JR東など8社が「QR乗車券」で「磁気乗車券」置き換えへ、そのメリットは? 今週一週間の鉄道ニュース

QR乗車券(画像はゆいレールのもの)

一週間の鉄道ニュースをご紹介するこの連載。今回は、きっぷに関するニュース2本を取り上げます。

JR東日本、京成電鉄、京浜急行電鉄、新京成電鉄、西武鉄道、東京モノレール、東武鉄道、北総鉄道の8社は5月29日、磁気乗車券をQRコードを使用した「QR乗車券」に置き換える方針を、各社連名で発表しました。

自動改札機とともに普及した磁気乗車券ですが、これに対応する改札機器などは、物理的な可動部が必要で、メンテナンスコストがかかる、保守にノウハウが必要といったデメリットがあります。利用者の立場でも、磁気乗車券では券詰まりが起きるおそれがあります。これをリーダーで読み取れるQR乗車券に置き換えれば、磁気乗車券のデメリットから脱却できるという考えです。

各社では、連絡運輸で関係する他の鉄道事業者とも旅客サービス面での調整を進めているほか、今回の8社以外の鉄道事業者とも、磁気乗車券の縮小などに向けた検討を進めていると説明しています。今回発表した各社以外にも、QR乗車券導入に向けて追従する動きがあるようです。

8社でのQR乗車券サービス開始は、2026年度末以降を予定。磁気乗車券が、少なくとも首都圏の近距離きっぷから消滅する日は、そう遠くないのかもしれません。

もう一つご紹介するのは、熊本県のICカード事情の話題です。熊本電気鉄道や熊本バスなどの5社では、熊本電鉄の電車や各社の路線バスの決済手段として、全国相互利用対象の交通系ICカードを導入しています。しかし各社は、このICカード相互利用を2024年12月にも廃止し、2025年3月ごろにクレジットカードのタッチ決済サービスを導入すると、5月31日に正式発表しました。

今回の決済手段変更は、ICカードシステムの機器更新コストの差に加え、TSMC(半導体の製造を手掛ける台湾の企業)が熊本に進出することによる外国人労働者の増加を受けたキャッシュレス決済の多様化、さらにスマホ決済の利用増といった昨今の状況を考慮したということ。全国交通系ICカードでは、広島電鉄が「PASPY」を廃止し、QRコード乗車が主体の「MOBIRY DAYS」(モビリーデイズ)に置き換える動きを発表していますが、こちらは導入後も全国交通系ICカードは引き続き利用できます。取り扱いの廃止にまで踏み込んだのは、熊本が初めてとなります。

なお、今回の話題となった各社では、全国交通系ICカードのほか、地域独自の「くまモンのICカード」を導入しています。こちらは小児、高齢者、障がい者割引などの特典があり、優位性を発揮しているとのこと。ICカード乗車券サービスではありますが、こちらはタッチ決済サービス導入後も、継続して提供する予定だということです。

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