ももいろクローバーZ 玉井詩織が手にした変化 節目の断髪、コメディアンヌとしての覚醒……28歳を総括

ももいろクローバーZの玉井詩織が6月4日の誕生日で29歳を迎える。玉井自身「どうせ2年ぐらいで終わる、と思ってはじめたグループ」と言っていたももいろクローバーZが、気づけば結成16周年。玉井も“20代ラストイヤー”をアイドルとして過ごすことになるとは、デビュー当時はきっと思ってもいなかっただろう。

28歳になったばかりの玉井は2023年6月15日、所属事務所であるスターダストのオフィシャルブログで、母親お手製のケーキを手に「実感ない!!!笑」「完全に大人だけど 子供心も忘れずに、まだまだチャレンジする気持ちを持って、色んなことを楽しみます~ そんな私をよろしくです!」と心境を投稿した。

そんな玉井のひとつの大きな変化は、胸元まで長かった髪の毛をばっさりカットしたことだろう。これは雑誌『MAQUIA』2023年10月号(集英社)の「28歳の新しい顔」という企画のなかで行われたもの。同誌のTikTokアカウントでは玉井自ら髪の毛にハサミを入れる動画が公開されるなどもした。また玉井はWEBサイト『MAQUIA ONLINE』で「今までとは違う28歳の自分に似合う等身大のショートにしたくて」と髪を切った理由を明かしていた(※1)。

思い返すと、これまでも玉井が“髪を切ること”はメディアで紹介されていた。書籍『QUICK JAPAN vol.114』(2014年/太田出版)では、中学を卒業してグループ活動に専念するための“儀式”として、2014年3月31日に髪をバッサリ(ちなみに髪を切ることを決めたのはその日だそうだ)。さらに同年5月16日、ももいろクローバーZの結成6周年記念日には前髪も短くカットした。同書には、「最初は現場のノリで話していた冗談が『でも、私、よくよく考えたら、そんなに髪型にこだわりがあるわけじゃないから、まぁいいか』とテレビ生出演の直前にハサミを入れた」と玉井の言葉を絡めながら、その状況が伝えられていた。玉井は“勢い”で髪を切る傾向があるが、しかしそこには何か決意表明のような意味も込められていたのではないだろうか。

玉井は、特に10代の時は「来年で高校生活が終わるとか、いろいろ節目のタイミングがあったから『これだけは今年のうちにやっておきたい』みたいなものもあって」(書籍『OVERTURE』No.017/徳間書店より)と、その時々にできることを大事にしていた。

ただ「社会人になったら……っていうか、ウチらはずっと社会人みたいなもんなんだけど、『今年やり残したことがあるんだったら、来年やればいい』って」(同書より)と、成長するにつれてそこまで節目を気にすることはなくなってきたと話している。

そう考えると、28歳で髪をバッサリと切ったのは大きな理由はないのかもしれない。それでも、2023年は12カ月連続でソロ曲を発表したプロジェクト「SHIORI TAMAI 12 Colors」というチャレンジもあった。この企画は、玉井のアイドル人生を後々に振り返った時、必ず挙げられるトピックである。その点で玉井にとって28歳は、特別な一年であったことに違いはない。

さらに27歳から28歳になったちょうどその期間は、舞台『東京喜劇熱海五郎一座~クセ強オンナと時をかけない男たち~』にも出演した。同作は俳優の三宅裕司が率いる人気舞台シリーズで、同作で玉井は檀れいとともに二枚看板を務めた。しかも歌やダンスはもちろんのこと、殺陣などの立ち回りも披露。三宅ら百戦錬磨の俳優を相手にコメディパートもやってのけた。間違いなく、役者としての玉井詩織がアピールされた作品でもあった。

ちなみに玉井はコメディエンヌとしての才能が抜群だ。2018年には東京03主宰の舞台『東京03 FROLIC A HOLIC「何が格好いいのか、まだ分からない。」』に出演し、さらにラジオ番組『東京03の好きにさせるかッ!』(NHKラジオ第1/2019年8月放送)でも東京03とコント「若きプロジェクトリーダー」を作り上げた。同コントで玉井は若い女性をターゲットとしたスイーツ開発のプロジェクトリーダー役を務めたが、「女子向けスイーツといえばフルーツやチョコミント」と提案する飯塚悟志をにこやかにこきおろしたり、若い女性の気持ちを理解するためにネイルなどをする角田晃広とキャピキャピと共感しあったり、さまざまなテンションや多彩な台詞回しで笑わせてくれた。

そのコメディエンヌとしての力量は、2023年末『第7回 ももいろ歌合戦 2023→2024』でも発揮されていた。かが屋とのコント「玉井の提案」では、かが屋とユニットコントをやるはずが、隙があれば自分の歌声を聞かせようとするちょっと面倒くさいヒロインになりきり、コント中でかが屋をタジタジにさせた。同コンビの賀屋壮也は終演後、X(旧Twitter)で「玉井さん、めちゃめちゃコントうますぎです!!」と絶賛したほどだった。

そういった経験から、あくまでファン目線の願望としては、“20代ラストイヤー”は役者としての玉井の飛躍……とりわけコメディ作品にたくさん挑戦する姿を見てみたい。そしてやってくる30代では、アイドルとしてだけではなく俳優としてもポジションを築いてほしい。それだけの実力が、玉井には間違いなく備わっている。

※1:https://maquia.hpplus.jp/hair/news/86909/1/

(文=田辺ユウキ)

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