知っているようで知らない チョコレートができるまで 沖縄発チョコレートメーカーに聞いた

スイーツの定番、チョコレート(写真はイメージ)【写真:写真AC】

幅広い年代層から人気のチョコレート。コンビニエンスストアなどでも手軽に購入でき、ちょっとした幸せをもたらすスイーツの代表格です。しかし、実際に原材料のカカオの木からチョコレートになるまでの工程を知っている人は、あまりいないのではないでしょうか。そこで、沖縄でカカオ栽培からチョコレートの商品化までを行っている「オキナワカカオ」代表の川合径さんに、チョコレートができるまでを教えていただきました。

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日本は「カカオベルト」に属していない 海外産のカカオ豆が主流

チョコレートの原材料となるカカオ。そのカカオの木は、「カカオベルト」と呼ばれる赤道を中心とした南北緯20度で一般的に栽培される果樹です。川合さんが栽培を試みている沖縄は北緯26度とカカオベルトには属していませんが、2016年からカカオ栽培のチャレンジをスタート。2021年に初めて、カカオポッドといわれる果実を収穫しました。

「カカオポッドを見たことがない人も多いのではないでしょうか」

カカオポッドというのは、ラグビーボールのような楕円の果実。硬い皮で覆われているカカオポッドを開くと、カカオパルプと呼ばれる白い果肉と、その中にカカオ豆と呼ばれる種が詰まっています。

カカオパルプごとカカオ豆を取り出し、バナナの葉に包むなどして、5~10日ほどかけて発酵させます。カカオパルプが溶け、発酵が進むと、チョコレート特有の風味のもととなる成分「前駆体(ぜんくたい)」が生成されます。そのカカオ豆を、1週間ほどかけてゆっくりと乾燥させます。

オキナワカカオではカカオ栽培も行っていますが、まだ試作段階。そのため、現在はこの乾燥作業まで行った海外産のカカオ豆を輸入し、それ以降の工程を沖縄の工房で行っています。

沖縄で収穫したカカオポッドを持つ、オキナワカカオ代表の川合径さん【写真:Hint-Pot編集部】

カカオ豆は焙煎しだいでさまざまな風味に変化

乾燥させたカカオ豆を「選別」し、「焙煎」します。この焙煎作業は、カカオ豆の味を引き出すために最も重要な工程です。熱のかけ方ひとつでフルーティになったり、ナッティになったりと味に変化が起こります。

その後はカカオ豆を「粉砕」する作業になります。カカオ豆は種皮(殻)と胚乳に分けられます。殻は「ハスク」と呼ばれ、食べられません。一方、胚乳の部分は「カカオニブ」と呼ばれ、チョコレートになる部分です。 カカオニブはナッツのような食感で、ヨーグルトにかけたり料理に混ぜたりと、そのまま食べることができます。近年、スーパーフードとしても注目されており、目にしたり、食べたりしたことがある人もいるでしょう。

カカオニブの成分は半分以上が油脂分で、挽いていくと、油脂が出てきてペースト状に変貌していきます。これがチョコレートの原料「カカオマス」です。ドロドロと液体化してきているタイミングで砂糖などを混ぜ、なめらかなチョコレートが作られます。

ハスク(上)とカカオニブ【写真:Hint-Pot編集部】

チョコレートが白くなるブルーム現象

一般的なチョコレート店では、「調温」と呼ばれるテンパリングを行っていることが多いといいます。

テンパリングでは、温度を上げたり下げたりしながらチョコレートの結晶を均一にすることで、「ブルーム」というチョコレートが白くなる現象を防ぎます。ブルーム現象が起こったチョコレートは食べても問題ありませんが、見た目以外に香りや風味が損なわれてしまうことも。光沢の美しい、なめらかな口当たりのチョコレートを作るには欠かせない作業です。

テンパリングを終えたチョコレートを成形して完成。ようやく、私たちが口にできるチョコレートとして店頭に並ぶことになります。

「チョコレートには、関わった人が笑顔になる魅力があるんですよね。難しい顔をして食べるのは専門家くらいです(笑)」

そう笑う川合さん。オキナワカカオでは、カカオ豆を粉砕するところから作るチョコレート作りワークショップも開催しているそうです。

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