「私、彼のこと好きじゃないかも…」焼肉デートで、女が急に目の前の男にさめたワケ

今週のテーマは「友達期間3年。ようやくチャンスが巡ってきたはずなのに、先に進まない理由は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:3年の友達関係を経て、お互いの“好き”を確認した男女。しかしその後意外な展開が待っており…

聡志と二人で焼肉に行った帰り、目黒駅の前で、彼が急に告白してきたので私は思わず耳を疑った。

「俺、彩ちゃんのこと好きだよ」

どう返事をするのが正解なのだろうか。聡志とは、友達期間が3年もある。

その間、ずっと私のことを気に入ってくれていたのも知っている。だから邪険にはしたくないし、私も彼氏と別れたばかりで、聡志はアリかなと思っていた。

だからこう返事をした。

「本当に?私も、聡志さんのこと好きだよ」

しかしこの後、結局私たちは関係は発展することもなく、ずっと平行線のままだ。

どうして私が聡志の気持ちに応えることをせず、かといって彼をキッパリ振ることもしないのか?

聡志はバツイチだけど、「相手が結婚を望めば結婚する」というくらい優しいし、大手IT企業で働いているので生活も安定していている。

でも、聡志には決定的に欠けている要素がある。

そして聡志に欠けている要素こそ、世の女性がどうしようもなく求めているものなのだ…。

A1:安全牌だったから。

聡志と出会ったのは、3年前。

たまたま知り合いの紹介で出会ったのだけれど、聡志が最初から私のことを気に入ってくれているのは、なんとなく感じていた。

でも当時の私には彼氏がいたので、聡志と関係が発展することはなかった。

それでもたまに聡志が食事へ誘ってくれたりしたので、半年に一度くらい二人で会う関係は続いていた。

彼氏がいても聡志と食事へ行ったのには理由がある。

“聡志は絶対に、私に手を出してこない”という自信があったから。

「彩ちゃんに、彼氏がいなかったらよかったのにな…」

口ではこういうことを言うけれど、その先は絶対にない。

「え〜。聡志さんってそういうこと言うんだ。意外。でも、今日もどうせ一軒目でさらっと帰るんでしょ?」
「もちろん。眠くなっちゃうし」
「まだ若いのに、おじいちゃんみたいなこと言わないでよ(笑)」

