語るに落ちる

 家計が苦しいのは「今」なのに、そんなに先の減税をそんなに得意そうに発表されても…と感じたのは昨年の秋だ。ただ、月日はいつも猛スピードで過ぎていく。意外に早くやって来た「定額減税」の6月▲家族1人当たり所得税が3万円、住民税が1万円で合計4万円。決して小さな額ではないのに評判がよくない。一番の理由は仕組みが複雑なことだろう▲制度を説明する記事は何回か載ったはずだが、6月分の給料がどう変わるのか、よくイメージできずにいるのは当方だけではあるまい。減税の“恩恵”が届くタイミングも人によって違う。個人事業主の皆さんは来年の確定申告時に税額が調整される▲さらに、政府は、減税の直前になって納税額の変化などを給与明細に明記するよう企業などに義務付けた。これが“悪評”に拍車をかけている。煩雑だ、仕事が増えた-。当然の反応と言うほかない▲皆が減税措置を実感できるように、という理屈らしいが、そのままでは効果も恩恵も分かってもらえまい、と胸のうちを白状してしまったも同然だ。「語るに落ちる」とはこのこと▲例年なら梅雨の足音が聞こえてくる時季だが、隣のお天気欄では晴れマークが頑張っていて爽やかな好天が続いている。なのに、どんよりと晴れないこの気分はどうだろう。(智)

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