『花咲舞が黙ってない』昇仙峡の秘めたる思いが明らかに ヒール役・要潤の冷徹な振る舞い

クライマックスに向かうドラマ『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)第8話では、昇仙峡(菊地凛子)の秘めたる思いが明らかになる。

昇仙峡の恋人であり、相馬(山本耕史)にとっての同期だった川野(平原テツ)。彼がなぜ亡くなったのかはずっとベールに包まれていたが、そこには紀本(要潤)の存在があった。

支店長時代の紀本は、東京第一銀行の支店トップになるべく、融資先の架空取引も見過ごす手段を選ばない人物だった。それに異を唱えていたのが川野。しかし、紀本から融資を通さないなどのあからさまな無視をくらい孤立し、仕舞いには川野が融資の取引を進めていた会社とのトラブルを紀本から仕掛けられ、そのことがきっかけで取引先の社長が亡くなるなど、川野はみるみると憔悴していった。それでも川野は銀行を変えることを諦めることなく、手帳にはその変革への切り札のヒントが握られたまま彼は亡くなってしまった。

紀本のもとに縁起の悪い彼岸花が「川野直秀」の名前で届く。川野の命日に紀本へと彼岸花を送っていたのは昇仙峡。それは彼女にとっての宣戦布告のメッセージだった。一人で巨大な敵に立ち向かおうとしている昇仙峡に、舞(今田美桜)は東京第一銀行の行員として手を差し伸べる。

今作の『花咲舞が黙ってない』は、第5話にて半沢直樹(劇団ひとり)が登場するなど、日曜劇場『半沢直樹』(TBS系)とストーリーがリンクする部分もあるが、言わば昇仙峡は父・慎之助(笑福亭鶴瓶)を大和田(香川照之)に殺された半沢(堺雅人)の立場。ここから昇仙峡の倍返しが始まるのかもしれない。花瓶に生けられた一輪の彼岸花はその表明とも取れる。川野が調べていた切り札のメモが書かれた手帳は昇仙峡の手に渡っている。

銀行の利益のためならどんな手段もいとわない紀本。第8話では、川野への非情な態度が明らかになっており、その矛先は臨店班として目を付けられている舞と相馬へと今後向けられるだろう。今作で最大のヒール役を担っている紀本を演じる要潤だが、その冷徹な振る舞いと口調からは朝ドラ『らんまん』(NHK総合)で好演した田邊教授をも想起させる。強大な権力でねじ伏せようとするところは、紀本と田邊とで共通する部分だ。

最終局面へと向かう『花咲舞が黙ってない』第9話では、臨店班が解散の危機に直面。舞が相馬へと「今までありがとうございました」と伝えるシーンが予告では確認できる。さらに銀行を変える切り札が残された川野の手帳には、「石垣」「51」の文字が記されていた。

(文=渡辺彰浩)

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