ドイツ「乗車ホーム」変更とオランダ「田舎駅」の奇跡【海外旅行は言葉ができなくても大丈夫か】(2)

2005年ワールドユース選手権決勝の入場券。提供/後藤健生

外国へ行くと楽しいのは、違う文化に触れられるからだ。その一つが、言語である。習得は必要不可欠ではないが、学べば旅が楽しくなることは確か。時には、旅行中に急激に上達することもある。蹴球放浪家・後藤健生にも、2005年のワールドユース取材時に、そうした経験がある。

■ドイツでよくある「乗車ホーム」の変更

乗車ホームの変更というのも、オランダやドイツなどでよく出くわします。

日本では鉄道の路線というのは直線的に走っています。というのは、内陸は山が多いので、東海道線とか山陽線といった主要路線は海岸に沿って走っていることが多いからです。

そういう場合、駅の乗り場は上り線と下り線しかないわけです。

鋼鉄製の線路の上を鋼鉄製の車輪で走行する鉄道という交通機関は、勾配が大の苦手なのです。とくに、日本の鉄道網が整備された明治時代は、勾配は今よりずっと大きな問題でした。たとえば、東海道線で豊橋から名古屋方面に行くのに、当初は旧東海道沿いに線路を敷こうと思っていたらしいのです。現在の名古屋鉄道(名鉄)本線が走っているルートです。

しかし、当時の技術では勾配がきつすぎたので、結局、東海道線は蒲郡や岡崎方面に迂回して線路が敷かれたのです。

■時刻表通りに「運行されない」欧州の列車

しかし、オランダやドイツの場合(ポーランドなどもそうですが)、国土の大半は平坦ですから、線路は自由に敷設することができます。そのため、路線はまさに網の目状に走っているのです。

従って、大きな駅では東西南北いろんな方向から来る路線が交差しています。ですから、日本の鉄道のように「どこどこ行きは何番線」と決まっているわけではありません。

しかも日本の鉄道のように、時刻表通りに運行されているわけでもありません。列車の遅れは日常茶飯事。ですから、いつもは2番線から発車する列車も、到着・出発が遅れると出発番線が変更になるのです。

そういう駅では「〇時〇分発××行き列車は、▲▲分遅れで□□番線から発車します」というアナウンスをしょっちゅうしているわけです。案内板もありますが、ホームにいると、アナウンスだけが頼りということもあります。

■オランダ語のアナウンスが「聞き取れた」

2005年のときも、オランダとドイツの間を行ったり来たりしていました。

あるとき、どこだったか覚えていないのですが、ちょっと田舎の小さな駅で列車を待っていたら、やはり、そういう番線変更のアナウンスがあったので、僕はすぐにホームを移動して余裕を持って目的の列車に乗ることができました。

車内で「やれやれ、これで安心」とホッとしてから気がつきました。

「あれ、あの駅のアナウンスはオランダ語だけだったけど、どうして聞き取れたんだろう?」

オランダ語というのは文字を見ると英語やドイツ語に似ているのである程度、理解できますが、発音(そして聞き取り)は難しい言葉なのです。オランダとベルギーの共同開催となった2000年のEUROのときにもオランダにずいぶん長い期間滞在していたこともあって、当時はなんとなく聞き取りができるようになっていたのでしょう……。

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