凰稀かなめ「毎回、あえて課題を見つける」10年前の芝居を見て大反省「すごく特殊な芝居作り」名作の存在

凰稀かなめ 撮影/冨田望、スタイリスト/杏吏

吉高由里子主演のNHK大河ドラマ『光る君へ』で、女流歌人の赤染衛門として深い印象を残している元宝塚トップスターの凰稀かなめ。2012年に『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』にて宙組トップスターお披露目公演を行い、2015年2月の退団まで支持を集めた。現在は前述の大河ドラマをはじめ、公開中の映画『お終活 再春!人生ラプソディ』などの映像でも活躍している凰稀さんが、THE CHANGEを語る。【第2回/全4回】

宝塚歌劇団のなかでも『ベルサイユのばら』は金字塔というべき人気作。現在、初演から50年を記念したスペシャルイベント『ベルサイユのばら50』~半世紀の軌跡~が公演中だ。元宙組トップスターで、かつてオスカルを演じた凰稀さんも、歴代のレジェンドたちとともに出演している。

「軍服を着て、化粧も、久しぶりに宝塚メイクをするので、どんなふうになっちゃうんだろうと。オスカルをやってから10年経ってますからね。頑張らないと。バスティーユで踊ります」

――それは楽しみですね。

「稽古を前に、自分が前にやった舞台のDVDを観たんですよ。もう下手くそすぎてすぐに観るのをやめました……」

――え? どういうことですか?

「“なんだ、これ”って。“お前は、こんなんで満足してたのか”と。これは頑張らないといけないなと。余計に気合が入りました」

「初心を忘れないように」

――ええ? それは役者として、年々自分の演技に対する目が厳しくなっている証拠ですよね。

「うーん。確かに時々振り返って考えるようにはしていますね。初心を忘れないようにと思っていますし、前になった作品をまたやるときには、以前はどうだったかなと軽く流して見ます。『ベルサイユのばら』の場合は、すごく特殊な芝居作りだったんですけど……でもけっこうナチュラルに作っていたつもりだったのに、10年ぶりに見たら全然違いましたね。だけどこの作品をナチュラルにしすぎても合わないだろうし。すごく迷いながら、きっと今回も作っていくのだと思いますけど」

――役者という仕事をされている方々は、よく“ゴールはない”とおっしゃいますね。

「そうですね。舞台は毎日やっても、終わった後に、いつも必ず今度は“ああしよう”“こうしよう”という課題を見つけるようにして、どこかで自分を客観的に見ている自分がいます。相手のお芝居との間はどうだったか、それに対する表情や動きはとか。そういった研究っていうんですかね。舞台は毎日挑戦ができますし、何かを発見していく作業は、常に心掛けています」

――発見と挑戦の繰り返しですか。

「そうですね。お客様の反応や呼吸も感じながら」

凰稀かなめ 撮影/冨田望

キャリアの転機となった作品『凍てついた明日 ボニー&クライド』

――ところで、凰稀さんのキャリアの中でも大きな転機となった瞬間、CHANGEのときを挙げるとするといつになりますか?

「転機というか、芝居が好きになったきっかけ、作品があります。雪組にいたときなんですが、『凍てついた明日 ボニー&クライド』という荻田浩一先生の作品です。その作品で、なにかしっくりきたというか、腹の底の感覚がつかめた瞬間があったんです」

『凍てついた明日 ボニー&クライド』は実在の犯罪者であるボニーとクライドをモチーフにしたアメリカ映画『俺たちに明日はない』をベースに、宝塚歌劇団で上演されたミュージカル作品で、98年と08年に上演されている。08年、凰稀さんはこの作品で2度目となる、宝塚バウホール主演を務めた。

――腹の底の感覚ですか?

「腹に落ちてる感覚というのかな。なにかストーンって落っこちたんですよ。力が抜けた感じが一瞬あった。男役って肉付けをどんどんしていくんですけど、新人公演を卒業したら、今度は肉を剥がしていく作業に入っていくんです。その肉付けの土台がガツっとハマったのを感じたんです。芝居の楽しさを知ったきっかけはいっぱいあるんですけど、大きく変わった最初のきっかけはその時でした」

そうした瞬間をつかんだからこそ、いまの凰稀さんに繋がっていったのだ。

凰稀かなめ 撮影/冨田望

■おうき・かなめ
9月4日生まれ、神奈川県川崎市出身。元宝塚歌劇団宙組トップスター。1998年に宝塚音楽学校に入学し、2000年宝塚歌劇団に86期生として入団。花組『源氏物語 あさきゆめみし/ザ・ビューティーズ!』で初舞台を踏み、雪組に配属される。2005年に新人公演初主演。翌年、バウホール公演初主演。09年に星組へと組替え。2011年宙組に組替えし、翌年宙組6代目トップスターに就任。2015年2月に退団し、以降は舞台、ドラマ、映画とジャンルを問わずに活躍。2018年、舞台『さよなら、チャーリー』にて文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞を受賞。退団後の主な作品にドラマ『ノーサイド・ゲーム』、映画『マスカレード・ナイト』、『お終活 再春!人生ラプソディ』が公開中。NHK大河ドラマ『光る君へ』で赤染衛門を演じる。

ブラウス 71,500円(税込)、ジャケット132,000円(税込)、スカート83,600円(税込)、全てLANVIN COLLECTION
問い合わせ先:153-0042 東京都目黒区青葉台3-6-28住友不動産青葉台タワー2F (株)レリアン/0120-370-877

© 株式会社双葉社