円安に直面する日本、なぜ遅々として刀を抜かないのか―中国専門家

30日、環球時報は、円安が進む中で「なぜ日本は遅々として利上げという宝刀を抜かないのか」と題した南開大学日本研究院の張玉来副院長の評論文章を掲載した。

2024年5月30日、中国メディアの環球時報は、円安が進む中で「なぜ日本は遅々として利上げという宝刀を抜かないのか」と題した南開大学日本研究院の張玉来( ジャン・ユーライ)副院長の評論文章を掲載した。

文章は日本の今年1〜3月のGDP成長率が年率換算でマイナス2%と2季ぶりにマイナス成長となり、中でもGDPの6割を占める個人消費は4季連続で減少したと紹介。これらのデータは、円安によって生じた輸入インフレが急速に日本国内に波及し、内需に影響を与えていることを示すものだと評した。

その上で、鈴木俊一財務相いわく「悪い円安」が進む中で日本の対応は今のところ為替介入にとどまっていると指摘。今年4月末以降、日本は2度にわたって大規模な「覆面介入」を行い、為替レートは一時1ドル=152円まで上昇したものの、日米間の政策金利差が5%に達する中で介入は単なる時間稼ぎでしかなく、円安を食い止めるには至らない状況だと伝えた。そして、この状況を変える唯一の方法が利上げであるものの、日銀は種々の理由から利上げの宝刀を抜くことができないでいると伝えた。

日銀が利上げに踏み切れない理由としてまず、円安が日本経済にとって複数のメリットも持っており、3月の訪日外国人観光客が初めて300万人を超え、観光収入が大きく増加するなどインバウンド需要を喚起していること、 円安の状況において企業収益が好調で、特に上場企業は3年連続で過去最高益を更新したこと、国内への直接投資が拡大しており、世界的な化粧品大手のコスメットが先ごろ、日本での新工場開設を発表し、アマゾン、グーグル、IBMといった米国のハイテク大手も日本への投資を検討していることを挙げた。

次に、11年前に日本政府と中央銀行が「デフレから脱却し、経済成長を達成する」ことを主旨として発表した「共同声明」がいまだ継続中で、目標達成には円安の状況が不可欠であること、国と地方の債務がGDPの2倍以上となる中、金利を引き上げれば国や地方行政の債務額がさらに膨らむ恐れがあり、超低金利が金融の安全弁になっていることを指摘した。

さらに、大幅な利上げによって日本経済が再びデフレ状態に戻ること、融資の返済額が増加によって中小企業の倒産が相次ぐこと、住宅ローン返済額増加による家計の圧迫、デフレ脱却のために講じた財政規模の拡大で生じた「スーパーバブル」の崩壊に伴う壊滅的な状況に対しても日銀が懸念を抱いているとした。

文章は最後に、帝国データバンクが実施した調査の結果、日本企業の64%がこれ以上の円安は企業の利益に悪影響を及ぼすと認識していることがわかったと紹介。「厳しい状況の中で、日銀は宝刀を抜くことを余儀なくされるかもしれない 」と結んだ。(翻訳・編集/川尻)

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