舘ひろし・柴田恭兵「4人がそろえばそれだけで『あぶ刑事』になる」浅野温子、仲村トオルとの絆

舘ひろし・柴田恭兵 撮影/有坂政晴

1986年にスタートし、2作のテレビシリーズと、7作の劇場版が公開されてきた『あぶない刑事』。最新作である第8弾『帰ってきた あぶない刑事』が、タイトル通り、帰ってきた。主演を務める舘ひろしと柴田恭兵はそれぞれ御年74歳と72歳。ダンディでセクシーなスーツにサングラスでバシっと決め、混じるシルバーヘアは隠さずに。スクリーンからそのまま抜け出たように目の前に現れたタカ&ユージこと、舘さんと柴田さんが『あぶない刑事』とTHE CHANGEを語る。【第4回/全5回】

8年ぶりの復活映画『帰ってきた あぶない刑事』公開を前に、作品の聖地・横浜で行われたオープンカーパレードでも熱狂的に迎えられたタカ&ユージ。衰え知らずの人気が話題を集めた。

――1986年のスタート当初、これだけブームになる、手ごたえを感じられるシリーズになると予感していましたか?

柴田「最初はどうなるか全くわかりませんでした。もちろん、かっこいいものをやりたいという気持ちはありました。“かっこいい衣装を着るぞ”“見たことのないカースタントをやるぞ”と。立ち回りも、すごくハードボイルドな立ち回りから、コミカルで新しい立ち回りもあったり。衣装やほかのこともどんどんグレードアップしていって、みんなで“おもしろい、もっとやろう”と。そうやって流れが出来ていきました」

「僕は割と保守的でコンサバティブな刑事ドラマのつもりでやってたんです。それがだんだん恭サマに引っ張られて“じゃあ、これで行くか”と(笑)。恭サマに“これやって”と言われて、“はい、わかりました”と(笑)。そのうちに自分でも、こういうアドリブも面白いなと思いついたりして。でも僕が言うよりも恭サマに言ってもらったほうが面白いから、恭サマに言ってもらったりして」

――そうなんですか?

「たとえば『さらば あぶない刑事』の最後に、敵の数と銃弾の数が合わなくて“数が合いませんけど”ってセリフが浮かんだんです。でもそれを僕が“敵の数と残ってる弾の数が合わねえな”みたいに言うより、恭サマが言うほうがおもしろいなと思って。実際、おもしろいんですよ。バンバン銃撃戦が繰り広げられている緊迫感のある中で、恭サマは言える。すごくおもしろい」

――そうして出来上がったタカ&ユージがどんどん支持を得て。

柴田「なんとなく人気が出てきたなと感じるようになったのは、横浜でロケをしていたらどんどんギャラリーが増えていったからですかね。僕の衣装とまったく同じ格好でサングラスをした人がいたりして。こっちにはユージ、あっちにはタカって(笑)」

「おもしろかったね。あるときは撮影していたら高校生の女の子が入ってきちゃって、“ここは入っちゃダメだよ”と言ったら、“あら、どういうことかな”って返されて。その感じがおもしろかったから、そのまま恭サマがドラマの中で“あら、どういうことかな”ってセリフに使ったり」

タカとユージが揃えば新しいスタッフも一気に『あぶ刑事』の世界に!

――本作も横浜のシーンでスタートしましたが、今回、スタッフは原監督を筆頭に、新メンバーです。初日はどんな感じだったのでしょうか。

柴田「スタッフの人たちは、小学生とか中学生のときに見ていたんだと思います。初日、まず舘さんが現場に来て衣装をつけますよね。その日はバイクに乗るシーンではなかったんですけど、たまたまハーレーも置いてあったんです。それで舘さんが埠頭を軽くブーンと飛ばしたら、スタッフが色めきだって」

――それはそうでしょうね。

柴田「“タカとユージだ!”となって。そうだよ、僕たちはタカ&ユージだよと。今から『あぶない刑事』の世界が始まるよと。本当にみんな若いスタッフたちが頑張ってくれました。僕たちはもう70歳過ぎてますから、優しいんです」

「ふふ」

柴田「だから非常にやりやすかったです。タカとユージ、トオルくん(仲村トオル=町田透)、あっちゃん(浅野温子=真山薫)はこんな感じだよというのを見せると、“あ、この色なんだ”“こういうことなんだ”と、みんなパッとすぐにつかんでくれました」

「ただ温子だけは破壊力が増してるからね。どんどん増してるから。たまに付いていけないときがあるからさ。台本と全く違うことするし」

柴田「とりえず赤いパンツを見せるんだって言って出てきたね」

――確かに本編での薫さんの破壊力はすさまじいものがありました。

柴田「見えてるから大丈夫だって言ったんだけど、“いや、もっとやりたい!”って言ってました(笑)」

脚本は作家が書くけど、ほとんどアドリブ

――『あぶない刑事』はアドリブが多いそうですが、一番アドリブが多かったのはどこの場面でしょうか。

「アドリブが多かった場面って、全部だよね。ほとんどアドリブ(笑)。もちろん脚本は作家が書くんだけど、現場で恭サマがピョコっと言ったことが面白いんだよね」

――その場で思いつくのですか?

柴田「台本を読んでいて、こんな感じにしようかなとかなんとなく考えていきますね。舘さんはどうしてもトオルのところに“トロイ動物”を入れたいって言ってましたね」

――ところでタカ&ユージが港署に現れるシーンが、異常なほどかっこよかったです。

「そうでした? 全く忘れてる」

――エレベーターで。

「ああ、エレベーターで。エレベーターで出てくるあれだけで、1時間半かかったんですよ」

――監督のこだわりでですか?

「こだわったんだと思うんだけど、どこにこだわったんだろう」

――いや、たしかに「かっこいい」と声が出そうになりました。

「そうなの?」

柴田「本当はアドリブで鷹山が入ってきたら“ダンディ鷹山だ、ダンディ鷹山だ”“誰?”“ダンディ高野?”“ゲッツ!”って入れてって提案したんだけど、却下されました(笑)」

タカ&ユージがエレベーターから降りて透のいる港署の刑事課に入っていく。短いシーンだが、原監督が1時間半かけたというのも、観れば納得の場面である。

舘ひろし(たち・ひろし)
1950年3月31日生まれ、愛知県出身。76年に映画『暴力教室』で俳優デビューを飾る。ドラマ『西部警察』をきっかけに石原プロに入社する。36歳の時に『あぶない刑事』のタカ役でブレイク。18年には『終わった人』で第42回モントリオール世界映画祭最優秀男優賞を受賞した。近年の主な映画出演作に『アルキメデスの大戦』『ヤクザと家族 The Family』、土方歳三を演じて話題を呼んだ『ゴールデンカムイ』など。現在、ドラマ『ブルーモーメント』に出演中。

柴田恭兵(しばた・きょうへい)
1951年8月18日生まれ、静岡県出身。1975年に劇団「東京キッドブラザーズ」に入団。1986年、ユージを演じたドラマ『あぶない刑事』でブレイク。ドラマ『はみだし刑事情熱系』『ハゲタカ』など、さまざまな作品で演技派として認められている。主な出演映画に『野蛮人のように』『福沢諭吉』『集団左遷』『半落ち』『北のカナリアたち』など。今年2月から放送されたドラマ『舟を編む 〜私、辞書つくります〜』での演技も支持を集めた。

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