スズキ フロンテクーペGX(昭和46/1971年9月発売・LC10W型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト065】

この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第65回目は、軽自動車初の高性能2シータースポーツクーペとして話題を呼んだ、スズキ フロンテクーペGXの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

軽自動車初の高性能2シータースポーツクーペ

昭和45(1970)年10月、スズキはフロンテをモデルチェンジし、昭和46(1971)年9月にフロンテクーペを発表した。

2010mmのショートホイールベースと、軽ではもっとも低い1200mmの全高。写真は2シーターだが、後にデビューした2+2もホイールベースは同寸だった。

ベースは水冷エンジンを積むフロンテ71Wだが、スタイリングはまったく異なる。低いノーズに角型ヘッドランプを組み合わせ、フロントピラーやリアピラーも傾斜が強い。スタイリッシュかつスポーティなルックスは、わずか1200mmという全高が大きく貢献している。

リアエンドも大胆にカットされ、リアクオーターピラーのベンチレーションルーバーやエンジン用のエアインテークも、スタイリングを引き締める大きな要素となった。スタイリングを手がけたのは、ジョルジェット・ジウジアーロだと言われているが、それをベースにスズキのデザイナーたちがリファインしたというのが真相だろう。

スポーティな6連メーター。タコメーターは7700 rpmからイエローゾーンとなり、アンメーター(電流計)も用意される。上下に57mm調整可能なチルトステアリングも標準装備されていた。

デビュー時点では2シーターモデルだけが発表され、2+2モデルが投入されたのは半年後の昭和47(1972)年3月のことだ。インテリアも1万rpmのタコメーターと140km//hのスピードメーターを中心に、 6連メーターを誇示している。

パワーユニットはLC10W型水冷2ストローク3気筒エンジンを搭載した。吸気系にリードバルブを採用し、騒音とパワーロスを最小に抑えるためにデュアル・ラジエターを採用している。3連CVキャブを装着して最高出力37psを発生する。

リアに横置きマウントされる水冷直3の2ストロークエンジン。リードバルブの採用と吸気脈動効果により、高回転域で爆発的なパワーを発揮した。

これにクロスレシオの4速MTで、0→400m加速は19.47秒を叩き出した。サスペンションは前ダブルウイッシュボーン/コイル、後トレーリングアーム/コイルだ。RR方式ならではの小気味良いハンドリングを披露した。市販軽量スポーツカーとしての価値は高い。

スズキ フロンテクーペGX(LC10W型)諸元

●全長×全幅×全高:2995×1295×1200mm
●ホイールベース:2010mm
●車両重量:480kg
●エンジン型式・種類:LC10W型・直3・2ストローク
●排気量:356cc
●最高出力:37ps/6500rpm
●最大トルク:4.2kgm/4500rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:5.20-10-4PR
●新車価格:45万5000円

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