新築マンション、高根の花に…東京で平均1億円超え なぜ高騰?

高層マンションが目立つ三ノ宮中心街。現在はタワーマンションの建設規制が行われている=2022年11月撮影、神戸市中央区

 新築分譲マンションの価格が高騰している。不動産経済研究所(東京)によると、2023年の東京23区の平均価格(1戸当たり)は初めて1億円を突破し、兵庫県でも5千万円を超えた。資材価格、人件費、地価のトリプル高が主な要因といわれるが、背景はそれだけではないようだ。今後の動向についても、不動産の仲介業者やアナリストに聞いた。(斉藤正志)

 ### ■最高額は1戸45億円

 同研究所によると、23年の東京23区の平均価格は1億1483万円(前年比39.4%増)で、13年の5853万円から10年間で約2倍になった。23年の全国平均価格は5911万円(前年比15.4%増)で7年連続上昇した。

 兵庫県は00年以降では最高額となる5139万円(同15.3%増)で、神戸市も4958万円(同27.5%増)。いずれも13年の約1.4倍になった。

 最高額は、首都圏は三田ガーデンヒルズ(東京・港区)の45億円、近畿圏はシティタワー天王寺(大阪市)の5億5千万円、兵庫県内ではグランドメゾン苦楽園ザ・ハウス(西宮市)の1億5488万円だった。

 ### ■トリプル高

 同研究所などによると、資材価格や人件費、地価の上昇が要因になっている。

 建築資材はウクライナ戦争で世界的に品薄となり、さらに円安の進行で価格が急騰した。経済調査会(東京)によると、23年度の建設資材価格指数(全国・建築)は15年度の約1.6倍に伸びた。

 人件費も、国の公共工事に反映する公共工事設計労務単価(全職種の平均値)が、24年まで12年連続で上がっている。24年4月からは働き方改革による建設業、運送業の残業規制が始まり、人件費はさらに増えることも予想されている。

 新型コロナウイルス禍で一時落ち込んだ地価も、都市部では22年以降、上昇を続ける。24年3月に公表された公示地価(1月1日時点)は、三大都市圏の住宅地で前年比2.8%増、神戸と阪神南でも同2%を超えた。

 ### ■高騰のスパイラル

 不動産関係者によると、建築コストが急激に上がったことで、大手のデベロッパー(不動産開発業者)が都心部の駅付近など需要のある好立地に絞り、高額物件を建てる傾向が強くなっているという。

 これらのことから、新築マンションの供給が減っている。同研究所によると、23年の東京23区の発売戸数は、13年比58.0%減の1万1909戸。兵庫県も同54.3%減の2666戸に、神戸市にいたっては同67.6%減の971戸にとどまった。こうしたことも、平均価格を押し上げている。

 さらに、低金利や政府の住宅ローン減税で、購入者が長期の住宅ローンを組みやすくなっていることも、高額物件の需要を後押ししている。また、円安のため海外の富裕層にとっては割安感があり、投資対象にもなっている。

 新築マンションの高騰を受け、周辺の中古マンションも価格が上がっている。

 ### ■今後の価格動向は

 神戸・阪神間のマンション事情に詳しい不動産仲介会社「トアネット」(神戸市)社長の大畑清一郎さん(43)は「建設コストが高騰しすぎて、中堅・中小のデベロッパーが淘汰されている。マンション建設が大手中心になり、値下げされない現状がある。都心部を中心に、さらに価格は上がるだろう」とする。

 「LIFULL HOME’S総研」(東京)の中山登志朗チーフアナリストは「超低金利が続き、さらに住宅ローン減税の制度が充実していることなどから、物件は高額でも、長期ローンを組んで安定的に資産形成したいというニーズは落ちないだろう。新築マンション価格は、今後も上昇していく可能性が高い」と話す。

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