香取慎吾が本心で語る草彅剛のすごさ SMAP結成から映画、音楽……実力を高め合う関係性

「僕は最後、もうダメでしたね。もう涙が……きましたね。3人でさ、2年前(2017年)に『これからどうしようか』っていう話をして。(稲垣)吾郎ちゃんはワインとかレストランとか何かやれたらって話をしていたら、『BISTRO J_O』ができて。僕も洋服とかやってみたいとか、それもできて。つよぽん(草彅剛)があの時、『ギターが好きだからファンの方の前でギターを弾いて歌えたら……』って話をしていたのを思い出して。『うわあ、本当に実現してる』って」(2019年12月1日放送『7.2 新しい別の窓』#21/ABEMAより)

草彅剛に最も近い熱心なファンは、香取慎吾である。香取は、表現者として草彅のことを強くリスペクトしている。それは、さまざまなメディアでのコメントにも表れている。

ちなみに草彅ももちろん、香取が発表する作品をしっかり追っている。自身のYouTubeチャンネル「ユーチューバー 草彅チャンネル」の2020年1月1日公開回で、香取がリリースしたアルバム『20200101(ニワニワワイワイ)』を手に、「最高の曲だから」とサラッと一言。チャンネルの登録者数が約100万人であることから、それだけの数にアルバムが届く可能性があるとしていたが、草彅はきっと、それだけたくさんの人に聴かれるべき作品であると言いたかったのではないだろうか。

一方、香取は草彅の演技力を高く評価している。2020年9月6日放送『7.2 新しい別の窓』#30で香取は、草彅の主演映画『ミッドナイトスワン』(2020年)を鑑賞して「僕はお芝居をやめようと思いました」と言っていた。「『こんな俳優さんがいるなら、自分なんてもういいや』って」とさえ思ったほどに。同作で草彅が演じたのは、ショークラブで働くトランスジェンダーの凪沙。そんな凪沙のもとへ親戚の娘がやってきて、思いがけない共同生活を送っていく物語だ。香取は、同番組内で「本当に素晴らしかったですよ。僕はちょっとヤバかったです。今も思い出すと涙が」「“草彅剛”という俳優は昔から好きなんですけど、素晴らしすぎて」と草彅の名演を讃えた。

本稿冒頭の言葉は、そんな香取が、2019年11月27日、28日に開催した草彅のライブイベント『草彅剛のはっぴょう会』を鑑賞した際に語った感想である。

SMAPが解散し、各メンバーが新たな道を進み始めたのが2017年。とりわけ草彅と香取は「しんつよいいパターン」と呼ばれるほど“ニコイチ”な仲だったからこそ、気にかけるところも多かったはず。たとえば、草彅は先日5月26日放送の『日曜日の初耳学』(TBS系)で、ふたりだけ衣装のサスペンダーが用意されていない時があっても「慎吾と剛だったらいいだろう」といったような周囲の雰囲気が以前からあったことを明かしていた。そんななか、「慎吾ちゃんは困った時にいつもそばにいてくれて。(一緒にいると)リラックスできるというか」とも話していた。それくらい互いに特別な存在なのだ。

そこまでの間柄になったのには、理由がある。香取は同番組にVTR出演し、SMAP結成当初、どちらかの家に泊まり込んでずっとダンスの練習をしていたことを思い返した。しかもミスをしたらまたイチからやり直して、完璧に踊り切ることができるまで帰らなかったそう。そうやって実力を高め合っていたというのだ。

お互い、表現者としてゼロからイチになっていく瞬間を誰よりも間近で見ていた。だからこそ香取は、『草彅剛のはっぴょう会』や『ミッドナイトスワン』での草彅のパフォーマンスに人一倍、感銘を受けたのではないだろうか。

5月17日に封切られた草彅の主演映画『碁盤斬り』についても、香取は鑑賞後、その充実感を言葉にしていた。

ちなみに同作の白石和彌監督は、香取慎吾が主演を務めた『凪待ち』(2019年)でもメガホンをとっている。香取は、ギャンブルに溺れて人生が狂った男が再生に臨む姿を演じた。ボロボロになりながらも生き方を模索する劇中の様子は、これまで見たことがないような“香取慎吾像”だった。彼にとって間違いなくターニングポイント的な作品である。

香取は『碁盤斬り』を観て、白石監督がどのようにタクトを振っていたかなど現場の光景が「わかる」とし、「僕の大事な草彅剛が白石監督とこんな素敵な作品を作ったっていうのは誇らしいですね」と胸を張った。さらに、「僕も映画に参加したいなって思いました。現場でのぶつかり合いがこうやって大きなスクリーンに残っていく。観にきてくれたみなさんの心に残っていく。そんな現場に立ち会いたいなって」と刺激を受けたと語った。自分が認める俳優と、自分の新境地を切り拓いてくれた監督が組んだ作品ということで、香取がいかにのめり込みながら観ていたのかがわかるコメントだった。

香取による“草彅評”で重要なのは、そこにお世辞がないことだ。どういうところがよかったのかを常に細かく指摘している。香取の性格上、表現面で違和感を持つ相手とはきっとうまく距離をとれるはず。そんななか、草彅のさまざまな作品をちゃんと見続けていること、そして必ずと言っていいほど感想を語るのは、それだけ草彅の作るものが好きなのであり、また敬意を持っているのだろう。

それらの点も踏まえると、香取は草彅にとって最も近いファンであり、草彅から見た香取も然りということだろう。これからもお互いからどんな“草彅剛評”、“香取慎吾評”が飛び出すのか楽しみにしたい。

(文=田辺ユウキ)

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