アニャ・テイラー=ジョイが語る、“怒りの戦士”フュリオサという運命の役

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M・ナイト・シャマランやエドガー・ライトら名だたる監督とのタッグで数々の話題作を送り出し、ハリウッドの新時代を切り拓いているアニャ・テイラー=ジョイ。多くのオファーが舞い込む中でも『マッドマックス:フュリオサ』との出会いに運命的なものを感じたといいます。“怒りの戦士”フュリオサとしての挑戦の日々を振り返ってもらいました。
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アニャ・テイラー=ジョイ プロフィール

1996年4月16日、アメリカ・フロリダ州生まれ。ホラー映画『ウィッチ』(2015)の主演で脚光を浴び、続くM・ナイト・シャマラン監督の『スプリット』(2017)とその続編『ミスター・ガラス』(2019)で“絶叫クイーン”としてその名を轟かせる。Netflixの「クイーンズ・ギャンビット」(2020)でチェスの天才少女を演じ、国際的にブレイク。『デューン 砂の惑星PART2』(2024)にも特別出演。

──『マッドマックス:フュリオサ』の脚本を初めて読んだとき、どう思いましたか?

私は、演じるべき役者が決まっている役があると思っています。だから『この役は私じゃない』と感じたら、手放すべきだと思います。そうすれば、その役にふさわしい人に届くから。この作品の脚本を読んだとき、私は『この役を理解できるし、すばらしい経験になる』と確信できました。自分の役だと感じたんです。

──ジョージ・ミラー監督の脚本はイラストや本からの引用などが含まれていて驚くほど詳細ですが、脚本の言葉をリアルな人物に変える錬金術も必要ですよね。あなたは何をカギにしてフュリオサを見つけたのですか?

すばらしい経験ができました。他の作品と違い、ジョージ・ミラーの脚本に携わると撮影現場に入る2週間~1ヵ月前から作品を学ぶことになります。何でも話し合うんです。彼と会うのがまだ2回目くらいのときに、もう議論が始まっていました。

『なぜこの映画を作る? この映画を僕に売り込むとしたらどう説明する?』と監督に問われて、『マッドマックスシリーズは荒唐無稽な娯楽作品でありながら、極限状態に追い込まれた人間がどうなるかという教訓も含まれている』と答えました。

──ジョージ・ミラー監督が40年以上にわたり築き上げてきた世界を歩き回るのはどんな気分でしたか?

信じられませんでした。撮影中は、もちろん集中していました。でも、毎日何回もフュリオサの心の中から抜け出して、周りを見回しては『子供の頃からの夢の世界にいる』と思いました。過去に戻れるなら、8歳の自分に『あなたは本当に夢の仕事に就く。役を演じるように言われるの』と教えます。昔からの夢でした。

このシリーズのすばらしい世界観や信じられないほどの作り込み、驚くような乗り物に囲まれていました。撮影中、いつもフィルムカメラを持ち歩き、すごい写真も撮れました。本当に単なるファンになっていたんです。

──フュリオサはタフですよね。あなたは彼女の様々な面を演じて説得力のある存在にしています。派手なアクションシーンだけでなく、静かで感動的な場面もあります。どのようにバランスをとりましたか?

彼女を演じる上で難しかったのは、監督がフュリオサの顔をどう見せたいかという明確なイメージを持っていたこと。演技者として、目で全てを伝えることが重要になりました。感情をすべて目の表情で伝えなければならず、役者としては大きな挑戦でした。

それと同時にフュリオサが感情をあらわにする瞬間もありました。あの荒れはてた地ではどんな弱さも大きな感情の揺れも許容されないから、めったにない感情の表出がすごく際立つんです。

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──クリス・ヘムズワースはディメンタスというキャラクターに何をもたらしましたか? 彼が演じる狡猾な将軍とこれから戦士になるフュリオサとの関係をどのように作り上げたのでしょうか?

ラッキーなことにクリスとの関係は、ディメンタスとフュリオサの関係とは全然違います。私たちは協力し合える友人同士で、お互いを心から尊敬しています。彼のキャラクターが大きな役割を果たすと聞いて、興奮しました。

彼の役者として才能を目の当たりにするのは本当に楽しかったです。毎朝4時間もメイクの椅子に座っているのを彼がどれだけ楽しんでいたかは分からないけれど、彼はさすがです、文句ひとつ言いませんでした。そういうところに親近感を覚えました。私たちは気取った俳優じゃありません。気取ってない役者と仕事するのは楽しいし、他の何よりも仕事を優先する人が好きです。

──荒れはてた地には弱さが入り込む余地はないと話されていましたが、警護隊長ジャック役のトム・バークは、フュリオサにとって心のオアシスのような存在でした。彼との共演はどのようなものでしたか?

彼が大好きだから、考えるだけで涙が出そうになります。彼は荒野に咲く珍しい花のような存在。それは彼がまともだから。警護隊長ジャックは純粋で、良識と威厳を持ち合わせている。フュリオサには、それが信じられなかった。でも、あの荒廃した世界で彼の威厳と良識に触れられたから生きていられたんです。

──あなた自身は現在、免許を持っているのでしょうか?

まだです。運転免許を取得できるほど長く、働いていない時間を確保できないんです。

──180度のスピンを披露すれば、即座に免許証を受け取ることができそうですね。

そのとおりですね。縦列駐車なんて必要ない!(笑)

──本作のスタントにあたってどのような準備をしたのですか?

最初にジョージから、どれくらいスタントをやる気があるかと聞かれて、『何でも。やらせてくれるならやりたいです』と答えました。そうしたら私の運転初体験は180度スピンになりました。ありがたかったのはバイクと車の運転を同時に学べたこと。バイクと同じことを車でやってみると、バイクに比べて車はとても安全で『あら、これなら大丈夫。守られている』と感じられました。

──フュリオサの外見の変化について話していただけますか? なぜ、キャラクターの本質を表現するものなのでしょうか。

この作品のために髪を剃るのを楽しみにしていました。やる気満々だったんです。でもここがジョージらしいところなんですが、彼は私が髪を触っているのを見て、『美しいな。やめよう』と言ったんです。私は『今、何て?』って。

考えてみたら、彼は正しい。15年越しの物語が描かれるのだから、時間の流れを表現する簡単な方法は髪を短くしたり、また伸ばしたりすることだから。この作品のフュリオサは、“緑の地”に戻れる、荒廃した世界に生きていても自分は変わってないと信じている部分があります。私たちが心を奪われたフュリオサになる過程で、彼女は純粋さと希望を失う。故郷にいた頃の少女には戻れない。それを彼女の髪に象徴させたんです。

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