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【「表と裏」の法律知識】#236
1966年、静岡県で一家4人が殺害された「袴田事件」は、冤罪の疑いがあることで有名な事件です。死刑判決を言い渡された袴田氏は、58年もの間、無罪を訴え続けています。その再審で22日、検察側は改めて「死刑」を求刑しました。
日曜ドラマ「アンチヒーロー」でも、冤罪と闘う弁護士のストーリーが展開されており、注目を集めていますが、冤罪を晴らすのは容易なことではありません。
日本には、冤罪を晴らすための制度として「再審制度」という裁判のやり直しをする制度があります。しかし、再審制度の開始決定率は0.4%にすぎません。袴田事件のように、死刑判決で再審が行われたのはたったの4件です。この数字からもハードルの高さがうかがえます。
その要因として、まず再審請求をするには自ら弁護人を雇う必要がありますが、その金銭面から、再審をしようとすること自体が容易ではないのです。そして、裁判所は過去の判決を覆されては裁判の意味が薄れてしまうことから、判決を維持することを重視し、よほどのことがなければ再審を認めません。さらに裁判所により、ようやく開始決定がされても、検察側からの「抗告」という不服申し立てによって退けられることがほとんどです。
判決を覆されたくない検察が「抗告」する事情はわかりますが、それでいいのでしょうか。検察が違法な捜査をしておらず、被告が有罪であると確信しているのであれば、堂々とその主張をもって再審に臨むべきであると思います。冤罪の可能性のある者を死刑判決という脅威のもと長期にわたり束縛すべきではありません。
これまで再審が行われた4件の死刑事件では、すべて無罪が言い渡されていて、袴田氏にも無罪判決が下される可能性は高いとみられています。しかし、58年という歳月はあまりに長すぎます。袴田事件の再審判決と同時に再審制度の法改正の必要性が高まることになると思います。
(髙橋裕樹/弁護士)