鈴木愛理、“求めてもらえること”が幅広い活躍の原動力に 「前進している感じがないと退屈」

百戦錬磨の結婚詐欺師が本気の婚活に乗り出すラブストーリー『ミス・ターゲット』(ABCテレビ・テレビ朝日系)。松本まりか演じる主人公・すみれのピュアな後輩・萌を演じているのが鈴木愛理だ。そんな鈴木に、“お姉ちゃん”と慕う松本との関係性やファンへの想いなどを語ってもらった。

ーー2023年10月期に放送された主演ドラマ『推しが上司になりまして』(テレビ東京系)以来の連続ドラマ出演となります

鈴木愛理(以下、鈴木):共演者の方々のお名前を見たときに、「このなかに私が入ってもいいんですか?」と驚きました。主演をやらせていただくときとは、また違ったドキドキというか。「私なんぞやのミスで、みなさんに迷惑をかけてはならぬ!」と気を張っていたからか、クランクインの前日は眠れなくて……。マネージャーさんからも「本当に珍しいね」と驚かれました(笑)。

ーー現場に入られてからはどうですか?

鈴木:みなさんが本当に温かかったので、安心しました。これはもう座長のおかげですね。クランクインのときに(松本)まりかさんが、「明るい現場にしたい」とおっしゃっていたのですが、本当にそのままの“明るく楽しい現場”という感じで。

ーー松本さんとはいろいろお話しをされたのでしょうか?

鈴木:はい! まりかさんとは10個歳が離れているんですけど、年齢差を感じさせないような雰囲気を出してくださるので、私も遠慮なく「お姉様!」と懐かせてもらっています。芸能界で初めて“お姉ちゃん”ができた感じです。

ーーそんなに! 最初から意気投合されたんですか?

鈴木:テレビで拝見しているまりかさんって、ミステリアスの権化みたいな、自分とは正反対に位置する人だと思っていたんです。でも、ハイテンションな一面を見せてくれたり……。あと、まりかさんってすごい食べることが好きなんです。そういう人間らしい部分を見せてもらってから、より距離が縮まった気がします。私が演じる萌は、まりかさんが演じるすみれを慕っている女の子なので、「私と同じだ!」って。撮影がないときも、「はやく会いたいなぁ」と思っています。

ーー『ミス・ターゲット』は、婚活をテーマにした作品ですが、鈴木さんは結婚について考えることはありますか?

鈴木:先日30歳になったんですけど、28歳くらいのときに結婚ラッシュがあって。同級生たちが続々と結婚したり、いつの間にか子どもがいたりとか。結婚式に参列する機会も増えてきたので、そういう年齢なんだろうなぁと思います。ヒロインが仕事と恋愛の両立に悩む……みたいなドラマも、前は大人の話だと思って共感できなかったんですけど、最近は共感の嵐で(笑)。

ーー結婚に対する憧れは?

鈴木:あります! 私の母は25歳で結婚して私を産んでいるので、とっくにその年齢は過ぎていますし。それに、昔は28歳までに結婚していると思っていたんです。いつかは、親孝行として孫を見せてあげたいという気持ちはありますけどね! 私自身、三十路が結構楽しみなんですよね。29歳と30歳なんて1個しか変わらないけれど、責任感をもっていろいろ任せてもらえるようになる印象があるので。恋愛や結婚もそうですけど、自分自身がやりたいことをやって、ブレずに生きていくのが一番ハッピーなのかなと思います。

ーーアーティスト業や役者業、モデル業に加えて。2023年からは『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系)の新MCに抜擢されるなど、バラエティ番組での活躍ぶりもすごいですよね。

鈴木:『あざとくて何が悪いの?』に関しては、立ち上げから携わっているわけではないので、過去の歴史を背負いつつ、みなさんも自分自身も楽しめるようにしたいなと思っています。バラエティの世界って、たくさん喋っても切り取られるのは一部だったりするので、「素直に行きすぎると誤解を生む可能性があるのかな?」とか思ったり。ギアチェンジをしてトークするというのを、勉強しています。ちょうど、『ミス・ターゲット』の小道具に、『超一流の会話力』という本があったので、撮影の合間に筒井(真理子)さんと読んで勉強したり。面白かったので、読み直せるように自分でも買っちゃいました(笑)。

ーー以前インタビューもさせていただいた『Iターン』(2019年/テレビ東京系)のタイミングは久しぶりの役者業挑戦ということでしたが、あれから主演作も含め数々の作品に出演されています。役者業に対するスタンスは変わりましたか?

