西武初の新人先発で開幕4連勝記録した武内夏暉 球界屈指の制球力とストライク率で打者を圧倒

ⒸSPAIA

新人離れした投球見せる武内夏暉

西武のドラフト1位ルーキー、武内夏暉がエース級の活躍を見せている。5月30日の中日戦(バンテリンドーム)で今季7度目の先発マウンドに上がった左腕は、5.2回89球を投げて4奪三振、無四球、無失点。今季最短での降板となったが、リリーフ陣がリードを守り切り、交流戦初登板を白星で飾った。

これで開幕から無傷の4連勝となり、新人の先発では球団初の快挙。一時、規定投球回にも達して防御率1.27でリーグトップにも躍り出るなど、ドラフトで3球団競合した前評判通りの実力をいかんなく発揮している。

何よりも目を見張るのがその安定感だ。ここまで7試合に先発してQS(6回以上自責点3以下)は6度、うち5試合でHQS(7回以上自責点2以下)を記録。計49.2イニングを投げて与えた四球はわずか8個で、40イニング以上投げている投手の中では日本ハムの加藤貴之(5個)に次ぐリーグ2番目の少なさとなっている。

また、4月24日のオリックス戦では一塁へのけん制で2度走者を刺すなど、投球以外もハイレベル。前述した中日戦では5回のバント処理の際に一塁へ悪送球、6回にも一塁へのけん制を悪送球と自らのミスでピンチを広げたが、いずれも落ち着いて後続を断つなど、完成度の高さは新人離れしている。

球界屈指の制球力とストライク率を記録

ゴールデンルーキーの名に恥じない大活躍をここまで見せている武内だが、その投球内容をもう少し深堀りしてみたい。

まずは投手自身の能力によるところが大きい奪三振と与四球に注目してみると、奪三振の割合を示すK%(奪三振÷打者)は18.5%で、リーグ平均の18.6%とほぼ同等の数字をマーク。一方のBB%(与四球÷打者)は4.3%でリーグ平均の7.7%を大きく下回っており、制球力の高さが持ち味の一つといえる。

そのコントロールの良さはストライク率にも表れている。武内のここまでのストライク率は68.9%で、40イニング以上投げている投手の中では、日本ハム・加藤(70.9%)、広島・森下暢仁(69.0%)に次ぐ3番目の高さだった。

【2024年ストライク率TOP5】

70.9% 加藤貴之(日本ハム)
69.0% 森下暢仁(広島)
68.9% 武内夏暉(西武)
68.8% 曽谷龍平(オリックス)
68.8% 東克樹(DeNA)
※40投球回以上の投手が対象

次に、球種別成績を見ていく。投球の約半分を占めるストレートを中心に、ツーシーム、チェンジアップ、カーブなど5種類の変化球を投げ分けている。ストレートの平均球速は約147キロとサウスポーとしては速いものの、飛びぬけた数字ではない。また、空振り率もチェンジアップの16.5%が最高と、こちらも特別優れた数字は記録していない。

それでも被打率はほぼ投げていないカットボールを除くと、各球種1割台から2割台前半に抑えている。コーナーを突く制球力と多彩な球種で打者に的を絞らせず、総合力で打ち取ることができる投手と言えそうだ。

即戦力として入団し、ここまではその期待通りのピッチングを披露している武内。5月は4試合に先発して3勝0敗、防御率0.63、3QSをマークしており、球団の投手では2015年8月度の髙橋光成以来となる新人月間MVPも狙える位置にいる。

疲れが出始める6月以降もこの好成績を続けることができれば、新人王はもちろんタイトル争いに絡める可能性も出てくるだろう。西武のエース番号である「21」を受け継いだ新人左腕の投球から今後も目が離せそうにない。



© 株式会社グラッドキューブ