聡志は必ず一軒目で帰る安全牌な男性。

そういう意味で、二人で食事へ行っても何もないことは明確だった。

しかし時は流れ、つい先日私が彼氏と別れたあと、真っ先に顔が浮かんだのが聡志。

だから早速別れた報告も兼ねて、聡志を食事に誘ってみた。

「聞いて!!遂に別れちゃったよ〜」
「なんで別れたの?」
「方向性の違い?価値観の違いというのかな…。最後は、お互い『結婚はできないね』となり」

夫婦も同じかもしれないけれど、恋人同士もいつか終わりは来る。

「彩ちゃんって結婚願望とかあるの?」
「あるよ!今年で35歳だし。聡志さんは?」
「僕はどちらでも?バツイチだし、相手に合わせるかな」

聡志は10年くらい前に離婚をしている。

しかし、話しているうちにふと気がついた。出会ってから、聡志に女の影を感じたことがないことに。

「そっか…。聡志さん、今彼女は?」
「いないよ。彩ちゃんと出会った時からずっといない」
「え!?マジで?なんで?」
「なんでと言われても…」

私からすると、不思議でたまらなかった。もっと「女性と遊びたい!」とか、そういう欲はないのだろうか。

「もう40過ぎたし、出会いもないからね」
「そうなんだ…私も35歳だから焦らないとな」
「彩ちゃんはモテるでしょ」
「どうだろう。まぁモテないことはないけど…」

― もしかして、恋愛とかに一切興味がないのかな?でも私のことは好きだと言ってくれていたし…。とりあえず、大事にしよう。

彼氏と別れたばかりの女に優しくしてくれる男性は、とても有り難い。それに、いつ何時そこから恋愛に発展するかもわからない。

だから帰り際も、一旦私のほうから腕を組んだ。

「最初に会った時、聡志さんと付き合ってたら良かったのかな」
「彩ちゃん、酔ってるでしょ?今日は帰ろうか」

もちろん、今日も聡志が何もしてこないのはわかっていた。

「今日も楽しかった〜!聡志さん、またご飯行こうよ」
「もちろんだよ」

条件もいいし、優しくて人もいい。

― あれ?これはありかも。

この時までは、私だって聡志との関係を進めてもいいかなと思っていた。

A2:男としての色気がない。

前回のデートで、多少「聡志、アリかな?」と思えた私。でもまだまだ、足りない。

だから次にデートした焼肉店で、彼とどんな会話をすれば盛り上がるのか、そのキッカケとなるような、スイッチボタンをずっと探していた。

「ここのお店、来てみたかったんだ〜♡」
「彩ちゃん初めて?」
「うん、初めて!楽しみだな〜」

はたから見れば、私たちはもうカップルに見えるかもしれない。お互い気も使わず、楽だ。聡志だったら、すっぴんも余裕で見せられる。

しかし、ふと気がついた。

今日のデートの服装は、いつも以上にラフな2,900円のTシャツ。そして今日は夕方前から、一度もメイク直しをしていない。

― 私、全然気合入ってないじゃん…。

そう思った瞬間、わかりやすい自分の性格に笑いそうになった。

焼肉デートでも、大好きな相手だったら洗濯機でも洗えるおしゃれな洋服とか、色々と頑張る。そもそも最近の高級焼肉はにおいがつかないので、気にせずにお気に入りの洋服を着てくるかもしれない。

そう思った時、私は聡志を恋愛対象として見れていないことにハッキリと気がつく。

その理由は、聡志の決定的な“色気のなさ”にある。

「聡志さんってさ、なんで彼女作らないの?」
「たぶんだけど、ひとり暮らしも長くなってきたし、他人のペースに合わせるのが苦手なのかも」

なぜ色気を感じられないのか、話している聡志の顔を見ながら考えてみる。

そもそも、話がツマラナイ。

「そっか…。自分のペースがあるもんね。聡志さんは、夜とか何をしているの?」
「家帰って、ご飯食べて。ネトフリとかテレビ見て、お風呂入って寝る…って感じかな」
「すごい平和だね。飲みに行かないの?」
「最近面倒で」

話もつまらないけれど、それ以上に日々の過ごし方や聡志の考え方を聞いていると、もはや初老のおじいさんのようにも見えてくる。

また話を聞く限り、離婚後のひとり暮らしが長すぎて、今さら誰かが入る隙間もなさそうだ。

二人の間で、お肉がジュワッと音を立てている。その音を聞いている間、会話は一切ない。

「聡志さんって、面白いよね。IT企業でしっかり稼いでいるし、優しくて浮気とかしなさそうなのに」
「ね〜。なんで彼女いないんだろう」
「やっぱり、優しすぎるんじゃない?」

これは私なりの精一杯のお世辞だった。

聡志がモテない理由は、わかりきっている。

色気のない男は、友達枠からは抜けられない。永遠のコンフォートゾーン…悪く言うならば、「何かあった時のセーフティー」くらいの感覚である。

そしてお店を出た途端に言われた、この一言。

「俺、彩ちゃんのこと好きだよ」

タイミングも違うし、場所も違う。なぜ目黒駅前の、人混みの中でこんなことを言うのだろうか。

― いい人なんだけど、なんか違うのよね。

人としては好きだけれど、異性としては見られない。

だから私は、少しだけ枠をはみ出ようとしてた聡志を、慌てて“コンフォートゾーン”に戻した。

▶【Q】はこちら:3年の友達関係を経て、お互いの“好き”を確認した男女。しかしその後意外な展開が待っており…

▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

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