【規正法改正案】審議はこれからだ(6月1日)

 政治資金規正法改正に向けた自民党の再修正案が公明党などの合意を得ても、国会審議が尽くされたとは言い難い。週明け3日の衆院特別委員会で採決する日程を、自民党側が撤回したのは当然だ。岸田文雄首相は、改正案の妥当性や実効性をまずは自ら特別委員会などの場でしっかりと説明すべきだ。

 与野党協議の過程で際立ったのは、根深い政治不信をまん延させた責任に背を向けるような自民党の姿勢だ。政治資金パーティー券購入者名の公開基準額は当初、現行の半額に当たる10万円超を提示した。連立を組む公明党は最後は5万円超で譲らなかった。

 調整が難航した背景に、改革の痛みを最小限にとどめたい自民党側の思惑が浮かぶ。岸田首相が「火の玉になって信頼回復に取り組む」と強調したのとは裏腹な姿勢は、政治不信を一段と高めただけではないか。本気度が改めて問われる。

 「5万円超」の公開基準額は2027(令和9)年1月から適用するとした。それまでの2年半は「20万円超」が温存される事態に、どれほど理解が得られるのか疑問を拭えない。世論の厳しい声を意識すれば、もっと速やかに移行すべきではないか。

 使途報告義務のない政策活動費は、支出状況が分かるよう10年後に領収書を公開するとした。なぜ10年後なのかは分かりにくい。公開時に不適切な事案が明らかになったとして、10年もの過去の事案に誰が、どんな責任を負うのか。実効性自体はどうか。検証すべき論点は少なくない。

 野党は政策活動費の廃止、政治資金パーティーや企業・団体献金の禁止などを掲げている。立憲民主党については、パーティー開催禁止法案を今国会に提出していながら、党幹部が会期中の開催を予定し、「言行不一致」との批判を浴びて中止に追い込まれた経緯がある。つじつまの合わない行動は、最大野党として政権に改革を毅然[きぜん]と迫る勢いに水を差す。政治改革への本気度が試されるのは政権側と同じだろう。

 規正法改正を巡る衆院審議は大詰めを迎えている。政治とカネの問題を断てるかどうかの岐路にあると捉え、県民、国民は国会の政権、与野党の動向を厳しく見極める必要がある。(五十嵐稔)

© 株式会社福島民報社