北アルプス「白馬連峰」が待望の山開き! 250人の登山客が「大雪渓」トレッキング

日本三大雪渓のひとつ、白馬大雪渓を目指してトレッキング(撮影:栗山ちほ)

5月25日(土)、北アルプス 白馬連峰の山開きを告げる「第58回貞逸祭・白馬連峰開山祭」が白馬村の猿倉駐車場(白馬岳登山口)で開催された。貞逸祭とは、白馬岳山頂に現在の「白馬山荘」を建てた松沢貞逸 (ていいつ)の功績を記念して、山の安全祈願とともに行なわれるもの。祭事とともに、白馬山案内人組合と行く大雪渓トレッキングツアーも実施され、県内外から約250人の登山客が集まった。

■アルプホルンの演奏とともに開山祭がスタート

アルプホルンの音色が新緑の山にやさしく響く

開山祭は、地元同好会によるアルプホルンの演奏から幕開け。背景には新緑に包まれた山が広がり、その向こうには雲間からちらりと見える白馬岳の姿がある。演奏後は安全祈願のための神事が執り行なわれ、白馬村村長や日本山岳協会、白馬村や小谷村、大町市の山案内人組合、陸上自衛隊、警察署、消防署、交通会社など、登山に関わるさまざまな組織の代表が玉串を捧げ、山の安全を祈った。

■大雪渓に向かうトレッキングツアーも

地元合唱団が手を振りながら歌声とともにお見送り

開山祭では、白馬山案内人とともに白馬大雪渓に向かうトレッキングツアーも実施された。テープカットによって開山が行なわれると、県内外から集まった約250人の登山客がトレッキングを開始する。登山口がある猿倉荘の前では、地元合唱団の美しい歌声が響き、白馬村出身のオリンピアン・上村愛子さんや、村の公式キャラクターのヴィクトワール・シュヴァルブラン・村男III世も駆けつけて、一緒に手を振りながら登山客をお見送り。登山客も手を振り返して笑顔で出発していく。

■ガイドとともに白馬大雪渓へ

春を迎えた若葉の山。その向こうに残雪の白馬連峰が見える

この日は45人の山案内人が集まり、ツアー参加の登山客を白馬大雪渓へとガイドする。大雪渓までの歩行時間はおよそ2時間。山の名前や、この時期に見られる白馬連峰の雪形、そして春の花などの説明をしながらゆっくりのペースで山道を進んでいく。

濡れると花弁がガラスのように透きとおるサンカヨウや、山野草の女王と呼ばれるシラネアオイ、茎の上に2つの花をつけるニリンソウの群生など、白馬の山は早くも花盛り。これから初夏に向けて次々と花が咲き、山は賑わいを見せていくだろう。

■登山者も安全を意識したい

森を抜けて雪渓の上に立つと急に風が冷たくなる。アイゼンや防寒着など装備はしっかり用意したい

森を抜けると視界が開けて、白馬大雪渓が広がっている。アイゼンを装着し、白馬尻と呼ばれる雪渓の山麓をしばらく散策したら昼食休憩。ガイドにアイゼンの装着方法や歩き方のレクチャーを受ける登山客の姿も見られた。

山案内人によると、「白馬連峰は、雑誌やウェブなどでやさしい山などとして紹介されているが、それをうのみにして500mlの水しか持参せず体調を崩す登山者もいる」という。「北アルプスとしては登りやすい山とされているかもしれないが、装備はしっかり用意してほしい」と、訪れる人も安全意識をもってほしいと語る。

また、「白馬連峰の稜線まで上がると、富山県側がなだらかで白馬側(長野県側)は崖のように切り立っています。その岩稜帯のカッコよさを見てほしい」と、山の美しさも伝えている。

■下山後は山菜料理の振る舞いも

山菜の天ぷらと豚汁でトレッキングの疲れ癒す

大雪渓を後にして、登山口まで戻ると山菜料理と豚汁の振る舞いが用意されていた。ヤマウド、ギョウジャニンニク、ウルイ、ノビル。ほかにもさまざまな山菜が天ぷらや和え物にされて並んでいる。

トレッキング後に山の恵みを味わうと、白馬連峰の自然に対する感謝の気持ちがより深まる。次々と下山してくる登山客たちも大雪渓の感動を語り合い、これから迎える登山シーズンの訪れを喜んでいた。

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