鈴木:お芝居に関しては、自分がやらせていただけるジャンルのお仕事だと思っていなかったんです。まわりに「女優さんっぽいなぁ」という子がたくさんいたので、自分が「やりたい」と言えなくて。モデル業も同じように思っていたので、「自分には歌しかない!」と。でも、実際にやってみると、ツールが違うだけで大きな括りは一緒なのかもなぁと思うようになりました。これまで、“演じること=自分じゃないものになること”だと思っていたんですけど、最近は人生経験のなかから削って表現している気がして。

ーーなるほど。歌も人生経験を削っているイメージですか?

鈴木:アイドルソングではあまり使わない技なんですけど、バラードを歌うときはそうですね。だから、感覚が似ている気がします。そういえば、『Iターン』のときに、内田英治監督に「もっと汚く泣け!」と言われたことがあって。そこで初めて、自分の演技には人間を削る感じが足りないんだなと学んだんですよね。そのあとに主演を務めた配信ドラマ『ANIMALS-アニマルズ-』(ABEMA)では、すっぴんにクマを足してすっぴん以下の自分で演技をしたんです。そこからは、「もう怖いものはないぞ!」って。昔はコンビニに行くのさえもメイクをしないと無理だったんですけど、『ANIMALS-アニマルズ-』の後は、何かのストッパーが取れたというか。生きるのもすごくラクになりました。

ーーそんな多方面で活躍中の鈴木さんですが、その原動力はどこにあるのでしょうか?

鈴木:小さい頃は、スポットライトを浴びるのが苦手なタイプで、お遊戯会とかでも大道具のポジションをやっていたんです。でも今は、自分が表に出ることで、明日も頑張ろうと思ってくれる人がいたり、「愛理ちゃんが笑顔でいてくれるから、私も笑顔で頑張る」という言葉をもらえたりする。求めてもらえるおかげで、「表に出続けよう」「頑張ろう」と思えるんですよね。

ーーまさに“努力家”ですよね。

鈴木:ですかね? できないことって、探せばたくさんあるから。日々、少しでも前進している感じがないと退屈なんですよ。今日は、観葉植物にお水をあげたとか、めっちゃ綺麗に家を掃除したとか……そんな些細なことでいいんですけど、ちょっとした前進を重ねていけたらなって。よく「生き急いでいる」って言われるんですけど(笑)。私自身はそんな感じはしていなくて、楽しみながら生きられたらいいなと思っているので。

ーー常に楽しいという感じですか?

鈴木:うーん。アイドル時代から、この世界にいることに苦労を感じたことがないんですよね。だから、性格的に合っていたんだと思います。ただ、「歌は辞めようかな?」と考えたことはあります。

ーーそれはどうしてですか?

鈴木:歌が大好きだからこそ、うまく歌えない自分が悔しくて。大好きなものでマイナスな気持ちになってしまうことが嫌だなって。でも私にとって、アーティスト業は応援してくれる方とお会いできる唯一のお仕事なので、今は辞めなくてよかったと思っています。ライブは自分が持っているパワーをダイレクトに届けられるし、ファンのみなさんからパワーをいただくこともできる。アーティスト業は、どんな場面でも続けていきたいですね。

ーーさまざまな活動をされるなかで、アーティスト業が土台になっているんですね。

鈴木:そうですね。応援してくれている方との繋がりは、やっぱり大事にしていきたいなって。ただ、ソロはグループ時代とはまったく違いますね。ソロだと、視聴率が100%なんですよ。最初は、「ずっと歌っていなきゃいけないって、こんなに神経を張り巡らせるのか?」と驚きました。でも、何も考えずに歌っているような人も、実は緊張していたりするんですよね。なので、私もこのままちょっぴりの緊張はできるようにしたいなと思っています。

(取材=宮川翔、構成=菜本かな)

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