チンパンジー舎に植樹15年 茨城・日立のかみね動物園 市民参加100組超 運動場、緑豊かに

チンパンジーが暮らす運動場に植樹する来園者=日立市宮田町

茨城県日立市宮田町の市かみね動物園で、来園者がチンパンジー舎に森をつくる取り組みが今年で15年目を迎えた。これまでに延べ100組超が参加し、市民が持ち寄った樹木によって少しずつ緑豊かな運動場に成長。実際の生息環境に近づけることで、動物の自然な行動を引き出すことにもつながっている。

市民と一緒に森をつくる活動は、2008年に獣舎をリニューアルした際、予算の制約もあって生息地の自然を再現するような植樹ができなかったことから翌09年に始まった。

野生ではアフリカの熱帯雨林で生活するチンパンジーが、動物園でも快適に過ごせるよう、年1回、来園者が持参した樹木や苗木をチンパンジーが暮らす運動場に植えている。近年は樹木の生育状況を見る観察会も開催してきた。

園によると、チンパンジーが葉を食べたり、木を引き抜いてしまったりするため樹木を育てるのは難しいが、定着したものは高さ2~3メートルに成長。「諦めず続けたことで木や緑が随分増えた。さらに増やしていきたい」(園担当者)という。

同園では現在8頭のチンパンジーが群れで暮らす。植樹によって、木の枝を道具にして巧みに餌を取ったり、幼いチンパンジーが木を伝ったりするなど野生本来に近い行動が生まれ、動物園の魅力向上につながっている。

19日に開いた植樹会には7組18人が参加し、それぞれが選んだレモンやグミの木などを植樹。水戸市の善田俊介さん(40)と長男の勇陽さん(9)は樹木が密集した場所にツツジを植え「チンパンジーが喜んでくれることが一番の願い」と語った。

担当飼育員の大栗靖代さんは参加者にチンパンジーの特性を紹介し、野生では樹上に木の枝で巣を作るなど「チンパンジーにとって木はとても重要なもの」と説明。森づくりを通して「愛着を持ってもらい、動物を取り巻く環境やその背景も考えてみてほしい」と呼びかけた。

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