東京Vの城福浩監督がチームの“変化”語る…布陣変更にソシエダ戦で受けた刺激

ソシエダ戦での学び語る城福浩監督[写真:©超ワールドサッカー]

東京ヴェルディの城福浩監督が、北海道コンサドーレ札幌戦に向けた会見を行い、チームの変化について言及した。

東京Vは前節、アウェイで行われたヴィッセル神戸戦に1-0で勝利。FC町田ゼルビア戦の大敗からバウンスバックに成功し、リーグ4戦ぶりの白星を挙げた。

そして、昨季J1王者を破って浮上のきっかけを手にした12位のチームは、2日に味の素スタジアムで行われる明治安田J1第17節で札幌と対戦する。

5月31日、クラブハウスで行われた会見で城福監督は、就任以降メインシステムとして使ってきた[4-3-3]、[4-4-2]から[3-5-2(3-4-2-1)]へ布陣変更するという大きな決断について言及した。

昨年の段階から検討を考えていながらも踏み切れずにいた中、町田戦の大敗、その後のスタッフ間の話し合いにおける和田一郎ヘッドコーチの進言がその決断を後押ししたという。

「3バックというのはすごく大きな変更で決断でしたけど、いろんな論議をしている中で、最後にヘッドコーチの和田が『3バックどうですか』というふうにパンと言ってくれた。彼は去年から『3バックもある』というのをずっと言い続けてきた仲間でもあり、彼の言葉で自分もちょっとはっとさせられました」

「そこでなぜ3バックがこのチームにとって可能性あると考えたのか、自分の頭の中で洗い出し整理して、いろんな覚悟をしました。そして、我々が論議を尽くして腹をくくって、取り組み始めたというところをおそらく選手も感じてくれているのではないかなと思います」

さらに、2年前の就任時以前からチームとして[4-3-3]のボール回しに手応えを感じていたという部分で、当時は継続が得策だと考えていたものの、選手とチームが変わっていく中、現在のチームの最大値を引き出すという部分が最終的に決断する要因になった。

「どんなサッカーであれ、[4-3-3]や[3-4-3]であれ、自分は守備のタスクは強く要求する。そうすると、攻撃のタスクと本人の長所がフィットしなかったら、守備ばかりしているような印象になる。そこは常に問題意識を持っていました。果たしてそこで起用している今の選手がジャストフィットしているのか、全ての力を出し切れるポジションなのかと…」

「今現在今年のスカッドで、このチームの最大の競争力があるポジションはどこなのかというところも踏まえることで、実はこれが一番大事ですけど、結果を手繰り寄せるために、しかも我々が志向するサッカーを多少立ち位置が変わるということは、多少の変化もある。大きく変更しない中で結果を手繰り寄せるため逆算をした時、どういう立ち位置がいいかというと、当たり前の話とはいえ、一番競争力のあるポジションの人数を増やしていく。サイドでいえば、どの高さの位置に立つことが得意な選手が多いのかとか、それで守備が崩れるか、崩れないかとかいろんなことを逆算した時、やはりこの大敗というタイミングを逃したら、おそらく大きな決断はできなかったと思います」

「いろんな要素を個別で見たら、ロジカルですけど、今までこのチームが取り組んできたことを、全くもって崩すのかというような捉え方もされてもおかしくないので、そういう意味でコーチングスタッフの助言は今思ってもすごくありがたかったと思います」

神戸戦ではひとまずその大きな決断、変化が実を結び、直近のレアル・ソシエダ戦でも3バックを継続しているが、「これからのチーム作りとしては、3バックと4バックというのは、我々の選手の競争力はどのポジションがあるかとか、どういう選手が離脱なく揃っているかとか、もちろん相手のスタイルも加味してということになる」と、4バックとの併用を示唆。その上で「どちらがオプションというのか、なかなか言いづらいぐらいのひとつの幹になると考えています」と、双方の完成度を高めていきたい考えだ。

また、指揮官は布陣変更による変化と共に、ソシエダ戦を通じたチームの変化についても語る。

過密日程の影響もあり、ソシエダ戦は神戸戦から先発全員を入れ替えて控え選手や若手選手を積極的に起用。その中で3バックのオプションを全員に経験させ、その強みと警戒すべきポイントの共有。ハイインテンシティの状況での戦い方というチームの課題の共有という収穫を得た。

さらに、ラ・リーガでも止める、蹴るの基礎技術が高く、ビルドアップ能力の高いチームとして知られるラ・レアルとの対戦は、選手たちにポジティブな変化をもたらすことになったと指揮官は語る。

「ソシエダのボールを繋いでいく技術というか、こちらがマークしているつもりでも相手はマークしている逆側の足にボールをつける。普通だったらマークされているのであれば、その選手を飛ばしますが、飛ばさずにマークしている逆側の足につけることでボールをつけていく、その技術の確かさと信頼感は勉強になりました」

「これぐらいの技術を自分たちはゲームで発揮したいし、だとしたら練習でやるしかない。こういうところは選手にとって相当刺激を受けたと思います。試合の入りというのは、一番お互いのプレッシャーが強い時なので、相手の矢印の逆を取るという判断は大事ですけど、(背後へ)蹴る判断も足元につける判断も両方できるようなところにボールを置くというところが、おそらく今回のソシエダ戦でスタンドから見ている選手もピッチでやっている選手も、僕はそこが一番選手に伝えるべきだなと思いました」

「我々が押し込みたいのであれば、どこにでも出せるところにボールを置くという技術から。それは僕らが大事にするパス&コントロールのトレーニングで、どんな意識を持ってやっているかというところからスタートする。今日のパス&コントロールの練習は全然空気が違いました。僕らが声掛けしなくても、やはり彼らの空気感が違った。だから、ソシエダ戦をやってよかったなと、今日の練習をやって改めて思いました」

そういった変化と共に臨む今節は、「長い間戦ってきましたが、やはり不変のものがある」と印象を語るミハイロ・ペトロヴィッチ監督が率いる19位のチームと対戦する。

チームとしてのファンダメンタルは変わらずも、さらなる進化に向けた変化の兆しを見せる東京Vは、この一戦で今季2度目の連勝を達成できるか。

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