『東京タワー』終わりを迎えた透と耕二の“最悪の夏” 永瀬廉と松田元太の対照的な涙

透(永瀬廉/King & Prince)と耕二(松田元太)の“最悪の夏”が終わりを迎えた『東京タワー』(テレビ朝日系)第7話。片や打ち上げ花火のように盛大に弾け散り、片や線香花火のじりじりとした小さな灯火のような歯切れの悪さを残したままに。

まずは最大の修羅場を迎えたのが耕二だ。耕二と喜美子(MEGUMI)の情事を目撃した喜美子の娘・比奈(池田朱那)が、耕二の彼女・由利(なえなの)に全てをバラしてしまう。

喜美子が一方的に自分の彼氏をたぶらかし、欲求の吐け口にしたのだと思い込んでいる由利は、喜美子にありったけの軽蔑の眼差しと罵倒を浴びせる。しかし、すぐさま「全部自分が悪い」と謝る耕二の姿が余計に由利を刺激し、彼女の逆鱗に触れてしまう。当然のごとく「遊びだった、由利が一番だ」と言ってくれるものだと思っていただろうに、耕二は由利の気持ちをなだめることよりも喜美子を庇おうとするのだ。

当然のことながら耕二は全ての恋を一気に失うことになるも、それが透には羨ましくも映る。これまで耕二が透に憧れ真似することはあっても、透が耕二を羨ましく思うことはそうなかったのではないだろうか。全てが明るみに晒され砕け散った耕二に対して、透はやっぱり自分は浅野夫婦の前では透明人間かのようだと改めて悟ってしまう。

初めての詩史(板谷由夏)との軽井沢の別荘への泊まりがけ旅行で、世界に自分と詩史の2人しか存在していないかのような時間を過ごし、幸せを噛み締めている中、突然夫の英雄(甲本雅裕)が押しかけてきて現実に引き戻される。詩史が自分ではない誰かと見たのであろう真っ白でフワフワした美しい雪が降る軽井沢に、ついに自分が一緒に来られたのに。

抜き打ちチェックかのようにやって来た英雄にも大きく取り乱すことはなく、浴室に隠れた透に「楽しかったわね」と伝えて裏口から帰そうとする詩史。耕二の場合には1つの家庭とカップルが壊れるほどの一大事だったのに、浅野夫婦の絆を前に自分の存在があまりに無風で、一切のヒビも入れられないように思える。実際にはすぐに異変を察知しそうな英雄を相手に、詩史もまた努めて冷静に落ち着いて対処しているようにも見える。

自分が知らない詩史の過去や思い出があることさえも悔しく恨めしく、もっと自分がその中にいられたら……「もっと早く生まれたかった」と溢す透に対して、「私はあなたの未来に嫉妬してるのよ」と呟く詩史。全てがまだ固定されておらず、何にもなれて、自分の元から軽やかにどこまでも羽ばたいていける透の未来に自分がいるはずはないと、詩史も詩史で嘆いているのではないだろうか。彼女からすれば、自分が嫌いな“ゴルフをする男の人”である英雄との夫婦生活も当然のごとく固定されているもので、若い透には持ち合わせていない“荷物”のように思えるのかもしれない。

しかし、透は透で、母親・陽子(YOU)から目ざとく「似合わない」と一蹴された詩史からの海外土産のTシャツのように、何とか背伸びしてみたところで、詩史の思う未来に自分がいないだろうと予感し、自分たちの関係性の不安定さに改めて涙する。

浅野夫婦の磐石さに触れる度、自分はあくまでサイドストーリーであることをまざまざと感じさせられるのだろう。また英雄の目を逃れられ自分が無傷でいられたことは、同じく詩史もまた何も失っていないことになる。

浅野夫婦が一緒に過ごす別荘を後にし、夜道をとぼとぼ歩く透の姿は、まさに彼がいなければ“元通り”で、たまたまアクシデント的に交わった異分子は自分の方だという事実に一人向き合う道のりのようだった。それに静かに抗いながらも、どこかで受け入れ涙する透と、感情剥き出しで大泣きしていた耕二は対照的だった。

花火が終わった後のあまりの静けさに、去りゆく夏にすがり付きたくなってしまうものだが、彼らのそれぞれの消化不良な想いはどこに向かうのか。

(文=佳香(かこ))

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