現役復帰したイーグルスWRロス、「引退したその日に間違いだったと分かった」

ジョン・ロス【AP Photo/Emilee Chinn】

ワイドレシーバー(WR)ジョン・ロスはドラフト全体10位以内で指名を受けた後に一時的に引退した選手から、現役復帰するためにルーキーミニキャンプのトライアウトを受ける選手となった。

現在、フィラデルフィア・イーグルスのロースターに登録されている28歳のロスには、トレーニングキャンプ以降もチームにとどまるためにやるべきことがあるものの、引退を表明してからほぼ1年が経過した今、必要な場所に身を置いている。

現地5月30日(木)、ロスは記者会見の場で「フットボールから離れたいとは思っていなかった」と語った。「ちょうど人生の中で、いろんなことが起こった時期だったんだと思う。文字通り、引退したその日に間違いだったと分かった。でも、人生にいろんなことが起こっているときは、自分でコントロールできることが限られてくる。メンタル的にもフィジカル的にも、俺が対処していたことから、ある場所にたどり着くのは大変なことだった。でも、心の中では、自分が誰なのか分かっている。自分の息子を指導するように、すぐに指導を始めたし、ずっとそういう状態だった。引退するのが間違いだったのは分かっていた。今の俺は、メンタル的にもフィジカル的にも気持ちの面でも、ずっと良い状態だと感じている。それには本当に感謝している」

昨年、キャリアで3つ目のチームにあたるカンザスシティ・チーフスで成功を収めようと試みていたロスだが、7月に引退することを選択した。

ロスのNFLへの旅路は2017年に行われたNFLスカウティングコンバインで華々しく始まっている。ロスはそこでの40ヤード走で当時の新記録となる4.22秒をマーク。そうしたことも相まって、ロスはその年のドラフトでシンシナティ・ベンガルズから全体9位で指名されている。しかし、ケガと生産性の欠如から、ロスが真っ直ぐ走る際に発揮できるスピードがNFLレベルで通用することはなかった。

新人時代に1試合しか先発を務められなかったロスは、ベンガルズでの4年間を通しても20試合にしか先発しておらず、その記録はキャッチ51回、733ヤード、タッチダウン10回となっている。2021年シーズンにはニューヨーク・ジャイアンツでキャッチ11回、224ヤード、タッチダウン1回をマーク。レギュラーシーズンに正式に先発したのはこの年が最後だった。

そこから再開した旅路の中で、ロスが最終的にたどり着いたのが5月3日から4日にかけて行われたイーグルスのミニキャンプだった。自分の道を切り開く必要があったロスは、ドラフト5巡目指名を受けたアイニアス・スミスや6巡目指名を受けたジョニー・ウィルソンといった新人WRと並んでトライアウトを受けている。

それでも、新たなチャンスにただただ感謝しているロスは、次のようにコメントした。

「俺の場合はドラフト10位以内で指名された。俺たちはいつも“トライアウトを受けなきゃいけないような状況になったら、おしまいだな”って話していた。でも、実際にその状況に直面すると、他に選択肢はない。チャンスをもらったとき、俺はたぶんこの世で一番幸せな人間だったと思う。ただただ感謝の気持ちでいっぱいだった。ここに来ることができてうれしかった。だから、“これはルーキーミニキャンプだ”なんて思わなかった。自分にとってもう一度フットボールをプレーする機会だと、そういうふうに考えていた。そういうふうに見ていたんだ。それがイーグルスのカナディアン(フットボールの)トライアウトだったとしても、俺は喜んでそこに参加して、意思も能力もあっただろう」

トライアウトに参加したことで、ロスがイーグルスでの滞在をより永続的なものにする機会は増えた。イーグルスはかつての実力を十分に見て、ロスに賭けることにしている。そして、ロス本人はかつて以上のスピードをコンスタントに発揮できると示すことで、イーグルスの判断が正しかったことを証明するつもりだ。

自分が以前と同じくらい速いと思っている理由を問われたロスは「前より速くなっていると思う」と返答。「そう言うのがおかしいのは分かっている。身体的に前と同じ感覚じゃないからこそ、より速くなっていると思うと言っている。俺がそう言うときに誤解しないでほしいんだけど、俺は4.22秒で走った。4.15秒とか言っているわけじゃない。単純に前より良い感じだから、コンスタントに速くなっていけると思うし、それが自分にとって一番大きなことだと思う」

ロスは決して最も洗練されたルートランナーではないため、自分の役割を見出すためには、そのスピードを生かし切ることが必要になるだろう。前述の新人選手の他に、イーグルスはWR陣にプロボウルに3度選出された経歴を誇るA.J.ブラウンや、デボンタ・スミス、パリス・キャンベルといった選手も擁している。

しかし、複数のケガを乗り越え、現役復帰したロスは、再びフットボールの話ができることに感謝しており、これからの数カ月で機会を生かすことができると自信を見せている。

「ひとつも衰えていない」と強調したロスは「俺は前と変わらない。前よりも良くなっている気がする」と続けた。

【RA】

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