で行かなくてもいい」と表明した。交野市内で「参加を希望する学校はゼロ」であることも同時に公表され、府内では波紋が広がっている。背景にある事情とは―(報告:万博取材班)

■「学校単位で行かなくてもいい」交野市長が挙げた7つの理由

「13校の中で万博に行きたいという学校は1校もございませんでした」

大阪府交野市の山本景市長は、5月24日に開いた会見で怒りをあらわにし、「学校単位で『行かなくてもいい』と呼びかけたほうがいいと判断した」と語った。

大阪府は、府内に住む4歳から高校生までを無料で万博に招待することにしていて、5月末を期限に各学校に対して、校外学習など学校単位で参加するかどうかの意向を回答するよう求めていた。その結果、交野市では、市内の全ての小・中学校 計13校が「未定・検討中」とし、「希望する」と答えた学校は1校もなかったという。

山本市長は会見で、7つの理由を挙げた。

▽学年の変わり目や暑い時期を除くと5~6月に学校の来場者が集中する

▽大阪府が準備しているバスが10台程度で、交野市に回ってくる可能性が極めて低い

▽貸し切りバスの見積もりが1台あたり15万円で、1人あたり5000円になる

▽電車の場合、最大2万人の利用が想定される中、学年単位で利用するのは危険

▽パビリオンは学校単位で1つくらいしか行けないのに、子どもたちが満足できるか

▽メタンガスの爆発事故が発生し、安全に懸念がある

▽(子供が無料になるコードが発行されれば)学校単位ではなく、家族と訪れたほうがいい

■深刻なバス不足…唯一の鉄道・大阪メトロ中央線に集中

学校側の懸念が特に強いのは、万博までどのように生徒・児童たちを連れていくかだ。

貸し切りバスを借りようとすれば1人あたり5000円かかり、そもそも「2024年問題」でバスの運転手不足が社会問題となる中、バス自体を確保できるかも定かではない。

大阪府東部に位置する交野市。万博会場となる夢洲に、鉄道を利用して行くには、JR東西線か京阪で大阪市内に出て、京橋駅で大阪環状線に乗り換えるか、淀屋橋駅・北浜駅などで大阪メトロに乗り換えるなどし、さらに大阪メトロ中央線に乗り換える必要がある。電車の乗り換えだけでも最低2回は必要で、所要時間は1時間以上かかる。

最大23万人近くが来場すると想定される万博。鉄道でのアクセスは延伸工事中の大阪メトロ・中央線しかなく、ただでさえ、中央線は利用者が集中すると見込まれる中、関西一円の遠足の時期が重なれば、相当な混雑が想定される。

■5月24日時点で「75%が来場を希望」 吉村知事「参加は強制ではない」

一方で、大阪府の吉村洋文知事は、交野市長の会見から3日後、「万博への招待事業」について、締め切り前の中間報告として、以下のように話した。

「現段階で回答があった学校では、75%にあたる950校が『来場を希望する』と回答をしている。予想より多くの学校が、来場を希望している状況。来場日時の調整や輸送手段の確保のほか、様々指摘されている課題についてより詳細に検討を深めていきたい」

対象となる約1900校のうち、5月24日時点で約1280校から回答があり、そのうちの約75%にあたる約950校が「希望する」としていることを明らかにした。

また、交野市の山本市長の発言に対しては、「学校単位で参加しないという意思表示をされたのであれば、希望する子供たちにチケットを渡したい」と発言。あくまで、参加を強制するものでないとした上で、「家庭によっては、万博に行けない子どももいる。できるだけ多くの子どもたちに世界の国々の価値観や伝統に触れてもらいたい」と語った。

■教育現場の声「『希望する』にしたけど、悩みはどこの学校も同じ」

一方で、「希望する」との回答で調整を進めているという府内の中学校の校長は読売テレビの取材に対し、「基本的には行かせてあげたいし、そのつもりで段取りしている。でも生徒の人数も多いので、バスが足りないとか、下見ができないとかの不安要素があるのは同じ」と吐露した。

校長はその上で「『希望する』で出すけど、最後調整がつかなければ学校単位では行けないとなることもあると思う」と明かした。

また、「未定・検討中」と回答した府内の小学校の校長は、交通面の課題を理由の1つに挙げ、「地下鉄で行くとなっても、暑い時期や暑い時間を避けて来場したいというのはどの学校も同じと思う。いっぱいの地下鉄に小学生を乗せるのはちょっと難しい」と語った。

交通アクセスや安全面などの課題を解消して、多くの子どもたちを万博会場に受け入れることができるのか。今、正念場を迎えている。

※後編「万博への遠足に教育現場の不安“存在しない”はずの場所からも『メタンガス』検出」は2日に配信します。

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