サクランボは丸ごと食べると危険 種に注意すべき理由 栄養士が解説

初夏を感じるフルーツの代表、サクランボ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

初夏の訪れを感じるフルーツ、サクランボ。日本では明治時代から本格的に栽培されるようになり、山形県での栽培が盛んです。旬は品種により異なりますが、5月下旬から7月とされ、さまざまな種類が市場に出回ります。小粒で甘酸っぱい味わいから、つい食べすぎてしまうことも。一日に何粒が適量なのでしょうか。また食べすぎによるデメリットとは? 栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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サクランボは小粒ながら栄養に優れた「天然のサプリメント」

サクランボはひと粒が小さいので、栄養をあまり意識せずに食べているかもしれません。しかし、「天然のサプリメント」と呼ばれるほどさまざまな栄養素が詰まっています。

主成分はエネルギー源になる糖質です。果糖やブドウ糖がバランス良く含まれています。また、コラーゲン生成に欠かせないビタミンC、造血のビタミンといわれる葉酸をはじめとするB群、必要時に体内でビタミンAに変換されて皮膚や目を健康な状態に保つために働くβカロテン、抗酸化作用が期待されるビタミンEといったビタミン類を有します。

このほかカリウムやリン、鉄などのミネラル、リンゴ酸やクエン酸などの有機酸も含まれており、疲労回復や美肌作用、高血圧の予防効果などが期待されています。果肉の赤色の部分は、ポリフェノールの一種であるアントシアニンによるものです。アントシアニンは、とくに目の健康に期待されている成分で、抗酸化作用があり、体内で活性酸素を除去する働きがあります。さわやかな甘みに関係するソルビトールは、便秘予防で知られる糖アルコールの一種です。

一日の摂取量に決まりはある?

サクランボを一日にどれくらい食べるのが適量なのか、とくに決まりはありません。厚生労働省や農林水産省によると、フルーツは一日200グラムほどが目安。その数字を基準に、サクランボ1粒を8グラム(廃棄率10%)とすると、約28粒で200グラムとなり、エネルギーは128キロカロリーです。

数字だけ見るとカロリーは低いですが、一度に30粒近く食べるものではありません。「天然のサプリメント」と呼ばれるサクランボですが、旬の味を楽しむ程度の量がいいでしょう。

サクランボを食べる際の注意点とは

サクランボを食べすぎると、ソルビトールの過剰摂取で下痢になる可能性があります。また、サクランボに限らず、フルーツは水分が多いため、食べすぎると下痢などの腹痛を起こすことも否定できません。栄養があるからといって食べすぎは逆効果です。どんな食べ物でも適量を心がけましょう。

アレルギーを引き起こすこともあります。食べたあとに口の中の腫れや皮膚に発疹などが生じた場合は、サクランボアレルギーの可能性もありますので、必要に応じて医療機関を受診しましょう。

また、サクランボの種を砕くなどして食べないでください。サクランボはバラ科の植物のため、種には生の青梅でもよく知られているアミグダリンと呼ばれる成分が含まれています。胃腸で加水分解されることで毒性の強いシアン化水素が発生し、それらを多量に摂取すると中毒症状を起こすことがあるので注意が必要です。

小さなお子さんが食べる場合は、誤嚥の危険もあります。家庭ではサクランボの種を必ず取り、小さくカットするなどの安全対策をして旬の味を楽しんでください。

和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。

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