年金にも課税される日本「余分に納税している人」多数!?…定年後の元会社員が知っておきたい「還付金」の受け取り方【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

会社員は、税金の計算について“会社に任せっきり”という人も多いでしょう。そのため、納税に関する知識がなく、定年後に「余分に納税しているのに気づいていない人」も少なくありません。そこで、『定年までに知らないとヤバイお金の話【最新版】』(彩図社)より、定年退職を迎えた“元会社員”が知っておきたい税金の基礎知識をみていきましょう。著者でファイナンシャルプランナーの岡崎充輝氏が解説します。

税金の計算を国に甘えてはいけないワケ

多くの人が知らないのが、老後にもらう年金にも税金がかかることがあるという事実です。

ここで、勘違いしてはいけないのが、税金がかかるのはあくまでも老後にもらえる年金に対してであって、遺族年金や障害者年金には税金がかかりません

また、税金の計算と徴収は、サラリーマン時代と同様、国が勝手にしてくれますので、私たちが考える必要はありません。

しかし、定年後はサラリーマンと違って、年末調整という制度がありません。

ですから、場合によっては確定申告をすれば支払った税金が戻ってくる場合もあります。

そういう意味では、サラリーマン時代は会社が守ってくれていた様々なことが、定年後になると自己責任になってしまうのです。

やはり、定年後までにしておかないとヤバイことはかなりありそうですね。

とはいえ、あまり難しいことを説明しても眠くなってしまうでしょうから、簡単な仕組みだけを簡単に見ていきましょう。

定年後、確定申告でお金が戻ってくるケース

国から支払われる年金や、個人で保険会社などに加入していた個人年金の受取額が一定の金額(65歳未満の場合は108万円、65歳以上の場合は158万円)を超える場合、源泉徴収として国が税金を天引きしてくれます。

要するに、税金の計算は年金が支払われる時に国がしてくれるいうことです。

「だったら安心」ではありません。重要なことは、年末調整がないということです。

サラリーマン時代は年末調整があって、生命保険の控除証明書や損害保険の控除証明書などを、会社に出しましたよね。

あれは、会社が皆さんの代わりに、仮に徴収されていた税金と本当に支払うべき税金を計算して調整してくれていたからなんです。だから年末調整というのです。

定年後はもちろん、その年末調整がありません。ですから、生命保険や損害保険を支払っている場合、確定申告をすると税金が還付されることがあります。

今まで税務署なんかとは縁がなかった人にとっては、とてもハードルが高いような気がするかもしれませんが、よく行政の広報紙などを見ていると、2月頃に必ず年金受給者のための確定申告に関する相談コーナーや確定申告をサポートしてくれる窓口等の案内が掲載されていますので、心配ありません。

別に悪いことをしているわけではないので、堂々と相談しに行きましょう。

定年時、定年後ともに、お金が関わることには必ず税金が関係してきます。

今までは、会社というフィルターを通して接していたことが、これからは直に接することになります。不安はあるでしょうが、まずは面倒くさがらずにきちんと聞くことから始めるべきでしょう。

素朴な疑問「健康保険」は定年後どうなるの?

健康保険は、定年後にどうなるのか? これは、かなりの人が不安に思うことではないでしょうか?

「健康保険」というのは、病院や歯医者で提示する保険証のことです。

大きく分けて、次の3つに分けることができます。

・政府管掌健康保険(現・協会けんぽ)

・健康保険組合

・国民健康保険

まずは、定年前にご自分がどの健康保険だったのかで、定年後に選択できる進路が変わってきます。

簡単に言えば、政府管掌健康保険というのは、一般のサラリーマンが所属している健康保険です。

健康保険組合は、少し大きめの企業やグループに勤めていたサラリーマンが所属している健康保険です(もちろん大企業でも、政府管掌健康保険の場合もあります)。

国民健康保険は、それ以外の人、つまり、サラリーマンではない自営業者や一部のサラリーマンが所属している健康保険です。

国民健康保険に加入しているほとんどの人は、サラリーマンではないわけですから、そもそも定年という言葉がありません。

つまり何も変わりません。今まで通りに健康保険料を支払っていくわけです。

問題は、政府管掌健康保険と健康保険組合に所属していた人です。

当然、仕事の定年とともに健康保険も定年になるので、今までの状態は変化してしまいます。大きく分けて4つの進む道があると思ってください。

・任意継続被保険者になる

・国民健康保険の退職被保険者になる

・家族の健康保険の被扶養者になる

・特例退職被保険者になる(特定の健康保険組合に加入していた場合)

今は、それぞれがどんな内容なのか知る必要はありません。

ここで一番押さえておきたいポイントは、どのコースになっても健康保険には加入しなくてはならないこと、もちろん健康保険料を納める必要があるということです。

税金よりも支払い金額の大きい“健康保険料”

税金と同様、いやそれ以上に支払う金額が多いのが、健康保険料です。

健康保険料は、ほとんどの場合で、前年の所得によって翌年の保険料が決まる仕組みです。

当然、定年後は収入が減りますので、現役の時ほど保険料を支払うわけではありませんが、どうでしょう。それでも夫婦2人で、最低年間10万円以上は支払う計算になります。

東京都の均等割額でいうと、1人あたり5万2,000円です。

つまり、月々で考えれば、9,000円弱支払うことになります。なかなか無視できない金額です。

特に、定年の翌年は、前年まで働いていた時の収入をもとに計算した所得で保険料が請求されるので、かなりの金額になります。

税金・社会保険ともに、この国で生活していくためには絶対に必要なコストです。定年後の生活費に確実に加えて計算していきましょう。

岡崎 充輝
株式会社ヘルプライフオカヤ
代表取締役/ファイナンシャルプランナー

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン